第37話 二人の関係。
「…すみません。」
昨日の不安で寝られなかったさくらは結局遅刻してしまった。酔いが覚めたけど、職員室に入って席に着くとすぐ教頭先生に呼ばれるさくらだった。遅刻のことで叱られると思ったら、意外と木村の件について話をする教頭先生にほっとして話し合う。
「珍しいですね…雪原先生が遅刻なんて…」
「あの雪原先生が…?」
「雪原先生が遅刻なんて…飲みすぎたのかな…」
教頭先生と話をしているさくらを見てざわめく職員室の中、席に着いた小春が二人がいるところを見つめていた。そして昨日、自分が見たことを思い出す小春、酔っ払ったさくらを背負っていたのは確かに蓮だった。
「フン…」
迎えにくる人、最近よく笑うさくら、そして何かに勤しんでるところまで自分なりに推理をする小春はある可能性に至る。
「まさか…え…さくらが…?いやいや、ありえない。」
「何…?小春。」
「うん?な、なんでもない。」
席に戻ってきたさくらにびっくりして慌てる小春が授業の準備をするさくらをちらっと見ていた。昨日、そんなひどいことをされたのに平気でいられるのがすごいと思う小春。彼女が心配になるけど、今は仕事に集中する時だった。
———少し時間を遡り、8時に目が覚めた蓮。
「今…何時…?」
時計は「am8:12」を映し出して本能的に遅刻したのを感じた。今急いでもどうせ遅刻だったからゆっくり準備をする、服を着替える時に首筋と鎖骨の下がすごく痒い気がして鏡の前に立った。
「はっ…?」
ぼーっとしてそれを見つめた後、急いでスマホを出した俺は先生にL○NEを送った。生まれてからこんな速度で文字を打ったことがあったのか…鏡に映っていた自分の姿を信じられなかった。
ダダダダダダダダダダダダダ。
『雪原さん、これなんですか!』
『首筋と鎖骨の写真』
『ありえない!私が寝ている時に何を!!!』
『なんですか!!これじゃ学校にどうやって行けばいいんですか!!』
『もう!雪原さんって教師として自覚を持ってください!』
『あー!どうすればいいんだ!』
『返事してください!!!!』
『あああああああああああああああああああああああ』
気がついたら、トークルームには俺が送ったメッセージばかりで先生からの返事はこなかった。頭が真っ白になる…何も考えたくない、早く学校に行かきゃ…
「…はあ、これは酷すぎだろう。」
挫折する秋泉蓮。
首筋におよそ六つ、鎖骨辺りの五つのキスマーク…ため息が止まらない。鎖骨辺りは制服で隠すけど、首筋にあるのが一番難題だった。一つ一つが離れていて一気に隠すのができない、左首はもう先生のキスマークでめちゃくちゃになってる。
「あ、そうだ!タートルネック!ってもう6月だからタートルネックはNGだろう。」
ため息をついて、スマホで検索したら100均ショップでファンデーションテープを売っていることが分かった。家からちょっと遠いけど、仕方がない。
そして買ったファンデーションテープを首筋に貼る。
「お…これいいな…」
結構いい感じでできた首筋を見つめて感心する時、時間はもう9時…完全遅刻だった。俺は一体…何をしているんだ…泣きたいのは気のせいか…学校行こう。
その時、スマホに先生からのL○NEが届いた。
サクラ
『ごめん♡』
????????????
これだけ…?先生…これだけ…?、と思ったら次いでL○NEの通知音がする。
サクラ
『遅刻だよ!走って!』
????????????
返信
『雪原さんとは二度とそんなことしません!』
あれ…送ったけど、これちょっとニュアンスが…
もう知らない、学校に行こう。
1限の授業がほぼ終わる時間、隣の椅子に座ってスマホをいじるさくらが蓮から届いたL○NEににやついていた。
「100均ショップ遠いな…」
1限が終わった休み時間、俺はやっと教室に着いた。朝から息を切らして、階段を上る…今はつらいことより首筋の方がもっと心配で居ても立っても居られない。
15分くらい全力で走ったから体に汗かいてきた。
「おいおい…蓮。どうしたんだ。遅刻なんかして。」
「詳しいことは聞かないでほしい…」
「どうせ寝坊だろう?」
「うるせぇ…」
すると、朝陽の膝に座る今田が話した。
「そうだ。秋泉くん、担任が呼んでるよ。」
「あ…そう?ありがとう。今田。」
雪原さくら…先生、ちょっとお話をしましょう…
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