第3話 情報収集

 リーヴルが館長を務めている図書館はかなり広かった。日本でも探せばありそうな広さだが書物の量は圧倒的にこっちの方が多いだろう。文字を早めに覚えないといけないなぁ。

 「…魚人族がいます。今は…出ない方が良いです」

 「魚人族って何が脅威なんですか?」

 魚人族だから水と関連している長所だと思うけどな。例えば水の中にいるとスピードとか攻撃力がアップするありがちなところとか、水と同化することが出来るとか…。…後者だとかなり強いな。「水」であればなんでもいいって感じだもんなぁ。

 「…魚人族は水棲の一族です。普段は…ここから南東にある…巨大な湖がある地、スウルスシレーヌという場所にいるのですが…」

 「支配されたと」

 「ど直球に言うな、フィル」

 普段は水の中にいるわけか。淡水でも塩水でもなんでもいいのだろうか?淡水だけ適応しているなら何とかなるかもしれないけど…いや、でも今思ったが…塩水…というか海水だな、その2つに適応する魚なんているのか…?…魚人族…人が入っているから対応できるのかな。

 「…この地のエテルネルオーブを求めて侵略してきました。…今、この地のエテルネルオーブは…魚人族が支配しています」

 「エテルネルオーブ?」

 「知らないの…ですか?…なんだか変な人…ですね、貴方達は」

 あ、疑われている。エテルネルオーブというのはこの世界では知っていて当然なもの?なのか?オーブと言っているから球体型のエネルギーってことか?ただ言葉のイメージから推測したことなのだが…合っているかどうか分からないが。常識的なものを知らず、そして文字すらも読めないときた。…怪しむのも無理もないだろう。

 「あぁ〜…実は…」

 隠し通せないと思って僕はリーヴルに異世界から来たことを話した。怪しまれたままだと動きにくいという理由もある。だけどこういう話を信用してくれるかどうかが問題である。異世界から来た来訪者がこの世界ではそこまで珍しくもないのか、それとも前例がない事なのか。…どちらかで信用度が変わる。前者だった場合、安心される、だけど後者だった場合…もっと怪しまれてしまう。さてどうなるか…。

 「異世界…から来た…?」

 あ、「?」をつけている…これは反応的に後者っぽい…。やっぱ人生うまく行くわけないよなぁ…。もっと怪しまれてしまうパターンハマる。ど〜やって信用度をあげていけばいいのかな〜。疑心暗鬼にさせたらいつかすべての行動を怪しまれてしまうよ…。鬱陶しい…な〜んて冗談だけど。

 「…そんなの…信用できません…」

 「あ〜やっぱり」

 「来訪者、前例、ない」

 さて、ここからどうするべきなのか…。まぁ、本当に異世界から来たということを説明するしかないかもな。

 「でも僕達が異世界から来たのなら色々辻褄が合いますよね?」

 「…確かに…ですが…異世界からくるには世界と世界をつなぐ強力な魔法陣が必要となります。これは…種族序列の一位である神道族でも上位の者でなければ不可能のはずです」

 神道族?…なんだそれ、聞いた感じだと…というか予測するなら僕達の世界で言うところの神様か?神様って最強のイメージがあるから…そりゃあ一位だろうね。

 「神道族が人間族に手を貸す理由なんて…ない…はずです」

 「そうですか。…でも僕達は異世界から来た。その主張は止めるつもりはありません。…それが僕達にとって事実なのですから」

 「でも…」

 これは…異世界から来た決定的な証拠がなければだめなやつだ。…あるか?僕にまだ…そうだなぁ…モバイルバッテリーとかカバンぐらいしか持っていないからなぁ…。

 「…バッテリー」

 「え?バッテリーつきつければいいのか?」

 「…なんですか?その…ばってりーというものは…?」

 …あぁ、そういうことか。バッテリーというものが分かっていないんだな。…といいうよりバッテリーというものがこの世界には存在していないのか?機械族がいるのにすごいことだなぁ。…機械族の構造とか分かったらもしかしたらフィルを改造出来るかもしれないなぁ。おそらくバッテリーとかが存在しなかったら機械族の動力源は永久機関に似ている代物を使っているはず。それならフィルも永久的に動くことが出来るはずだ。錆びたら僕が直すだけだ。

 「これ見たことありますか?」

 「…なんで…しょうか。見たことありません…。機械族も…こういう部品は使っていなかった…。これが…バッテリーでしょうか?」

 「あぁ、この世界にはないのですか?」

 「…ないです…」

 「ないものを持っているということは異世界出身であること…認めてくれますか?というか信じてくれますか?」

 信じてくれないとかなり困るのだが?でもこれ、かなり証拠としては弱い気がするんだけどな。独自で作ったマシーンとまで言えばどうとでもなるよな。…それで納得するなんて余程の警戒心のなさ…でもこの女性はかなり警戒していそうだから…大丈夫そうかな。…困るは困るけどな。

 「…分かりました」

 え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。納得しちゃうの?まぁ、信用してくれるならいいんだけど…なんか…警戒していた割に納得するの早くない?ただバッテリーという説得力が弱い証拠品出しただけよ?それなのに説得できちゃったよ。完全に低確率のキャラを引き当てた…狙いではないキャラを引き当てた感じじゃん。

 「とりあえずこの図書館の閉館時間は?」

 「6時です」

 「一時間」

 「それならこの…リーヴルの部屋でいいのですか?」

 「書物管理室です。ここは」

 書物管理する場所だろ、図書館は。それで書物管理室って必要なのか?…入荷した本とかを保存しておくのか?それなら書物保管室って名前でいい気がするんだが?…なんでこんな細かい事を気にする必要があるのか。

 「じゃあ、閉館時間までここにいていいですか?この世界の情報を知りたいのです」

 「…分かりました。でも…文字…」

 「頑張って解読するから大丈夫です。音声言語は一致しているので対応する文字に当てはめていくだけです。少しだけ読んでくれますか?」

 「…す、すごい…ですね」

 …文系は苦手なのだが、そんなことを言っている場合ではない。理系は暗記教科であるから覚えること自体は得意ではあるから問題はないと思われる…。国語や社会も暗記教科なんだが、主に社会は。…興味あるか、ないかの問題なのかもしれないのだがな。興味ある教科はめちゃくちゃ覚えて、ない教科はすぐに忘れてしまうことってあるある…というよりそういう人間がいるよね。

 暗記することは得意ではあるから、少しだけ読んでもらえばどうにかなるはずだ。

 「それでは…」

 「あぁ」

 「…」

 「…あとで文字についての知識を入れておくから」

 「ありがと」

 少し時間がかかるかもしれないけど頑張って覚えていくとしますか。

・・・・・・・・

 「よし、覚えた」

 「え!?まだ一時間くらいしか経っていませんよ!?」

 「覚えたは覚えた。そういうわけでフィルを改造させてください」

 「は…はい…」

 (なんだかすごい人…人間族にこんなに頭が…あ、異世界の人か)

 フィルに頭巾を脱ぐように指示をして、頭にある頭脳…というより脳?どっちでもいいか。それにプログラムして僕が理解したこの世界の文字についての知識を入れる。それでフィルもこの文字を読めるはずだ。…バグとかは考慮しない☆

 「とりあえず読めるか?」

 「……妹?」

 「よし、読めるようで安心した」

 (この文字…本当に妹だし…たったの一時間で言語を一つ覚えたということ?)

 「それじゃあ…ここ辺りの本を全部読んで。そして重要な情報を僕に教えてくれ」

 「理解」

 よしよし、これで情報収集が出来るはずだ。…本はかなりある。時間も結構あるからある程度…というより最低限の知識ぐらい持つことができそうだ。この世界がどういう世界なのか…知るにはやっぱり人から聞くか、本だな。人から聞くのはその人に労力を使うし、どれくらい知識が存在するのか不明だからな。…あと、ここでリーヴルが説明していると魚人族にこの声を聞かれるかもしれないからな。ここでゲームオーバーは勘弁してほしいなぁ。

 「片っ端に読んでいくぞ」

 「…分かった。ご主人さま」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る