第5話 作戦会議

 さてフィルと作戦会議しよう。…リーヴルも含めて。

 「この国は魚人族に支配されていると聞いていましたが、魚人族の誰がこの国を支配しているのですか?」

 恐らく長ではないと思われる。長はスウルスシレーヌ…魚人族たちが根城にしている地域にいるはずだ。だけど長ではないとは言え力が強い…それか権力が高いやつが支配しているのは確実だろう。長…一族のトップが推薦してなったのなら…だけど。

 「えっと…長の側近の一人であるヴァッサーです。…水を生成することが出来て…魚人族の長所を…生かして戦ってきます…。…実際に、人間族の長と…戦っているところを見たので…それは知っています…」

 水が生成出来るということは魚人族の厄介なところである水と同化することが出来る点を永久…いや恐らく長時間活かせれるということか。多分、生成方法は…マナを使用して生成する…。人間族であるリーヴルに聞いても意味ないか?でも一応聞いてみるか。

 「そいつの水の生成方法はマナを使用して生成ですか?」

 「…ごめんなさい…それは…」

 「本に…魚人族は水を生成する…なんて事は書いてなかった。…信用するのなら…恐らく方法は…ご主人さまの言う通り」

 確かに魚人族に関する本には水を生成する器官とかそういうのは存在しなかった。つまりそれらは魔法で作っている代物になる。そしてマナはいつか尽きてしまう。だからこそ永久でもなく、半永久でもない。…しかも上位の地位を持つ存在の魔法だったら他の魚人族が使えないのは理解できる。もし、これで魚人族の固有魔法だ〜とか言われたら拍子抜けするけどね。

 「まぁ、普段から湖に住んでいる辺り…水を生成する魔法は難しい魔法…なのかね」

 「…それは…ありえるかも」

 「…何かを…生成する魔法は…かなり難しいです。…そういうなにかを生成する器官があればそこまで…難しくはないのですが…魚人族はそういうのはありません…。なので…難しいのは確定しています…」

 「それなら他の魚人族が使えないのは分かったな。あとはどうやって攻撃するかだが…」

 「…というか…襲撃をかけるつもりですか!?」

 え、何言っているの、この人。作戦会議している雰囲気で今更それを言う?襲撃をかけるつもりに決まっているじゃん。…流石にこの状態では永久に戻れそうにないからなぁ。…両親もいないし、親戚もいないあの世界だけどね。

 「だめですよ!みんなの命が…!」

 「じゃあ、このまま支配され続けていいのか?」

 あまりのことについ敬語を外してしまった。…失礼だけど…気にしてないでくれるならこのまま行こうかな。

 「…それは…確かに…嫌ですが…。でも…」

 「…今…人間族…絶滅危惧種」

 「え?どこでそれを…」

 町の人口を見て、これは絶滅しそうだなと思っただけ。この図書館…国と深いつながりがあるのかは分からないけど、人口について書かれている本があった。それは最近更新されていて、数日前の王都の人口が分かった。そして支配される前である10年前、王都は400万人いたにも関わらず、数日前の人口は1万人しかいない。ほとんどが栄養失調での死、精神疲労による病気で死、服毒自殺、首吊り自殺などの自ら死を選んだり、環境の劣悪さに耐えきれず栄養が行き届いていなくての死か精神崩壊を起こしたりして人間族が死にまくっているという状態が続いている。子供はもう100人しかいなく、現在は労働力として城に過酷な環境で働かされているらしい。子供は遊ばないといけないのに…。

 「…命に保守的でもよ。このままでは何もせず全滅ルート。いわばバッドエンドかゲームオーバー…ゲームのようにセーブなんて機能は現実には存在しない。本当のゲームオーバー、やり直し不可能。…それなら最後の最後で下剋上したほうが生き残れるかもしれないだろ〜?」

 「…私達…世界…支配されても…戦ってた。…支配から…逃れたいから」

 「僕達はまだこの王都の支配の辛さ、過酷さなんて知らないけど、このまま行けば僕達も死ぬかもしれない。…だから命を守るために命をかけるんだよ」

 「…矛盾」

 「大体のゲームなんてそういうものだろ」

 「…確かに…」

 自分の命を守るために自分の命をかける。このまま衰退して死ぬのなら下剋上してやれば生き残れる。戦争は命をかけるもの。だけどこの戦争は自分の命を守るための戦争だ。…矛盾していても人間の行動原理なんてたまに矛盾しているだろうから。…僕も立派な人間なわけだしね。フィルみたいに機械ではないから。

 「…どうにか出来るわけ…ないじゃないですか」

 「考えても出なかったら諦めるかもね。だけど思いついたから」

 「え?」

 なんで思いつかなかったのかと問い詰めたいところだけどなんか茶化してはいけない雰囲気だと思うからこのまま言っちゃおう。

 「…質問する。電気という概念自体は存在しているんだよね?」

 「…あ、…は、はい…光属性の…派生である…」

 「よし、オーケー。さぁ〜て実験するぞ〜フィル。今はもう深夜だから魚人族は寝ている…魚人族って寝るのか?」

 「寝ます…」

 「それなら安心して外に出るぞ〜。あ、でも大声は出すなよ〜」

 「了解…」

 「えぇ〜!?」

 大声出すなって言ったのに…まぁ、この部屋の周りに魚人族いないから問題ないか。…まぁ、魚人族が近くにいたら\(^o^)/オワタ案件だけどね。

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