第10話 インフラ整備

 早朝3時、城にある僕達の部屋のベランダからエートル王都を見ていた。

 インフラ整備を始めるために計画を立てる。まずは王都の水の除去からだ。と言っても簡単ではない。王都の道に水があるせいで水の除去作業がとんでもなく長丁場になる予感しかしない。これくらいの水なら太陽光で乾くのは無謀すぎる。

 「さて、どうするか…」

 「これら全部…下水道とかに流せばいい」

 隣にいるフィルが提案した。下水道だとなぁ…少しだけもったいないような気がする。下水道は捨てるって事だと思うし…水道管に流しておいたほうがいいか?ろ過とかしたほうが良いと思うけど、飲料水になって無駄遣いにはならないと思うから。

 …だけど一つだけ問題点がある。どうやって水道管にこの量の水を移動させるかだ。…傾斜とか色々利用して移動させるという手もあるが、時間がかかるしコストもかかる。しかも、ろ過という泥とか土を水から抜くという手順をしなくてはいけないため、ただ水道管に突っ込むだけではだめだ。どうすればこの量を水道管に乗せることが出来るか…。

 「何かいい案…凍らせるか?だけど屋外にあるからうまく凍るはずがないよな。暖かいし、凍ってもすぐに溶けるだろう」

 「フィル、思いつかない」

 フィルはそもそも僕の護衛だから、頭は凡人レベルだ。だからここは一応頭脳明晰だと思われる僕が思いつかなくてはいけない。そうだな…。

 「ここの城の掃除機を使うぞ〜。それで水を吸う」

 故障したらその時はその時だ。

 僕達は城にある掃除用具がたくさんつまっている用具部屋に向かった。掃除機を見てみようと思って来てみたけど。

 「防水機能はある…だけどこれだけでは水の除去に数日かかるな」

 「…どうする?」

 掃除機だけではインフラ整備に時間がかかりすぎる。魚人族がいつ攻めてくるか分からないし、戦力を増強するためにインフラ整備はしっかりしておきたい。経済とか発展させなくては十分な戦力が確保できない。…一瞬で水を除去するには…。

 「…池の水を抜く方法と同じ方法ととるか。かいぼり…だっけ?」

 人材を集めて、みんなで王都の水抜きに尽力した。掃除機も使用してペースをあげる。タンクが満タンになったら王都の東の方にある貯水湖に入れる。みんなも頑張っていれてくれている。発明で終わらせてもいいが、この王都をかなりのスピードで水抜きをする装置を開発するのに材料が揃っていても数週間かかる。しかも、この王都で材料が揃えられるか怪しい。なので人力で頑張るしかないのだ。魔法が存在する世界にいるとは思えないくらいに力任せではあるが。

 俺たちも長靴を履き、水の除去に勤しんだ。人間族は絶滅危惧種ではあるが、全員この王都に集まっていたため、数万人の人材が居た。各地に拡散されていなくてよかった。奴隷にでもされているのかと思っていたけど、人間族では使い物にならなすぎて逆に奴隷にされなかったのかもしれない。リーヴルも頑張ってくれている。

 男性とフィルは水の除去に勤しみ、女性は疲れを癒やす事に勤しんでいる。女性は力がないから疲れを癒やすのが最適な役割だ。少しペースは遅れるが、みんなのやる気が常に上がっていると除去するペースが落ちないため、やる気を上げるのは戦場でもこういう労働でも必要なことだ。

 夕方まで除去作業をしていた。そしてついに除去することに成功した。

 「あぁ〜…だいぶ…疲れたぁ…」

 僕も膝をついて、休憩する。動きが遅くなる水に足を取られている状態で多くの水を運び、貯水湖に入れる作業を早朝から夕方までやったのだ。完全に現実なら労働基準法違反ですね、どうも。

 フィルは機械だからか、疲れというのはない。だけど現在、城に戻って太陽光発電で発電された電気を体内に入れている。つまり簡単に言えば充電している。疲れて、もう一歩も動けないところでリーヴルがやってきた。

 「お疲れ…さまです…。城まで送りましょうか…?」

 リーヴルの後ろには通れるようになった馬車があった。今まで水があるせいで通ることが出来なかったから、馬も快適に歩けるようになってよかった。

 「…お願いするよ…」

 真面目モードもおしまい…これからいつものゆるい僕で頑張っていきたいと思います…。フィルと同じように城に戻る。

 馬車がゴトンゴトンと揺れている。電車と似ている揺れ。電車がガタンゴトンと鳴るのはレールのつなぎ目を通っているから…だったはず。最近ではあんまり揺れなくなっているみたいだけど、なんだか懐かしい音だなぁ。

 城に戻ってきて僕達の部屋に戻ると、真っ先に僕はベッドに倒れた。眠気との戦いで、ベッドのふかふかの感触に包まれてしまったら爆睡してしまうそう。フィルもその光景を黙ってみていた。エテルネルオーブの解析もあるし…廃れている家とかも修復しなくてはいけないし…あぁ…やるべき事が多すぎるよ…。

 疲れ果てて、次に目覚めたのは数時間後…。

 ごーーーん!

 「わぁああああ!?」

 いきなり金属同士がぶつかったような音が僕達の部屋に鳴り響いた。すると金属製のフライパンとお玉を持ったフィルがこっちを見ていた。後ろにはいたずらっ子みたいな笑顔をしているミィの姿が。

 「これが君たちの世界の起こし方なんだ〜」

 「いや、違うから」

 普通は目覚まし時計とかアラームが普通の起こし方だから。そこ、勘違いしないでね。これは普通というよりゲームとかバラエティ的起こし方だから。

 「それで…えと…何の用…?」

 「ご主人さま、エテルネルオーブの研究の時間」

 あぁ〜…もうそんな時間なのか?毎晩、僕は午後5時に一時間、エテルネルオーブの研究に費やしている。この世界の機械族の核となっているエーテルという核をさらに模造すれば何とか太陽光発電に頼らなくてもいいかもしれない。太陽光発電は…というかこの世界を照らしている恒星は太陽なのか?…面倒だから名称が分かるまで太陽でいいか!太陽が出ている間だけ発電するから雨とか曇りとか雪とか雷雨とか霧とか暴風とか吹雪とか砂嵐とか…それらの天候だったら発電しないから。

 「よ〜し…頑張るか…」

 真面目モードになり、僕は僕達の部屋を出る。

 「ご主人さま、髪の毛…ボサボサ」

 ときつい一言をフィルに言われても、歩いて研究室へ行った。

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