第2話

私はベッドから降りると部屋を見回す。


 人質とは言え一応王女としての身分があるためか、一応それなりの広さはあるし、侍女も一人付いている。


 まぁ、あまり友好的な態度ではないが国同士の関係上仕方がないだろう。


 しかし、私は8歳だ。交遊関係が少ないこの状況は普通なら捻くれた子供が出来上がるだろう。


 この国の人達はそのことに気がついていないのか、どうでも良いのか。


 まぁ、どうでもいいのだろう。


 なにせ、私は敵国の人間だ。


 そこまでの事は気を回さないのが普通だろう。




 考えても仕方のないことは考えない。


 それは、前の人生から得た私のポリシーだ。


 今はできることを考え、出来ることを楽しもう。




「さて、今日はどうしよう」


私はもう一度呟く。




人質だから仕方がないが、選択肢が少なくなる。




庭に出る。


図書室に行く(外に行くのと同じ条件で行ける) 


部屋で一日過ごす。




この三つしかない。


昨日は庭に出たし、今日も同じ事をしたら良い顔されないよね……。


ということは、図書室に行く選択肢も、なくなる。


こうも選択肢が少ないとつまらない。




それにしても、この狭い行動範囲、人間関係だと人と関係性を作れない子供になるだろう。


この国の人達は問題があるとは考えないのだろうか……。


考えないか、私は生きていれば良いだけの人質だし……。


良かったな……。


前の記憶があって……。


前の生活のおかげで思考はしっかり出来るから、捻くれずにすみそうだ。


楽しみの多かった前の生活が懐かしい。


不自由のない生活はありがたいけど、楽しみのないのは辛いな……。




「おはようございます」


名前も教えてくれない侍女が声をかけてきた。


私と彼女しかいないので名前はなくても不便はない。




「おはよう」


私も一言を返す。




彼女は黙って朝食を用意していく。


私はその様子を黙って見守る。


会話がない。


無理もない、私は敵国の人間だ、親しめないのだろう。


もしかしたら、そういう人を当てているのかもしれない。

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