第6話 我慢したい雪原。
最近、先生の様子がおかしい。
前は明るい顔で挨拶をしてくれたけど、今の先生はすれ違っても「うん。」としか言えない。いきなり冷たくなっちゃって理由も教えてくれないから、話をかけるのも難しかった。
「もしかして…俺、なんか変なことでもしたのか…」
授業に集中できない、どうしよう…
「おい!蓮!」
休みの時間。
複雑になった頭を冷やすために、教室を出る俺を呼ぶ止める朝陽。
「ん。」
「俺、彼女ができた。」
「はっ?」
「ところでお前も彼女欲しいだろう?」
「…彼女。」
「なんだ…その反応は。」
「え…考えたこともないから…?別にいらないし。」
「昼休みの時、屋上に来いよ。4人で昼ご飯を食べるから。」
「いい、一人で食べる…」
「いいから来い!」
「え…分かった、分かった。」
別に…先生以外の女性には興味がないから朝陽の話には適当に答えてやった。そう言った俺が教室の扉を開けた時、なぜか俺の前に先生が立ち止まっていた。すぐ前に立っているのに、その顔が全然読めない…万が一先の話が先生に聞こえたらすごく怒るかもしれない。
駐車場でそう約束したから…
「先生…」
「はい?ちょっと忘れ物があって。」
「…あ、はい。」
先生はそのまま教室の中に入った。
「なんか最近の雪原先生冷たくない?」
「そうかな…あ、俺トイレ行ってくる。」
「オッケー」
教卓から忘れ物を取って廊下の方を見つめるさくらは当然、さっきの話を全部聞いていた。ただの友達だから怒るのもおかしい状況だった。それを知っているからさくらは何も言わず、職員室に戻ってきた。しかし友達だとしても心の中に残っている不安は消えなかった。
「他の女の子と昼ご飯…」
机でペンをいじりながら独り言を言っているさくら、隣の小春も授業を終えて席に戻ってきた。そして小春の方を見ていたさくらは彼女が前に見せてくれた赤い痕を思い出して顔を赤める。
「どうした?さくら。」
「なんでもーない…」
———二日前。
仕事を終えてベッドでスマホをいじるさくらは小春から聞いたエッチの意味を検索していた。そして彼氏からつけてもらったと言った赤い痕、小春がその呼び方を教えてくれなかったからむしろ知りたくなるさくらだった。
「彼氏からつけてもらったもの、って感じでいいかな…」
検索結果、ネットのイメージから小春の体に残っている赤い痕と同じ痕を見つけた。
「キスマーク…って言うんだ…」
そのイメージを見てもっと知りたくて検索を続ける、そしてさくらはいつの間にかキスマークの付け方を見ていた。
「首にこうやって…チューしたらできるのかな…」
スマホを見てキスマークの付け方を練習していたさくらは急に恥ずかしくなってスマホを床に置いた。よく考えればこんなことを練習しても、実際にできないのが問題だった。相手は生徒だから先生の立場では絶対、やってはいかないこと。
今更それに気づくさくらだった。
「…そういえば、私たちちゃんと手を繋いだこともない。」
そう。
先生である時は蓮に何もできない、それは社会的な犯罪ってことをさくらも知っていた。
「蓮くんはまだ告白できないし…もしかして、他の女に取られたらどうしよう…」
どう考えても答えを出せないことに悩んでいるさくらは枕に顔を埋めた。
「でも…」
———昼休みの屋上。
「よーっ!みんな先に来たのか!」
「朝陽くん!」
「香奈ちゃんだ!」
屋上のベンチに座って手を振っている女の子、多分あの子が朝陽の彼女だろう。そうやって俺たち4人は屋上で昼ご飯を食べることになった。しかし仲がいい朝陽カップルが隣ですごくイチャイチャしているからご飯が進まなかった。
「…」
「あ、自己紹介が遅くなった。こっちは俺の彼女!
「何それ…」
変な言い方に口出しをしたかったけど、その後に女の子と話すのは苦手だから黙々とご飯を食べるだけだった。それより先生のことが気になって、俺が今何を食べているのかさっぱり分からなかった…味はするけど何も感じられない。
「秋泉くん…変わったね。」
「山口、もしかして蓮のことを知ってる?」
「え…?」
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