第2話 好きな人。−2
「二人は放課後に反省文を出してください。」
「…はい。」
「はい。」
すれ違う先生は俺の方を見てほほ笑んでいた。なんだろう…先生から目を逸らさない、教卓まで歩いていく先生の後ろ姿をじっと見つめていた。
「反省文かー初日から…」
「お前が初日から変なこと言うからこうなるんだろう。」
そして教卓に着いたさくらはため息をつく蓮の顔に思わず、笑顔を見せた。
「はい!授業を始めます!」
……
そうやって放課後、教室に残された二人は先生からもらった反省文を書き始めた。ぼーっとして紙を見つめる、俺は初日から一体何をしているんだ。あのバカのせいで、今日は遅くなるかもしれないな…
思わず、ため息が出る。
「あーだるい。」
「真面目に書け!誰のせいだと思うんだ。」
「あはははっ。」
「ったく…」
「まぁまぁーそう言うなよー全部書いたらクラスの女子たちと遊びに行こう、蓮。」
お前ってやつは…
「そんな暇はない。」
クラスの扉が開ける音がして、急いで書きふりをする二人。
「へえー二人とも今日女の子と遊びに行きますかー?」
「…」
「雪原さ…いや、先生…?」
え…こんな時に先生がくるのか、さっきのことでまだ怒っているんだろう。それを思い出したらなんか話しづらい、目を合わせるのができなくて先生から目を逸らしたまま反省文を書き続けた。
「フンーじゃあ、山岸さんはもう帰ってもいいです。」
「本当ですか?」
「はい。」
「ありがとうございます!」
自分のカバンを取る朝陽はそのまま教室を出てしまった。
「蓮!頑張れー!」
と、一言を残して。
「…」
誰もいない教室、そして俺と先生二人の放課後。
扉を閉じる先生は俺の前に座ってほおづえをつく、しばらく俺を見つめているような気がしたけど反省文を書いていた俺には先生の顔が見えなかった。
そしてこの静寂を破って先生の方から話をかけてくれた。
「蓮くん…?」
「…」
一応、何を話せばいいのか頭の中からすごく考えていた俺は先生の話にすぐ返事するのができなかった。
「蓮くん?」
「は…い…」
反対側の手で俺の両頬を掴む先生と目を合わせた。
「こっち…見て、蓮くん。なんで下を向いてるの?」
「…あの、反省文を書かないと。」
「今、私を見ないと2枚追加だよ?」
「はい…」
先生と目を合わせる度、どこに視線を置けばいいのか分からなかった。目?頬?唇?耳?、いや…あちこち見ていたら変な人だと誤解されるかもしれない…まずは先生の顔を…顔を…
「どうしたの?蓮くん、顔が真っ赤になってる…」
「え…多分熱でも…」
「本当、蓮くんはわかりやすい。」
「…」
ほほ笑む先生の顔が見えた。
「蓮くんは…やはり胸が好きなの?」
?
「はい?」
いきなり変なことを聞いてくる先生に握っていたペンを床に落としてしまった。
「いきなりなんですか…」
「だって…山岸さんと話していたことを聞いて…」
「いやいやいや…それは誤解です。朝陽が勝手に言っただけです。」
「そう…?」
「じゃあ…蓮くんはいつも私だけを見てくれるよね?」
「…」
なんだろう…この会話は…一体なんだろう。
反省文に集中できない、先生の話に気を取られちゃって唇が震えていた。
「返事はしない?」
首を傾げる先生の顔がますます俺に近づいてる。
「はい。もちろんです…!」
俺は何を話したんだ…恥ずかしい。
「…」
返事を聞いた先生は両手を自分の膝に置いて、机に頭を「ゴッ」とぶつけた。
「先生…大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫…」
「頭痛くないですか…?」
「だ、大丈夫…!」
頭を机に置いたままじっとしていた先生の耳が赤くなっていることに気づいた。照れる先生のことは見なかったふりをして、そのまま書いていた反省文を書き続けた。
「ううん…」
ちらっと蓮を見上げるさくらは夢中に反省文を書いているその姿に頬を染めた。
———私の好きな人はこうしてたまに積極的でたまにすごく照れる可愛い先生です。
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