第1話 異世界の解析開始

 「…ん…んぅ…むぅ…うう…」

 なんか土の中に顔が埋まっているような気がする。そしてなんか体が少しだけ麻痺している…ような…。もしかして少し高めのところで頭から落ちた?おい、頭から落ちたなんて死ぬぞ。2mだけで死ぬ可能性が高いぞ。…そう考えるとそこまで高いところから落ちていないかもしれない…。…少し高めとか言ったけどくっそ低いところから頭から落ちて土に埋まったかもしれない。

 というかフィルは大丈夫か?機械人形であっても衝撃が来るからぶっ壊れているのかもしれない。それだったら急いで修理しないと…!といいたいけど…。

 さっきから頭が抜けないぃ〜!すっぽりハマってしまった…だからめちゃくちゃ…抜けない!痛い!誰か引っ張ってくれ〜!

 「ご主人さま。土に還りたいの?」

 「ん〜!んん〜!!!!」

 フィル!無事だったか!といいたいんだけど……。

 土に還りたいというわけではないから引っ張ってくれ〜!お願いします〜!

 「必死になっている辺り…抜いてほしいそう。加減ミスったら…ごめん」

 と言ってフィルは力いっぱいに僕を引っ張った。なんか僕が「大きなカブ」みたいになっているような気がするんだけど…。いや、僕はカブじゃない!野菜じゃないから!ちゃんとした人間だから!というか結構痛い!僕、本当にカブのようになってしまったの!?野菜じゃない!土に埋まって根で水分とか養分とか吸収する生物ではないんだけど!?呼吸できないから!

 「5、4、3」

 え、何そのカウントダウン。フィルさん?何をやるつもりなのでしょうか?…爆発!?爆発なわけないよね!?爆発とともに僕の体は吹き飛ぶか消し炭になる!消し炭…ぎゃああああ!

 「2、1…ブースト全開」

 「ふぁ?」

 ああああああああああ!

 痛いって!もしかして電力を大量消費して足に装着しておいたブースト機の出力を…ちょ!?体引きちぎれるって!でもこれなら…!

 スポッ!

 「出れた!ってちょっ!フィルさん!このままだと僕、地面に叩きつけられ…!」

 ガゴン!

 いったああああああああああああああああ!

 「加減ミスった、ごめん」

 「頭がフラフラするわぁ〜…」

 なんか女口調になってしまった…あぁ…男なのに…。

 「うぅ…とりあえず…ここはどこだ?」

 「…空間掌握開始する?」

 「残りの電力は?」

 「75%。空間掌握に必要な電力を計算…あ、無理だった」

 「空間掌握に必要な電力は15%。一分でだ。それで何に使うんだ?」

 使う用途で秒数が変わる。…15%未満になるのかもしれない。だから聞いておく必要性がある。…頭がフラフラしている状態で正確に計算できるか不安だけれど。

 「大気の状態…」

 「酸素とか窒素とかか…それなら解析するのに最低限10秒は必要。60秒で15%。10秒だと2.5%。…許容範囲だ。使ってもいい」

 「理解した。それでは空間掌握の開始」

 彼女の目は解析が出来る機能を持っている。気象する人が使っている機械…大気の状態が分かる機械を超小型したものが彼女の目に搭載されている。構造は…まぁ、秘密だ。フィルのことは学校の誰にも話していない。発明品でも世に出てはいけない発明だってある。出てはいけないというわけではなく出させたくないというのが本音なんだけど。

 気象は星を上から見ないと…つまり人工衛星から見て大気の状態を知ってそれらを予測していく。それを物質の成分解析機能と統合して大気の状態…つまり目に見える成分などが分かるようになる。…超技術とか言われても僕が発明したのだから超技術というわけではないのかもしれない。

 「…把握した。酸素濃度21%…地球とほぼ変わらない。二酸化炭素が0.03%…だけど…正体不明の元素が79%ぐらい占めていた」

 「有毒元素…ではなさそうだなぁ…。僕が生きているから…特に害はなさそう」

 酸素濃度はほぼ地球と変わらないのなら問題なく生きられるかもしれない。純酸素だったらもう死ぬ。

 「とりあえずここを出よう。異世界なら町でもあるかもしれない」

 「でも、ここ…森。抜けられるの?」

 「まだ夜ではないから抜けられるかもしれない。夜の森はかなり危険だから速攻で抜けないといけない。…直線で進んでいこう」

 直線に進んでいけば…何とかなるかもしれない。永遠に続いているのなら詰むけど。ゲームオーバーだけど。こんな序盤にゲームオーバーになるなんてなんて初心者かクソゲー?

 僕達は進んだ。森を抜けるために。…そして長い時間歩いていると…木々がなくなってきた。どうやら抜けたみたいだ。

 「…あ、町…というか王国のような場所が見える」

 「確かに…というか大丈夫かな」

 「なぜ?」

 「ここって異世界だよね?言語が一致していない可能性があるよね。…音声言語が一致していれば文字が違くても覚えることは簡単だけど…」

 文字が違って、しかも音声言語まで一致していなかったらとんでもない期間で言語を覚える必要性がある。…異世界から現実世界に戻るまでこの世界に住民とコミュニケーションを取らなければこの世界に人達と協力することが出来ない。

 「…行こうか。この世界の解析のためにね」

 「分かった。ご主人さま」

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