記録:メイコとクーコ、救難ボール

「だからー、お前しかいないじゃん、食ったんだろ、腹減ってたから」

 クーコがだるそうにしながらも恨みがましさMAXでメイコを睨みつける。

「だからいっただろ、あーしはつくりやまいで飢えを凌いだのって。認める、認めんよ。食べたんだよね、食っちゃったらどーなんのかぱっぱっばらぱーの代物をさ。そりゃもうゲロ吐くぐらいマズかったよ、いや、ほんまモンと同じだったかなー、食べた後は満腹して腹いっぱいいっぱいなのよね、なーんも考えられんくなっておネムのむーさ」

 すぱこーん、クーコがメイコの後頭部をはたき抜かす。

 口からピンクの卵がポーンと出て、床に数回、跳ねてバウンドした。

 違うじゃん。

 メイコの腋の下をこちょこちょこちょ。

 ビー玉、ビリヤードボール、丸い水羊羹はキープ、けん玉の玉だけ、毛糸玉、ポール、ボーリング玉、と来て、小さな星を吐き出した。

「おっ、出た」

 金平糖を模した星だ。

 透明な内側、原子核に電子がぐるぐる回っている。

 電子は妖精であった。

 愛くるしい少女に蝶の羽を生やした、無邪気に戯れて。

「珍味なんだってさ」

 じゅるり。

 妖精は身の危険を感じて振る舞いが不安定になり、星は保てなくなっきた。

 星は踏ん張るために元気になることを考えた。

 脳内ドーピングだ。

 お尻だ。

 妖精のお尻をガン見した。

 余計乱れに乱れたが昂奮したおかげで物理法則を従わせられるのにエンタングルメントした。

 危うく熱死を迎えそうだったが真っ裸になってヨガポーズで温度を下げたのでことなきをえた。

 焼きチーズぐらい溶けかかっている。

 クーコが箸でツンツンする。

 ぷくーと膨らんで、小さく弾けた。

 クーコの頬に引っかかる。

 ぺろり。

 !!

「メチャくそマズい」

 オナラがぷうと捻り出された。

「メチャくそ臭い」

 メイコ、この世とは思えない苦悶顔。

「こうすりゃいいんだよ」

 フランベして裏漉しした後、二度蒸す。じゃっじゃっと強火で入り炒めたら、トントントンとめっちゃ早く千切りし、ゼラチンで固まる前にかき混ぜて鼻歌を歌いながら低温で揚げて、メチャクチャに叩いてミンチにした。

 甘酸っぱい匂いが立ち込める。

 みにょーんとトルコアイス並みに伸びるそれを、クーコ、躊躇なく口に放り込む。

 アマルガムみたいな噛み心地。

「珍妙で神妙」

 菩薩の顔になる。

 キャラメル状に切り分けて、非常食にした。

 7日分はある。

 トイレはバイオなのが備え付けられている。

 簡易寝床もある。

 昨晩のつくりやまいの暴走で積み重なったマンガの山が築き上げられている。

 運動不足が心配だ。

 つくりやまいも万能ではない。

 狙って別なものができることがある。

 それが害をなすなら最悪だ。

 病気だから、当たり前。

 でも病人だから、当たり前でもやっちゃうんだなあ、これが。

 ルームランナーを出したかったんだけど、なんであろうかドリルがつくられた。

 ?回転運動入ってるから?

 ここから出たいわけじゃないんだよ!

 仕方ないのでひとりが抱えてもうひとりがうんしょうんしょ回して腕力アップに励みました。

 体全体を使うもので、レスリングが遊べるほどになっちゃいました。

 キャットファイト、じゃれあっているうちにクーコの腕がメイコの胸に突き刺さっている、ずぶりとめり込んでいる。

「わああああああっ!」

 とりあえず叫んでみただけで、天地がひっくり返って心臓が飛び出るほどの驚きはなかった。

 つくりやまい、ってね。

 こりゃ死んでもわからないかもしれない。

 ズブズブでねちゃねちゃになったので一旦離れて身だしなみを整えた。

 お互いに相手のが残っていたのでどろんこ玉を投げつけ合う要領で投げつけ合いながらはしゃぎながら直しあった。

 小休止。

 メイコとクーコは腐女子である、故に完結している。

 ありえない空想をいつもかっつも思い描いているわけ、お互いを好きになんかなるわけない。

 なのだが、互いににつくりやまいでそれができてしまったらどうしよう、とはフットワーク軽くよろしく気を張っている。夢は見ているのだ。そうなったらどうしよう、と。

 年齢的にほとんど差なんてないのだけれど、メイコが先輩で、クーコが後輩。

 クーコは考えている。

 こんな閉鎖空間に長時間、気がどうにかなるってもんじゃない、つくりやまいは次々にこさえられてゆく。そうなったら、ねえ?


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