第9話 すげーご褒美

「ノルマがクリア出来たのはいいけど……」


 そこら辺に散らばってるコボルト【RR】の死体と通常のコボルトの死体を拾うと俺は首を傾けた。


 今この時だけこいつらを殺したところで、コボルト【RR】は通常通りなら1、2時間くらいで沸き出すし、この光、モンスターハウスの発生源はどのくらいのスパンで大量にモンスターを吐き出すか分からない。


 湧き潰しとか出来ないのかな?


 でもそれはそれでコボルト【RR】を狩りに来れなくなりそ――


「なんだあれ?」


 光の横にさっきまではなかったはずの宝箱が。


 多分だけどこのモンスターハウスを攻略したご褒美として現れた、みたいな事だと思う。


 ダンジョンが現れるような世界になってから結構経ってるけど、こういったゲームみたいな仕様が謎なんだよな。


「ま、宝箱なんて早々お目にかかれる物でもないし、ありがたく頂戴します」


『人間による【コボルト】の隠し通路及びモンスターハウス攻略を確認しました。この箇所を隔離し、新たな通路、モンスターハウスをダンジョン内に精製します。また、今回の攻略達成報酬としてこの箇所は攻略した対象の敷地となりました。出入口の設定、モンスターのスポーン設定を水晶【コボルト】を用いて完了してください。水晶【コボルト】は攻略した対象のみ操作可能です』


 え? それってもしかして、ここが俺だけの物になったってこと?


 アナウンスさん、淡々と説明してくれたのは嬉しいんですけど、頭が追っつきません。


「……とにかく喜んでおくか。わーいっ!! ひゃっほーいっ!! ……よし」


 32歳で馬鹿な事をすると、無性に恥ずかしくなり、虚しくなる。


 それを利用して気持ちを落ち着かせるというこの高等技術。


 多分これが出来るのは日本でも数えきれる位……。

 そう俺は天才。決してヤバい奴ではない。


「それで、水晶ってこれか」


 俺は自分なりの方法で落ち着くと、宝箱に入っていた大きい水晶に触れた。


 すると、水晶にこの道の入り口からここまでを地図にして表示してくれた。


 ここまでの道の脇にも結構空いている場所があるな。


「それで、設定ってどうやるんだろ? ……おっ! 拡大出来るじゃん」


 自分の位置の辺りを駄目元でピンチアウト操作してみると、スマホと同じように拡大出来た。


 これはあれだ、やたらデカいスマホとアプリみたいなもんだ。


「でも設定ってどうやれば……今度はロングタップかよ」


―――――

・スポーン

・階段

・照明

・拡張

―――――


 水晶に触れ続けていると、右端にコマンドが表示された。


「んー、とりあえず……」


 俺はよく分からないままスポーンという表示をタップした。


―――――

・コボルト瞬間大量スポーン装置(装置から生み出された個体は制限の限りではない)

・コボルト【RR】(最大8体まで)

―――――


 次に表示されたのはこの2つ。


 俺は試しにコボルト【RR】に触れる。

 そうすると、地図上にコボルト【RR】のアイコンが表示されて、好きなところに移動出来るようになった。


 なるほど、これを使って自分の好きなところにモンスター、あとこの装置を置けるようになるのか。


 じゃあ装置の周りにコボルト【RR】を8体にして、全自動で強いコボルトを作れるようにしよ。


 さっきみたいな王冠を乗せた個体ならもっと、質のいい肉を手に入れられるかもしれないからな。


「っていうかこれがあればコボルト【RR】以上が無限に養殖出来るって事だよな……。やっば。しかも……」


 俺は階段をタップし適当なところに階段のアイコンを設置した。


―――――

■繋げる場所候補

・焼肉森本(休憩室)

・自宅

・ダンジョン入口裏

―――――


「やっぱり、これ俺の好きなところに出入口が作れるって事だ!」


 どういう仕組みで店と自宅という候補が割りだされたのかは分からないけど、ここは店一択だよな。


「照明は今のままでいいとして、拡張も別に……。じゃあ、これで確定でいいのかな?」


 俺は新たに表示されていた設定の完了をタップした。


 すると早速俺の目の前にコボルトの湧く光と8匹のコボルト【RR】が現れた。


 すっげえ。マジでここが俺のものになっちゃったよ。

 とんでもステータス万歳。


「が、あ?」

「え?」


 自分でこの場所をカスタマイズ出来る事に感動していると、コボルト【RR】がこっちを見て涎を垂らした。


 標的を変更したり、攻撃を無効に出来る設定がなかったからもしかしてとは思ったけど、あくまで探索者とモンスターの関係は継続されるらしい。


「ちょい疲れたんだけどなぁ、でもまだ帰るにはまだ早いし、運動もしておきたいし、上の人達の様子も気になるなあ……。一旦お前らを片してから、階段をダンジョン入り口裏にでもして上の人達の様子でも見に行くか」


 俺は何度か屈伸運動をして、匙加減を覚えたジャブでシャドーボクシングをすると、追加の食材を手に入れる為に再び狩りを始めたのだった。

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