105 次は女優の様に頼むぞ
【神カンペ】さんにはそんな事載っていなかったぞ。俺の権限が足りないのか?
以前の
いや、もしかして神達が使う用語と人間が使っている用語が違うのでは?
と思って調べていると一つの項目が目に留まった。
『ポゼッション:使用グロリアに他のグロリアの輝力が一体化することで一時的に上位のグロリアの力を引き出す方法。見た目は進化の途中のようで現在のグロリアと上位グロリアが二重に重なって見える。使用にはいくつかの条件を満たす必要があり、ノーヒントでポゼッションを引き起こすのは不可能に近い。悪用すると危険なため、その知識を与えるならば高潔な精神を持つ人間に限定すること』
ビンゴだ。これだよ……。
確かにクリングリンさんのグロリア2体の輝力が鎧グロリアに一体化してるし、なんか二重にブレてて元のグロリアは透けて見えるし。
さてさて、分かったところで対策なんだけど……悪用されると危険なほどの強さだっていうのだけは分かるが、対策らしい対策は記載されていないな。
唯一なんとかなりそうな方法が「一時的に」という記載だ。一体どれくらいの時間、
つまりはまあ、ポゼッションによるユニオンリンクを倒さなくてはいけないということだ。
「限定進化……。なんでもいいですわ。まだあなたと、そしてスーと戦い続けられるのであればなんでもいいですわ。さあ続けましょう、レナさん! わたくしの、いえ、わたくしとミュルクス、カラカラ、クバールの全身全霊の一撃を受けなさい!」
レナ、来るぞ!
フレイムブリンガーは不確定要素が強い。もう一度
「いいよスー、迎撃して!」
勢いよく突き出されたクリングリンさんの右ストレート。もちろん圧倒的な破壊力を秘めているものだ。神カンペどおりなら空を割り地を裂くだろう。だけど俺も負けてはいられない。真っ向勝負だ。ここまで来て回避なんていう手段はとらない。それが俺がレナの想いに応える方法だからだ!
俺の体とクリングリンさんの拳がぶつかる。
その衝撃が振動が、ぶわりと空気を伝わって辺りに広まる。
技の威力で互いの体は反発しあって後方へと吹っ飛ぶが、すぐさま次の攻撃に移る。
一撃、二撃、三撃と攻撃を重ねて、そのたびに互いの体は弾かれて。どこまでもこの膠着状態が続くのかと思っていたのだが、四撃、五撃、六撃と続けるにつれて俺の方が押し負けてきた。
七撃、八撃、九撃ともなってくるとクリングリンさんの一撃に乗っているオーラのようなものが俺の体を削り始めた。
クリングリンさんの技の威力が増しているのかと思ったがそうじゃない。確かにクリングリンさんも技の慣れでいくらか威力を上げているのだろうが、原因はそれではない。単純に俺の技の威力が落ちているのだ。理由は分かる。輝力不足だ。
レナもこの一年の修行で輝力容量は増えた。必殺の一撃を9回も10回も放てるようになったのだから。総容量から言ってあと10発はいけるだろう。だけどそれは考え得る好条件の場合でだ。
戦闘中で離れているとは言え輝力はちゃんと供給されている。ただ、連続して大技を打つと俺の体内に溜めていた輝力がどんどん減っていき、その供給に追いついていないのだ。
契約者とグロリアの距離っていうのは結構大切で、密着している状態が一番輝力伝導の効率がいい。そう、自ら鎧グロリアをまとっているクリングリンさんの様に。
「十四っ!」
とうとうクリングリンさんのの振り抜いた右ストレートが俺の体を吹っ飛ばした。
俺は衝撃に負け、轟音を上げて地面に激突する。
こ、これがユニオンリンク、ポゼッションのパワー……。
「スー、頑張って!」
背後からレナの檄が飛ぶ。
ああ、任せておけ。ちょっとダメージを負っただけだ。
あ、あらら?
体勢を立て直そうとしたところ、スライムボディがふらつきを立て直すどころか球形も維持出来ずに溶けかけのアイスのようにぐにゃりとなってしまった。
「さすがのスーもダメージを受けましたか?」
星座の戦士と見間違えるような黄金の鎧をまとったクリングリンさん。その体から輝力の光が吹き上がるように輝いている姿に神々しいと思ってしまう。
「スーがこんなになるなんて……」
クリングリンさんはかなりの強敵だ。
俺が本気を出せばSランクグロリアにも勝てると思っていたが、
ダメ元でフレイムブリンガーを撃ち込んでみるか……。いや、今の輝力が足りない状態じゃあダメージを与えるどころか技を使う事も出来ない。
まずは回復で、その後は……。
クリングリンさんはまたもや攻撃を仕掛けてこない。
対策があるのなら早く出すようにという無言の圧力だ。
「スー、あれをやるわよ!」
あれって、あれか!?
俺達が修行で体得したあの闘法か!?
ダメだダメだ!! 危険すぎる。そもそも俺はレナが危険な目に合うのは反対なんだ。
「今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ! さっきの言葉は嘘だったの?」
うぐぐ、確かにさっきレナの気持ちは受け入れたけど、それはレナに危険が及ばないからだったって訳で……。
それにあれは通常状態の俺で行う技であって、今の、サンロードスライム状態で行う事は考えてなかっただろ。俺が体温調節を失敗したらレナはまる焼けになってしまう。そんな事認められるはずがない!
「スーは失敗しないよ。レナ、スーの事信じてるから。それとも、レナが信じているスーはそんなポカをやっちゃうような子なのかしら?」
初めてだ。
レナが俺を焚きつけるような事を言うなんて初めてだ。
自分が信じてると言っただけでは俺が絶対に考えを変えないのを分かっていて、それで慣れない言葉を使って俺を……。
なっ、そこまで言うならやってやるよ! って言葉に乗ってくると思っている辺りまだまだおこちゃまだなって――
「えーーい!」
うわっ、レナっ!!
そんな俺の雰囲気を感じ取ってか、問答無用と言わんばかりに行動を起こしたレナ。フィールドに立ち入ると熱々の俺の体の上にダイブしてきたのだ。俺は体温を急速に落としながら、それでいて体を大きく膨らませてレナの体をキャッチする。よけてしまうとレナが地面に顔を打ち付けてしまうから選択の余地は無かった。
こら、レナ! 危ない事は止めなさいっていつも言ってるだろ!
「ごめんなさいスー。でも、スーなら出来るって信じてたから」
膨れた俺の体内に全身がずっぽり入ってしまっているレナ。スライム細胞を肺に満たす事で酸素供給するのはお約束。
俺に向かって飛び込んできたときはもう必死だった。急には体温を落とせないんだよ。断熱効果のある薬品の生成が間に合ってレナの体の表面に塗り込めたからよかったものの、もう少し準備する時間をだな……。
「それにごめんねスー。スーを試すような嫌な事を言っちゃって……」
ああ、それは大丈夫だ。バレバレだったからな。
「えへへ、失敗だったね」
次は女優の様に頼むぞ。
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