第43話 余計に気になる。−2
「わーびっくりした…」
「店長!お疲れさまです〜」
「そろそろ10時だ。上がる準備をして二人とも。」
「はいー」
いつの間にか10時になってる。服を着替える時に吉川の話を思い出す、その流れだったら今田の周りに俺を好きだと思う人がいるってわけ。よく分からない、そもそも女子たちと仲良くしたくないから、そんなことは考えたこともなかった。
「あ、そうだ。雪原さんにL○NEを…」
蓮
『バイト今終わりました…晩ご飯は一人で食べます!今日もお疲れさまです!』
サクラ
『何言ってんの?まだ待ってるよー』
先に食べてもいいのに、まだ待ってるって…?急がないと、もう10時だからこれ以上先生を待たせるわけにはいかない。
「お疲れさまですー!」
急いでコンビニを出る蓮の後ろ姿を見つめていたひびきがほほ笑む。
「はあ…俺の家ってこんなに遠かったのか…」
時間は10時19分、走ったおかげで5分くらい短縮させた。待っている先生をために、すぐ階段を上って家に入ったらなぜか家の中が真っ暗で誰もいないように見えた。あ、鍵を渡したことないから当然か…その時、スマホに届いた一つのL○NE。
サクラ
『蓮くん、今家に着いた?今日はうちで食べるからねーこっちに来て!』
カバンを床に置いて隣家のベルを押した。
扉を開けてくれた先生は白いオーバーサイズのTシャツを着て下にはショートパンツを履いていた。もう寝る準備をしてるんじゃないかな…と思いながら、細い腕と脚が丸見えになって先生から目を逸らしてしまった。
「蓮くんだ!」
「こんばんは…」
床に座ってしばらく待っていたら先生が台所からカレーを持ってきた。すごくいい匂いがする、先生が作ってくれたカレーか…生まれてよかった。テレビをつけて、その前にある小さいテーブルに二皿乗せて隣に座る先生だった。
「食べて食べて!」
「い、いただきます…!」
10時はやはりお腹が空いてしまうんだ。それよりこのカレーが美味すぎて、なんか幸せだ…そばには先生がいて一緒にテレビを見ながら晩ご飯を食べるなんて、これ…!これは恋人とか夫婦みたいじゃない…?想像したら恥ずかしくなった…何してんだ俺は。
一人でドキドキする蓮は隣で食べているさくらをちらっと見た。
「うん…?どうしたの?」
こっちを見る先生の頬についてるご飯粒を取ってあげた。
「まだ子供ですね…雪原さん。」
ご飯粒をさりげなく口に入れたら、そばにいる先生がちょっと照れてるように見えた。そのままカレーを食べ尽くしてテレビを見ていた。それより、晩ご飯は食べたけど、これから何をすればいい…?なんかこのまま「バイバイ」とは言えない雰囲気なんだよな。
「ご馳走様でした…」
「待って!デザートもあるよ?」
「はい…?」
皿を片付けた先生が台所から他の皿を持ってきた。その皿に乗せていたのはショートケーキ、俺はそれを見て前の話を思い出した。確かに先生は一人で甘いものが食べられるように頑張っているって…もしかしてこのために俺を呼んだんじゃ…
「はい…あーん。」
フォークで切ったケーキを俺に食べさせる先生、それはただの勘違いだったのか…
「美味しい…?」
「はい、甘くて美味いです。」
じっとしてショートケーキを見る先生からフォークをもらって、俺からケーキを切って先生に食べさせた。口の前で待っているケーキを見つめた先生は少し不安な顔になっている。俺と目を合わせた後、再びケーキを見つめた先生は何かを悩んでるように見えた。
「やっぱ無理…ですか?」
「…」
「無理しなくてもいいですよ…」
「いや…!食べてみる!」
「はい、あーんしてください。」
ケーキが先生の口の中に入った。すごく苦しい顔をしてケーキを食べる先生が両手で俺の腕を掴む、目を閉じて我慢しているように見える先生はすぐ俺を見て頭を横に振る。すると、手のひらにケーキを吐いた先生が涙を流して俺を抱きしめた。
「よしよし…」
「無理…無理…無理…ごめん。」
「大丈夫です…はい、私がついています。」
「蓮くん、私も…他の女の子みたいに好きな人と…甘いもの食べたい…苦いものはもういやよ…」
「よしよし…」
好きな人か…
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