第39話

今日は試験運用から3日目だ。


わたしは久しぶりにリサの家に来ていた。




運用結果が出る頃に尋ねる約束をしていたので、それまでは家を訪ねるのは控えていた。


本当なら途中経過も確認したかったのだが、頻繁に訪ねてはプレッシャーを掛けるようで申し訳なかったので諦めたのだ。それまでの間は結果が気になりすぎでソワソワしたり、心配から結果を聞きたくないと思ったりで矛盾した感情を抱えていた。




そんな落ち着かない感情を抱えながら3日ぶりの宿屋だ。少しの緊張を持ちながらドアをくぐる。


「いらっしゃい」




おばさんが迎えてくれた。表情は穏やかだが、声には疲れが滲んでいた。私が来なかった3日の間に何かあったのだろうか?シャワー室の運用は上手くいかったのだろうか?


おばさんの表情から不安になり、思わず問い詰めるような聞き方をしてしまった。




「おばさん、疲れているようですが、何かありましたか?もしかして運用は上手くいきませんでしたか?」


結果を聞くのは怖いと思っていたのに、今はそんな考えは吹き飛んで早く教えてほしいと思っていた。スタッフの疲弊はままある事だが、疲弊のし過ぎは問題となる。こんなに疲れるのは何事なのだろうか?


「違うよ。運用はまあまあだよ。大丈夫」


「では、どうされたんですか?ずいぶんとお疲れのようですが?」


「リサがね、ちょっと」


「リサが?どうかしたんですか」


「なんかね。反抗期なのか。あんまり協力をしてくれないのよ」




わたしはリサが絡んでくるとは予想もしていなかったので、瞬きをパチパチと繰り返してしまった。


「リサが、ですか?」


「そうなの」




わたしはリサが複雑な感情を抱えているのを知っている。しかし、今までの様子から家の手伝いをしないなんて予想もしていなかった。




学校でリサに会う事はあったが、リサがわたしを避けているのか話をすることが出来なかった。今日もリサと話をしてから来たかったのだが避けられて、家に行くことを伝えることは出来なかった。


本当なら強引にでも話しかけるべきだったのだが、わたしにはその勇気がなかったのだ。


話かけた時にリサから冷たい目で見られて何の用?と聞かれたらそのまま話を続ける自身がわたしにはなくて。


自分でも意気地がないと思うがその辺、わたしのメンタルは豆腐なのだと思う。


怖くて関係性を構築することなく下校の時間になってしまったのを良い事にしてしまった。


こんなに言い訳の言葉が出てくるのは自分でも不誠実な事をしたと思うからだろう。




その結果が、今おばさんから聞かされているこの話に驚くこととなっている。


学校で話を聞いていればもう少し考えをまとめることが出来たのかもしれないのに




後悔先に立たすとはこの事だ。


わたしは痛感していた。

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