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F先生こんにちは。
まさかお返事をいただけるとは思っていませんでしたので、郵便受けに先生のお手紙が入っているのを見てとてもびっくりしました。もちろんうれしかったです。さっそく父に自慢しようと思ってF先生からのお返事を見せたら、「子どもっぽい字を書く人だね」と大変失礼なことを言いました。本心ではすごいなと思っているくせに、そんな風にひねくれたことを言ってしまう人なのです。それを中二の娘に見破られている父ってどうなんでしょう。
そんな父にかわって、ランポとナスさんについての説明までしていただきありがとうございました。ご指摘の通り、父はミステリマニアです。でも先生のお名前は知らなかったようです。失礼な父で重ね重ねすいません。F先生は父のことを自分より一回り下の世代なのではないかと推測されていましたので、ウィキペディアでF先生の年齢を調べてみました。今年で五十六歳なのですね。父が四十三歳なのでまさに一回り下の世代です。F先生の名推理に脱帽!
そしてこのことも父に伝えると「中二の娘がいるおやじの年齢なんて、四十台前半ぐらいだろうって言っとけば大方は当たるだろうよ」と、憎まれ口を叩きました。もしかしてF先生と張り合っているのでしょうか。身の程知らずですね。バカみたい。
前回の手紙では「美女の胴体真っ二つ」のことに触れましたが、「へっぽこ探偵vs地獄のマジシャン」で一番衝撃的だったのは、二人目の犠牲者がギロチン・イリュージョンで本当に〇〇〇してしまう場面でした。いやもう、なんと言えばいいのか、グロいというよりはエグいです。ちょっと泣きそうになりました。
ところで頭が胴体から離れても約二秒間は意識があるって本当ですか。
「だんっ」という首への衝撃の次に、ひやりとした感触がやってきた。世界がぐるぐると回転し、意識が左右に揺れ、客席の最前列にいた一人の青年と目が合った。
こんなの経験してないと書けないですよね。でもF先生は経験されたわけじゃないですよね。
ああ、私は今、おバカなことを書きました。でもそれぐらい生々しい描写でした。こうして思い出すだけでぞわぞわします。あとでまた読み返します。
それにしても藤松君ってなんなんでしょう。美女真っ二つで懲りたはずなのに、またまたイリュージョン会場の最前列に席を取って、飛んできた生首と目が合って貧血で倒れてしまうなんて! というか、私もこの辺でちょっと変だなって気がつくべきでした。結末を知っている今ならそう思うのですが、読んでいる最中は胸がバクバクでそれどころではありませんでした。ほんとにもう、なんでもありのやりたい放題なお話ですよね。ほめてます。念のため。
最後になりましたが、先生にお願いされていたK君の心理テストの件です。
残念ながらまだ新しい情報は報告できないのです。K君たちの集まりに参加するのはやっぱり無理なので、盗み聞きで情報をゲットしようと思っているのですが、最近は心理テストをやらなくなってしまったんです。もう飽きてしまったのかなあ。盗み聞きでこっそり参加しようと思っていたのに。
でもまだあきらめません。いつまた心理テストをやるかわからないので、休み時間は油断せずにK君の行動を監視しておきます。そこに邪心はありません。ストーカーでもありません。すべては先生に報告するためです。なんちゃって。
鋭意執筆中の新作は順調ですか?
松島 璃子
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