第40話 二人の女子。
———旧生徒会室。
いなくなった蓮から届いたL○NE、それで今この3人が揃ってお昼を食べている。
幸せそうに食べている二人とは違って、みゆきはあんまり食べていなかった。それに気づいた香奈がみゆきの手を握って話をかける。
「どうしたの…?みゆきちゃん。」
「えっ…?別に何も…」
ぼーっとしてスマホをいじるみゆきを見ていた香奈が朝陽の方に合図を送る。空気を読んだ朝陽が頷いて旧生徒会室を出た。二人で残された静かな旧生徒会室の中、先に口を開ける香奈はみゆきが何に悩んでいるのか大体分かっていた。
「元気を出して…みゆきちゃん。」
「別に落ち込んでるとかじゃないから…気にしなくてもいいよ…香奈ちゃん。」
「声が憂鬱ですって言ってるけど…?」
ため息をつくみゆき、彼女は水族館で見たことをまだ忘れていなかった。今みゆきはその話を香奈と話すのか、我慢して流すのかそれを悩んでいる。そう考えている時、香奈はやはりみゆきも蓮の首に気になっていると確信してその話をした。
「でも、みゆきちゃんも気になるよね?」
「うん?あ…うん…そうかも…」
「確かに…その首には絶対何かある!」
「首?」
「そうよ…それは絶対…女の子だ。」
「女の子って…」
「もう6月なのに、わざわざジャージを着るのも怪しいし…そしてそのファウンデーションテープ!それが一番変だったよ。」
何を言っているのか分からないみゆき。
「首に…ファウンデーションテープよね…」
けど、香奈の話に合わせるみゆきは自分が悩んでいることをあえて口に出したくなかった。自分が知らない何かが起こったようで、今はそれが知りたくなったみゆきが逆に探りを入れる。
「それで…?私…同じクラスじゃないからよく分からないけど…」
「絶対…それだよ。それ!」
「それ…」
「エロいことに決まってるんでしょう!みゆきちゃん!」
「行き過ぎ…」
「聞いてみて!傷って言ったけど…傷にテープはだめでしょう?これは女だよ!女!」
ここまで聞いたみゆきが万が一の可能性に緊張する、それは蓮に他の女があるってことだった。香奈は大体のことを推理しているけど、みゆきはあの日大人の女性と一緒にいる蓮を見たからその話に動揺していた。
「そんな…秋泉くんが…?」
「それは何かを隠したいってことよ…分かる私は分かる!首を触る時のあのスピードは…傷より何かをバレたくない反応よ。」
「それでも…そんなことをするのかな…?他にあざとか…できたかもしれない…し…」
「いや…違う。可能性はただ一つ、キスマークだ。みゆきちゃん!」
「…え。」
知っているみゆきそして経験がある香奈、単語だけで通じる二人だった。
「そして決定的な証拠は…今日、秋泉くんが遅刻をしたってことよ…」
「それが…?」
「秋泉くんは今まで一度も遅刻したことがないから…昨日の夜…何かあったんだ…」
「怖い…」
本当に怯えているみゆきだった。他の人に蓮を取られる想像しただけで、体が震えるみゆきは少し心を静めていた。それはただの可能性ってことで自分を納得させる。
「このままじゃ…誰かに取られるよ…?それでもいいの…?みゆきちゃんはー!」
「落ち着いて…香奈ちゃん、まだキスマークって判明されてないから…」
「じゃあ、代わりに私が話をかけてみようか…?」
「うん?」
「はっきりしよう!彼女いる?って聞いてくる!」
「いきなり…?」
「でも…秋泉くんは鈍感すぎるから、一応こうやって確認しておかないと…」
「それもそうだよね…」
「じゃあ!私クラス同じだからさっきに行く!待ってて!みゆきちゃん!絶対ダブルデートをするからね!」
「あ、ありがとう…」
急いで旧生徒会室を出る香奈。
嵐のような一瞬だった。
しかもいきなり香奈からそんなことを言われて頭がもっと複雑になるみゆきだった。どうすれば自分の気持ちを伝えるのができるのか、それだけを悩んできたみゆきにまた悩むことが増えてしまった。
「蓮くん…」
旧生徒会室の窓から外を眺めているみゆきが独り言をする。
「どこにも行かないで…」
気が弱い自分を知っているからたまには香奈の性格が羨ましくなるみゆきだった。でも、気が弱かったから蓮と会えることができて、勇気を持たせてくれた昔の記憶がまだ彼女の心に残っていた。
———蓮の存在は彼女にとって光そのものだった。
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