第2話 『The Letter』~親愛なる伯爵夫人~
(ドイツ語の音声に被せて、日本語での音声が入る。
声:玉藻)
親愛なる伯爵夫人光子様
あなたは、僕の光です。
あなたの美しい名前の様に、香り高き微笑みも、その透明な声も、僕の暗闇を照らす暖かく、優しい救いなのです。
きっとあなたは、今、寂しさの中に身を置いていらっしゃるのでしょう。
許されるなら、黎明に一筋の光射す、銀の星の如き、あなたの涙の雫を
拭って差し上げたい。
しかし、それも叶わぬ夢なら、僕の代わりに、老練で賢明なる時の流れが、
きっとその痛みを癒してくれるはずです。
どうか、気を落とさず、あなたの故郷である日本の様に、大国ロシアさえもその足元にひれ伏した、威厳と誇りをもって、生きてください。
僕がお役に立てるのであれば、なんなりと遠慮せずおっしゃってください。
僕の全ては、あなたの為にあるのです。
あなたのその柔らかな耳に、幸福の鐘が響き、天使の歌だけが聞こえますよう、
サフィレットのイヤリングを贈ります。
あなたを慕い、心から愛する者より カーロイ・フランツ
(ザラ:ジゼル ビアンカ:ゆきぽん)
ビアンカ「これを偽造すればいいのね。でも、良く手に入れられたわね、こんな貴重なデータ」
ザラ「そこは、抜かりがないわよ。マダム・エレノアとロブマイヤー社と偽った、偽メールのやり取り中に、ウィルスを仕込んでおいたの。その時に、抜き取ったデータよ」
ビアンカ「さすが、信頼できる詐欺師ね。 それで、この手紙が書かれたのは夫であるハインリヒ伯爵が亡くなって間もなくだとすると、1906年に書かれたレターということになるわよね」
ザラ「そうね。カーロイ・フランツ、つまり最後のオーストリア皇帝でもある、ハンガリー国王カーロイ4世。彼が19歳の時に32歳の光子夫人に宛てた、ラブレター」
ビアンカ「カーロイったら、おませさんね、ふふふ。それじゃ1900年初頭の紙とインクを手に入れて、早速お仕事に取り掛かるとしますか。 ところで、いつまでに仕上げれば良いの?」
ザラ「デッドラインは12月23日。12月24日にエレノア達は、クリスマスパーティと称して、裏のバイヤーたちとの闇オークションを予定しているの。そこで、このレターのお披露目をするらしいから、確実に仕留めたいのよ」
ビアンカ「国王若かりし日の、眩いばかりの恋の記憶ね。おおMeir Licht!(メ リヒト)もっと光を!光子はこの手紙の存在を、知らなかったのでしょうね」
ザラ「ええ、多分、夫人の手に渡ってはいないと思うわ。
君が手とわが手と触れし たまゆらの 心ゆらぎは 知らずやありけん 2人は、手さえ触れ合えなかったんでしょうね。
でも、私たちは、がっちり手を組んでお宝を手に入れるわよ」
ビアンカ「ラジャー!」
参考資料
カール・フランツ
全名:カール・フランツ・ヨーゼフ・ルートヴィヒ・フーベルト・ゲオルク・オットー・マリア・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲ
1887年〜1922年 オーストリア皇帝 ハンガリー国王(ハンガリーでの名前はカーロイ4世)
この手紙は1906年に光子の夫ハインリヒクーデンホーフカレルギーが急逝し、光子が途方に暮れ、悲しみに打ちひしがれている時に、遠い異国から来た光子に恋心を抱いた、のちのハンガリー国王が恋文を書いていた、という設定です。
コードネーム:ビアンカ
30歳 167cm 48kg 専門分野、偽造、修復 本職は絵画修復士 イタリア、フィレンツェの大学を卒業し、文化遺産修復技術者の資格を取得 美術関連に造詣が深いのは勿論だが、趣味は飛行機とカーレース。
非常にアクティブな為、交友関係が広い。苦手なのはコウモリ。小さい時に、ドラキュラ映画を観てお漏らしをした経験が、いまだにトラウマとなっている。
上記シナリオの音声化以下のサイトで聴くことができます。
https://www.spooncast.net/jp/cast/3587144
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