096 第1王女守護騎士隊選抜試験 その2
「はい、おしゃべりはそれくらいにして席に着きなさい」
続々と来客だ。女子4人がキャッキャしてる後ろで先生が教室に入ってきた。
十分気合が高まった面々は各々決められた席に着席する。
「みなさんおはようございます。今まで何度もお伝えしていますが、簡単に試験についてお伝えします」
先生のお話はこうだ。
試験は筆記試験と実技試験がある。
筆記試験に合格しなければ実技試験には進めない。
実技試験はグロリアバトルのトーナメント戦。最後に勝ち残った一人が晴れて第1王女守護騎士隊に入隊出来る。
何度も聞いてきたことだけど4人は聞き漏らしのないようにしっかりと先生の話を聞いている。
「それでは筆記試験を始めます。グロリアはクラテルの中へ」
筆記試験は本人の知識を試される。当然のことだがグロリアの力を借りてはいけない。いつもはレナの腕の中にいる俺も今はクラテルの中だ。
テスト用紙が裏向きで配布され、「始め」の声と共に筆記試験が始まる。
クラテルの中からは設問を見ることは出来ないけど、騎士試験に準じた知識が試されるということだ。騎士試験の筆記試験は一般的な教養を問うもので、幼いころから英才教育を受けてきた4人にとっては朝飯前のはずだ。
レナはもちろん余裕そう。クリングリンさんもミイちゃんも同じく。うーん、トルネちゃんだけはしかめっ面してるな。
頑張れトルネちゃん。こんなところでつまずいていたらレナとは戦えないぞ。上がってこい、この高みへ。
などと、やることが無くて暇な俺はしょうもない事を考えてしまったが、暇だからと言って高めた気合が途切れてしまうのは良くないので、俺はバトルのイメージトレーニングを始めることにした。
そんなこんなで時間がたって。
一通り問題を解き終えたレナは見直しに入っている。
うんうん、しっかりとしたチェックが大切だからな。
そして筆記試験が始まってから時間にして30分ほど。
「そこまで! 解答を終えてください」
筆記試験の終了だ。
最後まで粘っていたトルネちゃんも仕方なしにペンを置く。
答案が回収されてその場で採点が始まる。
騎士試験の場合は人数が多いから採点結果は後日知らされるんだけど、今回は人数が限られているため即採点なのだ。
採点中は休憩時間扱いなので集まって答え合わせ。
「うっそ、あそこってギャピンガレガスだったのか!? ちょっと難易度高すぎだろ!」
最後まで頭をひねっていたトルネちゃんの
一番最後の問題は地方伝承の【黄金の鎧】について問われたようだ。さすがにこれは難易度高いと思うぞ。
武家の娘なら知ってて当然よ、とミイちゃん。
どうやらレナもきちんと解答できたようだ。
少しして先生の採点が終わり、答案が返却される。
「4人とも基準点を超えていますので筆記試験は合格です」
おっしゃ、と喜びをあらわにするトルネちゃんと、当然の結果だと言わんばかりの残りの三人。
まあそうだな。騎士も親衛隊も知識はある程度必要とは言え学者レベルの知識は必要とされていない。それよりも有事の際の武力が重視されるのだから。
「はい、私語は謹んで。これより実技試験の説明を行います」
引き続き実技試に移る。テンポが速いような気がするけど、王立学校以外の騎士学校では受験人数がそれなりに多いためそちらのスケジュールに合わせているらしい。
実技試験はトーナメント。筆記試験合格者はくじびきで対戦相手を決めることとなる。
箱の中には文字が書かれた玉が入っていて、名前順に箱の中に手を入れて玉を取り出していく形式だ。
「クリングリン・ドリルロールさん」
「はい!」
まずはクリングリンさんからだ。
箱の中に手を入れて、一つをつかみ取って……取り出す!
「Bです」
高らかと引いた玉を掲げるクリングリンさん。
それを見て先生が張り出されたトーナメント表に結果を書き込む。
「トルネ・カラカールさん」
次はトルネちゃん。
その次はミイちゃんで最後がレナだ。
「Aだ!」
トルネちゃんはAか。この段階で1回戦のレナの相手はクリングリンさんかトルネちゃんなわけだ。ミイちゃんと戦うには二人が1回戦を勝ち抜いて決勝戦に進むしかない。
「ミーリス・バルツさん」
ミイちゃんの相手はどっちになるのだろうか。
「Bです」
先生が結果を書き込む。
「レナ・ブライスさん」
はい、と返事をしてレナもくじ引き箱に向かう。残っている玉は1個だけで結果も分かっているんだけど、これは儀式なのだ。
「Aです」
こうしてトーナメント表が埋まった。
1回戦A組 トルネ・カラカール 対 レナ・ブライス
1回戦B組 クリングリン・ドリルロール 対 ミーリス・バルツ
「初っ端からブライスとか。いいね、腕が鳴るぜ!」
「負けないよトルネちゃん!」
「レナ、必ず勝ち上がって来るのよ。決勝で戦おうね」
「あら、舐められたものですわね。もうわたくしに勝ったつもりでいるのかしら。わたくしとて同じ思いですわよ。バルツさんを倒して決勝でブライスさんに勝つ」
「クリングリンさんこそ。武家の娘の強さ、見せてあげるわよ」
対戦相手が決まってヒートアップしていく4人。
――パンパン
「はいはい、そこまで。その意気込みは戦いまで取っておきなさい」
先生が手を叩き一同の注目を集めてスケジュールを進行する。
「それでは体操服に着替えてください。私語は慎むように」
実技試験の前のお着換えタイム。制服が汚れてはいけないのできちんと体操服に着替えるのだ。
学校の体操服。夏の体操服は半袖の白いシャツに赤色の短パンだ。俺達が子供のころ女の子がはいていたブルマではないのだ。
体操服の形状について語っているけど、生着替えシーンを見ているわけじゃないからな。間違ってもよそ様の娘さんの裸を見てしまわないように机の下で平身低頭、体をべったりと床につけて床の傷の数を数えているところだ。
いつもなら部屋から出ていくんだけど、先生が見張っているので出ていきにくいのだ。
4人とも無言で衣擦れの音だけが聞こえてきて。つまりはまあ花園とは程遠い状況なので許されるだろう。
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