第38話 二人の関係。−2
いろいろ話したいことがいっぱいあるんだけど、まずは我慢して職員室に向かった。扉を開ける前にスマホのカメラで首筋を確認した後、先生のところに行く。すると、先生はすごく嬉しそうな顔でこっちを見ていた。その目がどこを見ているのか、大体分かっていたからちょっと腹が立つ…
「秋泉くん。今日遅刻したよねー」
「なんか、先生…嬉しそうに見えますけど…?」
「うん…?どうしてそう思う?」
「いや…顔っ…!」
優しい顔で足を踏む先生に恐怖を感じる。昨日のことに対して問いただすつもりだった蓮がすぐ尻尾を巻いて、素直に話を聞いていた。
「何…?顔?」
「な、なんでもないです…」
「今日は遅刻したから反省文を出してくださいー」
「は、はい…」
隣席の小春が二人を見ていた。自分が考えた通りにはならないと思うけど、やはり二人の関係が知りたくなる小春が探りを入れる。
「何よ…さくらも遅刻したじゃん。」
「えっ…!」
「それにしても昨日すごく酔っ払ったでしょう?無事に帰った?迎えにくる人は?」
「うん、無事に帰ったよ。」
「あの人ってもしかして彼氏…?彼氏でしょう?」
そう言った小春がちらっと蓮の顔を確認する。
「そ、そんな…違うよ。」
「先生、そろそろ授業だから戻ります。」
「うん。ちゃんと出してね。」
「はい。」
職員室を出る蓮の後ろ姿を見て、がっかりする小春が一人でつぶやいた。
「無表情…」
「うん?」
「なんでもない!」
職員室を出た俺は先の話にびくっとした。心を静めてなんとなく我慢したけど、どうやら小春先生がそれを知っているように感じる。気のせいか、いや…考えすぎだ。そんなことはないと思うけど…少しだけ不安になる。
もっと注意しないと、最近の先生はすごく積極的だからむしろこっちが困る。元気になったのはいいけど、元気すぎて困ること…昨日の夜に一体何が起こったんだ。話したいのが山ほどあるけど、今そんなことはどうでもいい…早く授業に入ろう。
2限はえーと、なんだっけ…
「おい!蓮、早く行こう!」
「え?」
「何をぼーっとしてる!体育だぞ?」
「あ!うん…」
ついてねぇ…いや、神様に捨てられたのか俺…?
体育…って、しかもこんないい天気に体育をするのか…マジで…?
「分かった。」
……体育館。
なんとなくジャージを着てしまった。なんで…俺がこんな目に遭わないといけないんだ。これは全部先生のせいだ…
「今日は二人一組でバレーボールの練習をする!」
俺一人だけジャージを着ているこの状況。しかも今日はバレーボールの練習なのか…でも二人一組で練習をするからバレる危険はないんだろう。我慢だ、我慢…
と、思ったら俺の相手が朝陽だった。
「蓮、なんでジャージ…?」
やっぱりか…
「あ、ちょっと寒がりで…」
「え…?もう6月だぞ…?」
「とにかく練習しろ!」
「変なやつだな…」
ボールを上げてサーブをする朝陽、体育先生に教えてもらったレシーブを練習する俺。しばらくそうやって俺たちはサーブとレシーブの練習を続いていた。すると、知らないうちに危険はますます迫っていた。
「暑い…」
「うん…」
「蓮、大丈夫?それ、脱いだら…?」
「いや、いい…体が冷えるから。」
「…そうか。」
俺もこのジャージ…投げ出したいんだよ…!でも、これを脱いだらそれが見えてしまうから俺にも他の選択肢がねぇんだよ。一応袖をたくし上げたけど、そうやっても暑苦しいのは変わらなかったから、結局俺は体育館の壁に寄りかかってぼーっとすることになる。
「朝陽!」
「香奈ちゃん!」
練習を終わらせた今田が朝陽のところに来た。この二人はどこでもくっつくのがムカつく…いや、羨ましいって言った方がいいかな。暑苦しいのに二人を見たらもっと苦しくなる。
「秋泉くん…なんか苦しそうに見えるけど…」
「ほっておけ…それは蓮の選択だから。」
「こんな天気にジャージ…」
「そうだよ…寒がりとか言ったくせに汗がすごいんだ…蓮。」
「へえ…」
「まぁ…」
隣に座る香奈はぼーっとして天井を見る蓮の首に気を取られた。
「あれ…?」
右側と左側の色がちょっと違うことに気づいた香奈がじっとして蓮を見つめていた。なんで半分だけ色が違うのか、香奈は知りたかった。首を傾げて「半分だけ、色が濃い理由はなんでしょう?」って顔をしている。
そしてさりげなく蓮に聞いてみる香奈だった。
「秋泉くん…首どうした?」
「え?何?」
「いや、半分だけ色が違うから…」
「あ…」
え…ウッソ、マジ…?
「あ?本当だ。何これ…?え…色が違うぞ。蓮!」
これに気づいたのか、女って本当に怖い…
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