第14話 お花見をしよう。−2

 そして朝がきた。

 まだ布団の中から目が覚めてない時、俺のスマホに先生のL○NEとともに電話がきた。鳴いているスマホに手を出してなんとなく先生の電話に出た。


「蓮くんー」

「雪原さん…おはようございます…」

「準備は…?」

「…あ、はい。」


 さりげなく嘘をついてしまった。そうか、昨日の話は夢じゃなかったんだ。現実逃避して、寝坊したのを否定する馬鹿がここにいる。でも、先生のせいで昨日3時まで寝られなかったからしょうがないだろう。


 早く準備して先生と一緒に行こう。

 髪を整えて先生にカッコいいと言われるように準備をしないとな、昨日の夜に服だけ決めておいてよかった。デニムジャケットに白いTシャツ、そして黒いズボン…でも本当にこれでいいのか、先生とお花見する日だろう…そもそもデートじゃんこれ。


 デートって意識したら急に恥ずかしくなってきた。


 サクラ

『外で待ってるよー』


 先生からのL○NEだ。時間がない…このまま行こう。


「雪は…ら、さん…」


 外で待っている先生の格好がヤバすぎて言葉を失ってしまった。


「あ!蓮くん…!」


 可愛い、耳下のツインテールを先生からやってくれるとは思わなかった。普段はストレイトなのに今日だけ…やってくれるたのかな。それ以外にも花柄のワンピースの上にオーバーサイズの黒いスエットを重ねて、今すぐにでも俺の心臓が爆発しそうな格好をしていた。


「どうしたの…蓮くん。」

「いや…今日…きょ…う、あの…可愛いです…ね。」

「あ、本当…?嬉しい…」


 照れて俺から目を逸らす先生が超可愛い、どうしよう…俺は全然できてないし…もしかして先生にそれだけって言われるんじゃないのか、と心配していた。


「今日はいっぱい楽しもう!蓮くん!」


 と、笑ってくれる先生が俺の手を掴んだ。


「はい、よろしくお願いします!」


 手を握られた俺は先生のそばにくっついた。その時、化粧品の匂いか香水の匂いなのかはよく分からないけど、そばで歩いているとすごくいい匂いがして先生の方を見られなかった。


「こうして歩いていると、私たちカップルに見えるかな…?」


 こっちを見て笑ってくれる先生の笑顔が眩しすぎで、体が硬直した。


「そ、そうかも…しれま…せん。」

「蓮くん…もしかしてカップルって言われて恥ずかしくなった?」

「い、い…え。」


 今更気づいたけど、先生は首に水晶のシンプルチョーカーをしていた。なんかキラキラしていたと思ったらそれは先生のチョーカーだったんだ。でもそれより顔の方がもっと眩しくて目をどこに置けばいいの分からない。


 なんで今日だけ、そんなに可愛いんだよ…反則だ!昨日はそんなに強圧的だったくせに…反則だよ…先生!それは…でも…これも好きだ。


 ———頭の中、カオス状態。


「ちょっとこっちを見てよ!」

「はい?」

「さっきからずっとあっち見てるじゃん…」

「いいえ、全然!」

「今日は私とデートしてるから顔を見て話しなさいよ!」

「はい…」


 デートとか言われたし…先生の言葉から感じられたのは「好き」って感情ばかりだった。だから先生にこれ以上何か言われたら、俺、この場で死んでしまうかもしれない。


「ちゃ…んと雪原さんの顔、見ます…」


 手を繋いで歩いていた二人は立ち止まって、お互いの顔を見つめた。

 そして自分から言い出したさくらはむしろ自分の方を見つめる蓮の顔に顔を赤めて下を向いていた。


「カッコいい…蓮くん。」

「えっ…?」

「は、やく…行こう!」

 

 なんだ…先生も照れてるんじゃない。可愛い…そうやって俺たちは電車の席に座った。そばに座っている先生から変な違和感がしたけど、その原因が分からなくて足元をじっと見ていたら先生の靴に目を惹かれた。


 あ、そうか…先生今日はヒールじゃなかったんだ。いつも学校でヒールだったから少し高く見えた先生の背が今日は靴を履いて小さくなっちゃったんだ。しかし小さい先生の方がもっと可愛いかも…これは言ったら怒られるよな。


 あれ、この靴。


「あ、雪原さん。そのスニーカー…」

「蓮くん…本当に鈍感。」


 拗ねる顔をして反対側を見る先生から手の甲を抓られた。まさか先生と同じスニーカーを履いていたとは思わなかった。俺は違和感の原因を考えていた時、先生はこれに気づいて欲しかったかもしれない、ペアスニーカーか…なんって大胆なことだ。


「チッ、同じスニーカー履いたのに…全然気づいてくれないじゃん…」

「雪原さん、今日は本当に可愛い…どうしよう…惚れてしまいます…」

「そんなの知らない!バカ!」


 この二人を見ていた反対側の女の子たちはその可愛さにほほ笑んでいた。

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