第10話
「パルちゃん、なんか怖いね。でも、客足が戻ってほいしのは本当だよ」
「おじさん、わたしは手段は問わないかを聞いているんですよ?お店や宿屋を経営しているなら客足が戻って欲しいのは当たり前じゃないですか?」
「・・・違法的な事ではなく、おじさんにできることならするよ」
「・・・おじさん。わたし、捕まるような悪いことはしませんよ」
「いや、なんか言い方が怖かったから」
何を言われるのかと、心配そうなおじさんは逃げ道を作ってわたしの話しに乗ってきた。いや、逃げ道がある時点で、乗ったとは言わないのかもしれない。
まあ、とにかく話の下準備はできたようだ。
「先に言って置きますが、おじさんが嫌なら無理にこの話を実行しなくても良いんですからね。あくまでもわたしの提案です。そこは勘違いしないでもらいたいです」
「そうなのかい?話の流れから絶対実行するように、って言われるかと思っていたよ」
「まさか、わたしはあくまでも提案して、お手伝いをする立場です。ダメなら別の方法を考えますよ」
「よかった。何となく安心したよ。じゃあ、その提案を聞かせてもらえるかな?」
本当にホッとした様子を見せたおじさんは、わたしに話の先を促した。
テーブルの上で指を組み緊張した様子を見せている。
おじさんにとっても今後の経営の考え方の一つになるから緊張しているのかもしれない。
わたしも緊張している。今までコンサルティングの仕事はしたことがない。もちろん依頼も受けた事はない。前の人生も含め初めてのコンサル業になる。緊張しないはずがない。
「おじさん、提案の一つ目です。一番簡単な方法です。」
「うん」
「値段を下げます。それこそ、この辺の相場に合わせるんです。さっきの話では金額までは聞いていませんが、他の宿屋よりは少し高い印象がありました。どうですか?」
「んん、まあー、それはね。す少しだよ」
「少しでも、泊まる人は値段に敏感です。今までは一番新しい宿屋だったから気にしなかったけど。他に良いところがあれば人が流れていくのは当たり前のことです。その対処方として一番簡単なのは」
「値段を下げる、か・・・当然といえば当然だな。今まではなんとかしていたが、そろそろ諦めた方が良いときなのかもしれない」
おじさんは下を向きながら諦めたように呟いていた。
なんと、わたしの提案にあっさり同意してしまった。こんなに簡単に同意するとはわたしも思っていなかったので、私の方が逆に焦ってしまった。
「おじさん、待ってください。そんな簡単に値下げをしても良いですか?」
「いや。パルちゃんの言う通りだよ。今までは頑張ってたけど、この様子では客足は戻って来ないだろう。新しい宿屋ができれば綺麗なところがいい人はそっちに行くもんだよ。今までは認めたくなかったけど。そこは認めないといけないのかもしれない」
おじさんはそういうと値下げを本気で考えてしまっている。
待って~
それだったら私が来た意味はないと思うんだけど。
なんか失敗したかな、値下げを一番嫌がると思ってたから、最初に提案したんだけど、こんなことなら最後にするんだった。おじさんを不安にさせてしまった。
始めてのお客さんを不安にさせるなんて、最低だ。
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