第45話 大阪皐月家

 翌日。


 凛空は悠月に教えて貰った場所へやって来た。


「ここが……大阪の皐月家……」


 凛空は建物を見上げ、そう呟いた。


「凛空くん、来たね」


 ぼーっと立っている凛空に、莉乃明はそう声を掛けた。


「あ、数日ぶりです」

「そうだね。中入って。ここで話すのもあれだし」

「は、はい」


 凛空は莉乃明に促され、敷地内に入って行った。


 そして凛空は、朝吹家の時と同じように客間のような場所に通された。


「改めて。皐月莉乃明です。よろしく」

「風晴凛空です。よろしくお願いします」


 二人はお互いに自己紹介をした。


 凛空は、ここ最近自己紹介しかしていないと気付いた。


「急に従兄弟なんて言われてもって感じだし、君のお母さんは出て行った人。六系家はそういう人に厳しいよ。だから、凛空くんに向く視線も厳しいものになると思う」


 五宮家で翔音が冷遇されていたのと同じ理由だ。これは六系家に限れば、どこの家も同じのようだった。


「でも、凛空くん才能あると思うし、大丈夫だと思うよ」

「いや……才能は……微妙ですけど」

「去年、入学してくる有力者の名前に無かったから、今年魔術師になったってことでしょ? 半年で魔力を感じて、皐月の術式が使えるようにまでなるのはもう才能でしかない。そもそも、魔力量自体が才能の賜物だよ」

「そう……ですか」


 魔術学園高校では周りと比べたらダメだ。周りが凄すぎて、自分の才能にすら気付けない。


「凛空くんってさ、何で急に皐月家の繋がりだってわかったの? っていうか、急に魔術師になった理由って何?」


 莉乃明は凛空にそう聞いた。


 凛空は一瞬戸惑ったが、従兄弟である莉乃明に話してはいけない話ではないか、と話すことを決めた。


「快音くんが家に来て、両親が魔術師で、任務中に死んだって。それは嘘じゃなくて、遺体もちゃんと見た。それで、母さんが六系家の皐月家の人間で、俺にも魔力があるから、魔術師になってみないかって。二人が見た世界を見てみたくて、魔術学園に入って、魔術師になった」


 凛空は莉乃明にそう説明した。


「魔術師になれてるかは知らないですけど……」

「魔術学園に入った時点で魔術師だよ」


 凛空は莉乃明にそう言われ、内心少し安心していた。


「凛空くんはさ、死んだ時の状況とか、詳しく聞いてるの?」

「いや……任務中にってことしか……詳しいことはわからないらしくて……それがどうしたんですか?」


 本人にしかわからないことというのは当然だ。

 目撃者など当然いるわけもなく、都合よく防犯カメラなどもないだろう。そもそも、一回一回調べてもいられないだろうし。


「ちょっと……怪しくない?」

「え?」


 凛空は任務の時、自分に起きたことすら明確には覚えていない。だから、わからなくて当然だと思っていた。


「君のお母さんは、皐月家としては才能が無くても、普通の魔術師としてなら実力はある。そんな人が死ぬような任務って、どんなのかなぁ……って。それに、死んでも連絡されなかったってことでしょ、それ。普通は本部から連絡されるはず」


 確かに、その可能性はある。

 そうなると怪しくなるのが快音だが……凛空は快音を疑いたくはなかった。


「父上は……何か知ってそうだった?」

「いや……動揺を隠せない……って感じだったと……」

「じゃあ、皐月家に連絡は無しか……」


 風晴家にも、皐月家にも死亡したことは知らされていない。

 どんどん怪しくなっていく。


「怪しくない? やっぱり」

「……うん」


 凛空は自分を魔術師にさせたその出来事を疑い始めた。元々完全に信じ切っていたわけではないが、怪しい要素が増えて行った。

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