第40話

わたしは自分の甘さを反省しつつおばさんにリサの事を聞く。おばさんも家族以外の誰かに相談したかったのか、ため息を付きつつ話してくれた。


内容を纏めると、リサの様子がいつもと違うというものだった。家の手伝いをしないというわけではない。手伝いはするが何というか中途半端だというのだ。


例えば、洗濯を頼むと洗濯はするが干しはしない、取り込みを頼めば取り込みはするが畳んだり、所定の場所に片付けたりはしないというのだ。何というか、ものすごく中途半端な感じだ。おばさんも頼んだことはしてくれているので、何というか注意がしにくいという。


まあ、確かに何もしなければ怒りもできるが、言われたことは問題なくしているので、注意をしても、言われたことはしたよ、と言われるのが目に見えている。




「今まではどうだったんですか? 困っているというからには、今までは違ったという事ですよね?」


「そうなの。今まではこんな事は無かったの。いつも最後までちゃんとしてくれていたのに。急にこんな感じじゃ。どうしていいか分からないわ」


「そうですね」


わたしはおばさんの話に同意をしながら、リサが拗ねているのではないかと思っていた。家族の中で一人だけ何も知らないのだ。疎外感を感じていて素直になれないのではないだろうか?


おばさん達はリサにひた隠しにしているけど、素直に今後の予定を話した方が良いと思える。




「おばさん。リサは一人だけ何も知らない事を気にしていると思うんですけど」


「だからこんな事を?」


「たぶん」


「子供みたいな事して」


おばさんはわたしの予想の話に怒り出す。子供みたいな、というが、リサは子供だし。子ども扱いをして話をしなかったのはおばさん達だ。それをリサに怒る権利はないと思う。この点に関してはリサの気持ちを優先したい私はリサの味方をすることに決めるが、おばさんの機嫌を損ねる可能性があるので先に試験運用の話を聞くことにする。リサの事も気になるがあくまでも業務が優先だ。仕事をおろそかにするつもりはない。スムーズに話を進めるために先に確認してしまおう。




「おばさん。リサの事も気になりますが、試験運用の方はどうですか?そっちも気になっています」


「そうだったね。反応そのものは悪くないよ。大体の人がありがとう、って言ってくれるし気持ちよかったって言ってくれるしね。やってみて良かったよ」


「大体の人が、と言う事は、反応の悪い人もいるんですね? その人たちは何か言ってましたか?」


「まあね。でもそこはどうしようもない事だからね」


「具体的にはどんな内容だったですか?」


確認するとおばさんは苦虫を噛んだような表情だ。嫌なことを言われたのかもしれない。


わたしは覚悟を決めつつおばさんに先を促す。


「いやね。部屋が古いとか。拭いているときが寒いとか、タオルが少ないとか。そんな感じだね」




おばさんの話の内容を確認すると確かにおばさん達にはどうする事も出来ない内容だ。宿屋が古くなってきたからこのサービスを始めたし。服を脱げば寒いのはどうしようもない。暖房器具を入れる程の広さはないし。第一そんな都合の良い暖房器具はない。そこは理解を求めるしかなんだろう。改善できそうなのはタオルが少ない事だ。そこまでは決めなかったわたしも悪いが、何枚渡しているのだろう?


わたしはおばさんを前に首を傾げる。


「おばさん。何枚渡していたんですか?」


「ん?一枚だよ」


「一枚ですか?全身を拭くのに?」


「そうだよ。そんなに何枚もいらないでしょう?」


わたしはおばさんの返事に沈黙してしまった。


デリカシーが無さすぎる。足を拭いて上半身を拭きたい人はいないと思う。


要改善だ。


これに関してはお客様の要望が正しいと思う。

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