F先生の返信 5
原田さおり様
お手紙拝見しました。
そうですか。あの少年――小山翔太君はやはり原田様の教え子だったのですね。
三十年もの年月を経て、こうして当時の担任の先生とやりとりをさせてもらうことになるとは、なんとも不思議なご縁を感じます。私の回答が、少しでも原田様の疑念を晴らすものになれば幸いです。引き続き頑張って当時の記憶をたどりたいと思います。
以下に今回のご質問への回答を記します。
まずは該当部分の日記メモです。
(この日のメモは結構長いので、今回の該当部分だけ抜き出します)
平成〇年 8月9日
三日前からコヤマ少年の母が失踪とのこと。
祖父の住む鳥取の岩戸漁港までの同行を頼まれる。
写真で見ると漁師のような風貌。
怖そうだ。
同行を断ったら怒って一人で行ってしまった。
メモは簡素なものですが、この朝のことはかなり鮮明に覚えています。いや、正確には「思い出しました」ですね。
小山君の同行申し出の理由は小説に書いたとおりで、当時の私にとっては(今でも同じですが)、かなり衝撃的なものでした。この先の展開はもう読んでいただいているのでご存知だとは思いますが、小説の後半で、さらにショッキングな事実が判明します。これらのことが、この小説を書こうと思うに至った理由でもあります。
なお、抜きだしていただいた部分については、一字一句そのままとは言えませんが、ほぼ実際に交わした会話通りで、小山君の顔のすり傷やおじいさんの写真の雰囲気も、今思い出せる記憶と相違はありません。
三つめのご質問は、相談相手として学校の担任の先生(当時の原田様)のことが出なかったのかということだと思います。お答えとしては、警察以外は出ませんでした。
今の私なら、たぶん担任の先生に相談・連絡するように助言すると思います。ですが、当時の私はそこに思い至ることはできませんでした。
今さらですが、申しわけありませんでした。
引き続き、ご質問をお待ちしています。
F拝
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