第17話

おじさん達三人を前にわたしは気を取り直し咳払いをする。




「では、改めてお客様からの質問をまとめましょうか?お兄さんの方からは洗濯とお風呂の事でしたね。では、おばさんは?何がありますか?」


「おばさんはね、ご飯の事が多い気がするわ。朝ごはんはないのかって聞かれる」


「その時はどう答えるんですか?」


「パンと牛乳とかお茶ならあるって答えるわよ。それしかないもの」


「お客様の反応は?」


「何も言われないと思うけど?」


反応を思い返しているのか、少し斜め上を見ながら答えてくれた。


後はおじさんだ。他にも何か言われてないだろうか?


「おじさんはどうですか?お兄さんたち以外の事を聞かれたりしますか?」


「そうだな」


おじさんは腕を組む。おばさん達の話で思い当たることがあるのかもしれない。


「俺は安くしてくれって言われることがある。だから、安くした方が良いと言われて、そうかも、って思ったんだ」


なるほど。おじさん達の話を聞くと納得できる事がある。わたしの値下げの話がスムーズだったのが頷ける話だ、。おじさん達の話を纏めるとこうなる。




1 洗濯する場所があるか?もしくは洗濯を依頼できる場所はないか?


2 お風呂がないか


3 朝食がないか


4 値下げをしてほしい




やはりお客様からの希望はどこも同じなのだろう。


わたしはその話に納得しながら次の段階に進む。


「では、次の段階です。これらの話にどう対応するかになります」


「うん。父さんから聞いてるよ。ご飯をつけるとか、洗濯を変わりに頼みに行くんでしょう?」


「そうです。できれば朝食を簡単な物で良いので全員にサービスするんです。手間は増えますが値段は下げません。でも、朝食代がかかるので実質的な値下げです。どうでしょうか?これは一番喜ばれるサービスだと思います」


「でも、朝食って朝だよね。面倒じゃない?」


「お兄さんは反対ですか?」


「うん。反対じゃないけど、面倒かなって」


お兄さん的には嫌な事らしい。おばさん達はどう思っているのかな?


「おばさんはどうですか?」


「そうね。朝、皆のご飯を作るから同じと言えば同じかな」


「作るのはともかく、片付けがな」


おじさんは片付けが嫌みたい。男の人はそうなのかな?おばさんは賛成、おじさん達は賛成だけど、みたいな感じかな。


「では、朝食を出すのは賛成だけど、ということで大丈夫ですか?」


「「そうだね」」


おじさんとお兄さんは異口同音だった。おばさんは無言。おばさんの意見は違うのかな?


反対と決め付けるのは良くない。何か違う意見があるのかもしれない。


「おばさんは朝食を出すのはどう思っていますか?」


「出すのは良いけど。効果はあるのかしら?頑張っても無駄なことはしたくないわ」


なるほど、確かに無駄なことはしたくないと思うのは同然だわ。わたしも同意見だ。無駄なことはしたくない。でも朝食がを出してお客さんの反応が良くなくなるなんて確約は出来ない。


可能性があるとしか言えないのだ。そこは正直に話すしかなかった。


「おばさん、無駄なことはしたくない、その気持ちは当たり前だと思います。わたしも同意見です。この朝食サービスでお客様の反応が良くなるとは確約できません。やって見ないことには何とも言えないんです。でも、このまま何もせずお客様が減りつづけるのを見ているのとどちらが良いかっていう話になると思いますが、どうでしょうか?でも、その前に他の方法も考えてみますか?朝食の話はあくまでも提案の一つにすぎません」




話はここからだ。

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