報告その8
こんにちは。小林卓也です。
前に書いた「学級トマト全滅事件」の読書感想文がかえってきました。コンクールでは賞がとれませんでした。おうぼのきまりよりも文字数が多すぎたのがよくなかったみたいです。でもたんにんの片山先生がすごくほめてくれました。お母さんがかえってきた読書感想文のコピーをとってくれたの送ります。
「学級トマト全滅事件」を読んで
五年三組 小林 卓也
ぼくは学校の図書室にある本の中で、「藤
松少年の迷推理」が一番好きです。この本に
は七つのお話があって、その中で「学級トマ
ト全滅事件」が一番おもしろいと思います。
どうしてそんなにおもしろいのでしょうか。
その理由はたくさんあるので、ぜんぶしょう
かいしたいと思います。
このお話は、夏休みに入ってすぐのある日、
五年三組のみんなで大切に育てている学校菜
園のミニトマトが、ひとばんのうちにぜんぶ
引きぬかれてしまっていたというところから
はじまります。それを発見したのは学校の近
所に住んでいる五年三組の城島くんでした。
朝のラジオ体そうの帰りに、学校菜園を見に
いって気がついたのです。城島くんはびっく
りして、いっしょにラジオ体そうにさんかし
ていた常田さんをおいかけてそのことをつた
◇ ◇ ◇
えました。常田さんは家からみんなに電話を
しました。しばらくするとクラスのみんなが
どんどん集まってきました。みんなはミニト
マトが一本もない五年三組の学校菜園を見て
すごく腹を立てます。そしてみんなで犯人を
つかまえようという決心をします。
ぼくはここまで読んだとき、この話はぜっ
たいおもしろいぞという予感が生まれました。
ぼくも五年三組で、クラスの学校菜園でミニ
トマトを育てていたからです。だからこのお
話は人ごととは思えませんでした。ぼくたち
のミニトマトはぶじに赤い実ができて、ちゃ
んとしゅうかくできました。でもちょっとす
っぱかったです。あのミニトマトがもしもと
ちゅうでぜんぶ引きぬかれたとしたらと考え
るとすごくざんねんです。お話の中の登場人
物の気持ちがよくわまりました。
それから、常田さんがみんなに声をかける
とクラスのみんながどんどん集まってくると
いうところがいいなと思いました。夏休み中
◇ ◇ ◇
なのにぜんぶで十人も集まったのです。その
中にはもちろん主人公の藤松くんとあいぼう
の信之介くんもいます。さあ、これからいよ
いよ事件のかいけつがはじまるんだなという
ところがわくわくします。もしもぼくのクラ
スで同じことがおきたら、こんなふうにみん
なが集まってくるだろうか。十人はむりかも
しれないけど、五人以上は集まってほしいな
と思いました。
そして藤松くんの調査がはじまります。藤
松くんのとくいな調査は聞きこみです。いろ
んな人からの話を聞いて推理をするのです。
集まっていたみんなに聞きこみをすると、そ
の中の二人がきのう学校菜園を見にきていた
ことがわかりました。二人の話はこんな感じ
です。
「まだ少し緑の部分があったけど、たくさん
の実がなっていた。もう少しで食べられそう
だった。」
「夕方の四時すぎにようすを見にきたら、す
◇ ◇ ◇
こしかれかけている葉っぱがあったので水を
やったよ。そういえば、五年二組のたんにん
の先生の赤い車があったよ。」
二人の話から、ミニトマトはきのうの夕方
ごろまではぶじだったということがわかりま
した。藤松くんはこれで犯行時刻はかなりし
ぼられたと考えます。でもみんなはそんなこ
とよりも、だれが犯人なのかということでぎ
ろんしています。そして夏休みの夕方なのに
学校にいた五年二組のたんにんの先生があや
しいということになりました。
五年二組のたんにんの先生というのは柳原
先生で、口ぐせは「きみたちの好きなように
やればいい。でも自分のやったことにはせき
にんを持てよ。」です。藤松くんたちの五年三
組のたんにんの先生は阿部先生で、口ぐせは
「きみたちがこの小学校で生きたあかしを先
生は忘れないからな。」です。みんなから熱血
先生とよばれています。二人の先生はせいか
くがちがうのであまり仲がよくありません。
◇ ◇ ◇
そのえいきょうで二組と三組の子どもたちも
ライバル心を持っています。だから二組の柳
原先生がいやがらせをしたんじゃないかとい
う意見が出たのです。
でもその意見にさんせいする人はほとんど
いませんでした。いくら仲が悪くても、いや
がらせでミニトマトをぬいたりはしないよと
いう意見がいっぱい出たからです。ここを読
んでぼくはほっとしました。もしも犯人が二
組の子どもやたんにんの先生だったらいやだ
なあと思いながら読んでいたからです。
そのとき信之介くんが「いやがらせのため
じゃなくて、五年三組だけのトマトをぬいて
しまう理由ってなんだろう。」とつぶやきまし
た。ぼくは、はっとしました。ぼくもほかの
子どもたちと同じように、犯人はだれだろう
っていうことばかり考えていて、トマトをぬ
く理由についてはぜんぜん考えていなかった
からです。信之介くんはいつもほかの人とは
ちがうことを考えていて、それをつぶやくの
◇ ◇ ◇
です。
みんなが理由を考えだしたとき、クラスの
マドンナの西園寺さんがやってきました。も
ちろん藤松くんは西園寺さんにも聞きこみを
します。すると重大なことがわかったのです。
きのうの夜の七時前ころ、バレエの練習の帰
りに西園寺さんが学校の横を車でとおりかか
りました。そのとき車の窓から学校菜園の方
を見ると、五年三組の畑の中に人かげが見え
たというのです。夏なのでまだ明るくて、細
かいところも見えたそうです。西園寺さんは
こんなふうに言いました。
「その人はねえ、こしをかがめてしゃがんだ
り立ったりしてらしたわ。たぶん、トマトを
ぬいていたんじゃないかしら。そうそう、そ
の人は白っぽい作業服をきていらしたわ。そ
れから首のところにタオルをかけていて、麦
わらぼうしをかぶっておられたわね。」
それを聞いたみんなはいっせいに「かかし
だ!」と言いました。六年生がつくった学校
◇ ◇ ◇
菜園のかかしのかっこうにそっくりだったか
らです。ぼくは少しくらくなりかけた畑の中
で、かかしがミニトマトをぬいている様子を
想像してこわくなりました。
藤松くんが「かかしのところへ行ってみよ
う。」とみんなに言って、六年生の畑の方へ走
り出しました。こんなふうに藤松くんはすぐ
に行動するのです。これはぼくもみならいた
いところです。
かかしはいつもとかわらない様子で、すこ
しかたむいて立っていました。頭には麦わら
ぼうし、首にはタオル、体には作業服をきて
います。藤松くんが西園寺さんに「きのう見
たのはこのかかしなの?」としつもんしまし
た。西園寺さんは「このかかしかどうかはわ
からないわ。でもとってもにているわね。」と
答えました。ぼくはここの場面が一番好きで
す。藤松くんがちゃんと西園寺さんにもしつ
もんをするところと、西園寺さんがとてもし
んけんに答えるところがなんとなくいいなあ
◇ ◇ ◇
と思うからです。
するとだれかが「なにかをもやしたあとが
ある。」と言いました。そこはかかしのすぐ近
くで、たき火をしたようなあとがありました。
そしてよく見てみると、こげて黒くなったミ
ニトマトの実がいくつも見つかりました。五
年三組の畑からぬかれたミニトマトにまちが
いありません。みんなはだまってかかしをじ
っと見ます。ぼくはみんなの気持ちをそうぞ
うしました。ほんとうにかかしがミニトマト
をぬいて、ここでもやしたんだろうか。でも、
そんなことがあるわけがない。でも、西園寺
さんがかかしにそっくりな人かげを見てるし。
たぶん、そんなことを考えたと思いました。
ここでまた信之介くんがつぶやきます。
「なぜトマトをもやす必要があったんだろう。」
「もやすためにぬいたのか、ぬいてからしょ
ぶんにこまってもやしたのか。」
藤松くんは、信之介くんのよこでそのつぶ
やきをじっと聞いています。
◇ ◇ ◇
「ここにいるかかしはじっとしているけど、
西園寺さんが見たときは、立ったり、しゃが
んだりしていた。」「西園寺さんはいいかげん
なことを言ったりしない人だ。」「そうか、わ
かったぞ。」「ミニトマトをぬいたのは、生き
たかかしだ。」
そのつぶやきを聞いた藤松くんの目がきら
りと光ります。それは藤松くんがなにかを思
いついたときのサインです。でもぼくは信之
介くんの言った「生きたかかし」の意味がわ
かりませんでした。どこかに書いてあったの
かなと思ってページをもどって読みなおしま
した。やっぱりよくわかりません。しかたが
ないので先を読みました。
だれかが「あ、先生だ。」と言いました。通
用口の方から人が二人、こっちにむかって歩
いてきます。それを見た藤松くんがまっすぐ
前にうでをのばし、人さし指の先を二人に向
けると「五年三組のミニトマトをぬいて、こ
こでもやしたのはあなたですね。」と言いまし
◇ ◇ ◇
た。
ぼくはこの場面も好きです。ぼくはほかの
話も読んでいるので知っていますが、ほんと
うは藤松くんはよくわかっていないのです。
いつも信之介くんのつぶやきを聞いて、早と
ちりしてしまうのです。だから、ぼくはこの
場面を読むたびにちょっと笑ってしまいます。
二人のうちの一人が「ああ、その通りだよ。」
と言いました。それは学校の用務員さんでし
た。もう一人は五年三組のたんにんの阿部先
生でした。この二人は、五年三組の子どもた
ちが学校菜園に集まっているのを知って様子
を見にきたのでした。
城島くんが用務員さんに「どうしてぼくた
ちのクラスのミニトマトをぬいてしまったん
ですか。」としつもんをしました。用務員さん
は「五年三組のミニトマトがモザイク病にな
ってしまったからだよ。」と答えました。モザ
イク病というのは植物がかかる病気です。こ
の病気はなおすことができません。病気がす
◇ ◇ ◇
すむとその植物はかれてしまいます。まわり
の植物にもうつるので、モザイク病にかかっ
た植物はぬいてしまわなければなりません。
「きのうの夕方にね、きみたちのクラスの畑
をのぞいてみたら、たくさんのミニトマトが
モザイク病にかかっているのを見つけたのさ。
だからあわててぬいて、ここでもやしたんだ
よ。今日になって、たんにんの阿部先生にそ
のことをお伝えしたんだ。」
この説明を聞いて、みんなはなるほどとな
っとくしました。そして、みんなでありがと
うございましたと用務員さんにおれいを言い
ました。やれやれ、これで事件はかいけつで
す。集まっていたみんながばらばらとかえり
はじめます。すると西園寺さんが藤松くんの
ところにやってきて、こんなことを言いまし
た。
「藤松くんは、ミニトマトをぬいたのは阿部
先生だと思ったんでしょう。」
藤松くんは、えっと言って西園寺さんを見
◇ ◇ ◇
ます。ぼくはやっぱりと思いました。藤松く
んはいつものようにかんちがいをしていたの
です。西園寺さんは藤松くんがあせっている
のを見て、ふふふとわらいました。
「信之介くんが、生きたかかしって言ったひ
とりごとを、生きたあかしって聞きまちがえ
たんでしょう。阿部先生の口ぐせだもんね。
生きたあかしって。」
ぼくはそんなことはわすれていたので、さ
いしょから読みかえしました。するとはじめ
の方の先生のしょうかいのところにちゃんと
書いてありました。ぼくは、生きたあかしと
生きたかかしを口に出して言ってみました。
本当ににています。藤松くんが聞きまちがえ
たのもしかたがないと思いました。藤松くん
はたんにんの阿部先生をさして「五年三組の
ミニトマトをぬいて、ここでもやしたのはあ
なたですね。」と言ったのに、すぐそばにいた
用務員さんが自分のことだと思ってしまった
ということになります。ぼくはこういうかん
◇ ◇ ◇
ちがいのところがおもしろくて好きです。
でも藤松くんはちょっとだけ言いかえしま
す。
「じゃあさ、西園寺さんは生きたかかしって
聞いて、用務員さんのことだってわかったの
かい。」
このしつもんはなかなかするどいと思いま
した。でも西園寺さんは平気な顔で「わかっ
たわよ。だって用務員さんは生きたかかしだ
もの。」と答えました。ぼくは意味がよくわか
りませんでした。これでは藤松くんのしつも
んにちゃんと答えてないと思ったからです。
藤松くんもぼくと同じように思ったみたいで
「なんだよそれは。理由をちゃんと説明して
よ。」と言いかえしました。
西園寺さんはまたふふふとわらいました。
そして説明してくれました。
理由はこうでした。用務員さんが畑や校庭
で作業をしていると、カラスやハトがこわが
って近づいてこないのです。それを知ってい
◇ ◇ ◇
る六年生は、つくったかかしに用務員さんと
同じ麦わらぼうしをかぶせて、用務員さんと
同じタオルを首にかけて、用務員さんと同じ
作業服をきせたのです。だから学校菜園の生
きたかかしと言えば用務員さんのことなので
した。
この説明を読んでぼくはなるほどとなっと
くしました。藤松くんももう言いかえしませ
んでした。そして小さな声で「ぼくがかんち
がいしたことは、みんなにはないしょにして
ほしいんだけど。」と西園寺さんにたのみまし
た。西園寺さんは、ふふふとわらって「いい
わよ。」と言ってくれました。
これでこのお話はおしまいです。
ぼくはこのお話が好きで十回以上読んでい
ます。だれがミニトマトをぬいたのかとか、
なぜミニトマトをぬいたのかとか、藤松くん
がかんちがいしていることとか、ぜんぶ知っ
ているのにおもしろくて何回でも読んでしま
います。そして信之介くんのつぶやき推理や
◇ ◇ ◇
西園寺さんのわかりやすい説明がすごいなと
思います。でも一番好きなのは藤松くんです。
ちょっとかんちがいが多いけど、いっしょう
けんめい聞きこみをして、いっしょうけんめ
い考えるからです。
もしこのお話がおもしろいと思ったら、ほ
かの六つのお話も読んでほしいと思います。
本の題名は「藤松少年の迷推理」です。北山
小学校の図書室にあります。
おわり
※
先生がこれまでに読んだ中で一番長くて、一番楽しい感想文でした。
本を読んでいないのに、読んだのと同じぐらいお話の内容がわかって、おもしろさがちゃんと伝わってきました。
読書感想文コンクールに応募するには長すぎたことが残念ですが、とてもすばらしい感想文だと思います。
先生も今度この本をかりて読んでみようと思います。
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