第6話

「今日はこれで終わりです。気をつけて帰ってください」


先生の声が終了を告げた。


私はその言葉と同時にリサの方へ歩き出す。




「リサ、帰ろう?」


「うん。なんか気合が入ってる?」


「ちょっとね」


私のあまりの勢いにリサが引いていた。いろいろ考えていたからか力が入っていたみたいだ。


ごめんよ。


おもってはいたがそこには触れず話を先に進める事にした。




「さっきの話だけど」


「あ、ごめんね。変な話しして。ビックリしたよね」


私が話す前にリサがさっきの話をなかったことにしようとしている。


自分から言い出したけど家庭の話を持ち出したと反省したのかもしれない。だからといってなかった事にしてほしくはない。私は始めてのこの案件に真面目に取り組むつもりだし。リサの心配をなんとかしてあげたいと思っている。




「リサ、私はフザケてるつもりはないよ。真面目に取り組むつもりだし、何とかできるなら何とかしたいと思ってる。本気だよ」


「本気って、どうするつもり?」


「そうだね。まずは真面目なリサーチから、かな?」


「リサーチ?」


「うん。お父さんたちに話を聞きたいんどけと、いいかな?」


「お父さん達に?」


リサは私の提案に驚いている。大きな目を更に大きくして私をみている。


そんなに目を開いたら、目がこぼれ落ちそうだな。


「本気なの?」


「もちろん。どんな事でも本人の話を聞くことが一番大事だから、確認したいこともあるし。今から会いに行ってもいいかな?」


「本気なんだ」


呆気に取られているのをいい事に、私は彼女の家に突撃していた。




リサの家は宿屋の上にある。1階と2階が宿屋でその上の3階が家族の住居だ。リサの家に行けば自動的に両親には会えるのは間違いないだろう。


この世界は自分で商売をしている人は、住居とお店が一緒なのは普通のことだ。


私の家も同じようだしね。




帰り道もリサは心配ないと、変なことを言って悪かったと、何度も言っていた。


家庭内の事を私に話して怒られる事と考えているのかもしれない。




「リサ、怒られるかも、って心配してる?」


「うん、だって、やっぱり、こんなこと人に言うことじゃないって、お父さんに怒られそう」


「まあ、お家の事情だしね。商売の事にもなるし、おじさんは思うところがあるかも」


「でしょう?だから、忘れて」


「わかるけど、ごめん無理だわ。私にできることがあるかもしれないでしょ?だから話だけでも聞きたいわ。だから、ごめんね、リサ。おじさんには会いに行くわ」


「パル」


リサはおじさんに怒られるのを想像しているのか、悲しそうな表情になっている。


そんなりさに申し訳ない気持ちになるが、わたしにとってもコンサルの初めての依頼になるかもしれないのだ。諦めることはできない。


ここで諦めずに、依頼者を説得することも手腕の一つになるだろう。


何事も諦めたら終わりなのだ。


わたしはリサを説得することにした。




「ねえ、リサ。お家の事が心配なんでしょう?じゃないとわたしに話したりしないわ」


「それは、やっぱりね。自分の家の事だし」


「だよね。だからさ、わたしが無理矢理聞き出したことにするから。そこは心配しないで。わたしがおじさんに上手く話すから。ね。」


「大丈夫なの?怒るとお父さんは怖いんだよ」


「わかった。そこは上手くするから。とりあえずはおじさんに会いに行こう?」


「うん。本当に大丈夫かな?」


リサは何となく心配しているようだが、そこを押し切りリサの家に到着することが出来た。


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