第27話
「わかってもらえて良かったわ、私も危ないことは理解しているの。理解した上で誕生日プレゼントを陛下にお願いしたのよ。だから頂いたプレゼントは有効的に使いたいと思ってるわ。だから、食事の用意は不要ということでお願いね。厨房にも定期的にパントリーと保冷庫の補充をお願いしたいの。」
私は『ニッコリ』と擬音が付きそうな程の笑顔で侍女に告げる。
「姫様…」
何いってるの?と言わんばかりの声音だ。
私は言い募る。
「言葉のままよ。私も危険性を理解しているわ。その上で言っているの。危ないことは仕方ないから、なるべく怪我をしないように気をつけるわ。流しは私の身長では高さが足りないから、床に台を置いてもらっているの。横に長い踏み台をね。だからコンロの方にもそのまま歩けるようになっているのよ。だから上ったり降りたりの手間は少ないわ。初めて使ったけど不便な所は感じなかったしね。」
問題ないでしょ、と言外に匂わせる。
まだ何か言いたいのだろうか、また渋い顔になっていた。
「姫様」
侍女は咎めるように私を呼ぶ。
私はため息がでた。
「私は理解したうえで言ってるの。譲ってくれないかしら? 私が何かしたいって、そんなに問題?」
気をつけたつもりだがつい口調が厳しくなる。
「いえ、そんなことは…」
「ではお願いね。今日はもう無理だろうから、明日から自分で用意するわ」
あまりしたくはなかったが決定事項として告げる。
あくまでも今の主人は私だ。雇い主は陛下だが、その陛下から離れ付きになったときに、『主人は姫だ』と私の目の前で言われていたのだから。
私の決定には従う義務がある。
「…」
沈黙で返事が返ってきた。
もう一度ため息が出た。
「私が怪我をしないか心配なのよね?」
「はい」
もう一度確認を取った私に普通の返事が返ってきた。
「では、こうしましょうか? 誓約書でも書くわ。キッチンで怪我をした場合、どのような怪我ややけどであっても責任は誰にも問いません。あくまでも私自身の責任ですってね、どうかしら?」
私の言葉に一瞬気まずそうな顔をする。
やはり私の予想は当たっていたようだ。私の怪我から責任問題に発展するのが心配だったらしい。
「どうする?誓約書、いる?」
「いえ、姫様がそこまでお考えでしたら、厨房には明日から食事が不要なことを伝えておきます。パントリーや保冷庫の補充に関しては厨房と相談してから方法を決めさせていただきます。よろしいでしょうか?」
「ええ、ありがとう。助かるわ。それでお願いするわ」
私の交渉が勝った瞬間である
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