2-7
「おかあさんの調子はどうなの」
「あいかわらずね。口うるさかった頃が懐かしい」
「お父さんが出て行ってさらに口うるさくなったかと思ったら、そのあとドーンって落ちちゃって」
「あなたが話つけてくれたんでしょう」
「行きがかり上だったけど」
「お前もそうだけど、どうして女の人ってあんなに変われるのかな」
「女って化粧で化けるの」
「それだけじゃないだろう」
「あの子は大丈夫だよ。男みたいなところあるし、表も裏もないよ」
「それって、フミちゃんのこと。僕が話してたのはあの女のことで」
「わかってるよ。もう話はついたんでしょう。それともあの女に興味があるの」
「おまえのお父さんと一緒に写っていた写真の彼女は悪い感じでもなかったんだよね」
「でもそれでお父さんも騙されたんだから。あなったって女を見る目があるのかないのかよくわからないね」
「そうかもね」
「あの時おまえを追いかけていったらまだ一緒にいたかな」
「それはないと思う。それにその気もなかったんでしょう」
あいつが追いかけていった男のことはよく知らない。ミミちゃんもよくわからないみたいだし。
「ご飯は食べてきたんだ」
「いっしょに住んでるからね、軽く」
あいつとは出勤前に会うことが多い。
「たまには同伴してよ」
「今の稼ぎじゃね。ミミちゃんのところぐらいしか行けないよ」
「今度お客さん紹介するから、そのときはお願い」
それはありがたいけど、僕が受けられるような仕事なのかな。
「選り好みしちゃだめだよ」
あいつはそう言って、仕事場に向かった。
「久しぶりね」
「ナナさんこんにちは」フミちゃんが事務所に入ってきた。
「今の店でもナナなの」
「ちょうど同じ名前の子いなかったから」
「はじめてですね、ここは」
「そうね。なかなかここに来ていいって言わなかったの。主人がお世話になってます」
「ごめん、もう元主人だよね」
そう言いながらあいつはフミちゃんを見てにっこり笑う。
「ナナさんがコウさんの奥さんだったんですか」
「知らなかったの。あなた、フミちゃんに何も言ってなかったんだ」
「知りませんでした。びっくりです」
僕はふとあいつの父親の顔を思い浮かべた。そもそも僕はあいつとフミちゃんが面識があったことを知らなかったわけだし。
「そうか、三人で会うのは初めてだよね」
フミちゃんは僕の隣にすわってあいつの顔をうかがっている。
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