049 出来るスライムの嗜みというやつだ!
皆様こんにちは。俺の名前はスー。スライムやってます。
前世の人間歴は35年で、今世のスライム歴は7年です。つまり35+7歳です。
俺の飼い主、というか餌をくれる人は12歳のお嬢様レナ。
俺と契約を結ぶ
懐かしのブライス家のお屋敷。まるで久しぶりに田舎の祖父母の元に帰ったような、そんな感じだ。
安心感に包まれたお屋敷での生活。これを味わってしまうともうスパルタ修行の世界には戻れないね。朝っぱらから牙におびえてダッシュする必要もないし、恐ろしいグロリアがうごめく秘境に入ることもない。
今はもう幸せそうに寝ているレナの姿を見て朝の訪れを感じる生活でよいのだ。
そんな懐かしい幸せ生活も2年の間に変わったことがある。
それはもちろんレナの事だ。
2年間見ない間に少し背が伸びて大きくなった。美少女顔も少しだけ大人びたものに成長している。
まあまあ、それは先日危険な森の中でもお伝えしたかと思う。
そんなレナだけど、どうやらまだまだ子供のようで――
「スーごはんだよ」
といういつものごはんタイム。
なぜか俺はレナの膝の上にいる。
ブライス家1階の食卓。
マーカスパパ、ライザママ、そして二人に向かう形でレナが座って、家族一緒にご飯を食べるのがブライス家の食事スタイルだ。
「ほらスー、あーん。あーんして」
レナは俺にミルグナ草を食べさせようとしている。
あーんしてと言われても俺には口が無いので、このかた俺が口を開いた試しはないのだが、いつもそう言われる。
「どう? おいしい?」
うん、おいしいよ。レナに食べさせてもらうミルグナ草は最高だ!
まあこれだけでは今までの食事風景と大差ないのだが、俺は床の上ではなくてレナの膝の上にいる。
2年前バランスボール大だった俺の体は先日進化した時に縮んでバスケットボール大になった。そのためサイズ的にはレナの膝の上にジャストフィットなのかもしれないが、戻ってきてからはずっとこのスタイルで食事が行われている。
俺が膝の上にいたらレナがご飯を食べにくいのではないかと思って床に降りようとしたことがあるのだが、レナにがっしりつかまれて降りるに降りれない状態になってしまったのだ。
まあレナがそれでいいというのなら俺は膝の上でもいいのだが。
ご飯の時以外でも、例えば――
「ほーら、スー、逃げないの。綺麗に洗わないとバイキンが発生するんだから」
これは風呂のワンシーンである。
昔から風呂は一緒に入っていたので問題ないと言えば問題ない。
10歳まではメイドさんに頭を洗ってもらっていたおこちゃまだったレナだが、今は一人で洗えるようになったようで、シャンプーハットをかぶってしっかり洗っている。
俺と言えば、昔のレナはそんな有様のため、レナの後にメイドさんにお湯をかけてもらう形で綺麗にしてもらっていた。メイドさんは湯浴み用の衣服を着ているので倫理上問題ない。
というか、俺は風呂に入らないでも清潔なつもりなんだけどね。
確かに床も地面も素足というか素ボディで飛んだり跳ねたりウロチョロしてるけど、体に付着した砂なりは消化してるし、バイキンなど発生しないように除菌作用のある物質を体表に常に塗り付けていたりする。
四六時中レナによるハグやらチューやらのスキンシップを受けている身のため、レナに健康被害があってはいけないからだ。
つまり出来るスライムの
話がそれてしまったので最初に戻るが、自分の頭を洗えるようになったレナはもうメイドさんに頼る必要はなく一人でお風呂に入れるようになって、それに伴って俺のお湯浴びもレナがやるようになったのだ。
グロリアの世話をする正しい
これはまさか俺は汚いと思われているのか⁉
風呂はノーカンとして他にも――
「スー、お手洗いいきましょ」
などと言われる。
なぜかがっしりとスライムボディをつかまれると有無を言わさずトイレ内に連行されるのだ。
これは決定的な事例だと思う。
もちろん俺はスライムなので排泄をする必要はなく、トイレに用事は全くない。
つまりは、一人でトイレに行くのが怖いのだ事件!
かどうかは置いといて、2年前は一人でトイレに行ってたよね?
夜に目が覚めて怖い場合でも、俺はトイレの前で襲い来る幽霊からレナを守るナイトだったよね?
中まで入る事なかったよね?
そんなわけでがっしりと捕まってトイレに連行されるその状態から何とか逃げ出そうとするのだが、5回に1回の割合で失敗してトイレへと連れ込まれてしまう。
この後最終エスケープターンがあって、それに失敗すると事後までトイレを抜け出すことは出来ない。
等々。
何が言いたいのかというと、前以上にレナは俺にべったりなのだ。ご飯、風呂、トイレ、言わずもがな寝る時、お屋敷内を移動するとき、外出するとき。常に一緒にいる。
最初は2年間離れて寂しかったからそれを埋めるためなのかなと思っていたけど、それだけではなくってどうやらリゼルに対抗心を燃やしている節がある。べったりしてリゼルとの生活を上書きしよう的な?
本人は無意識のうちにやっているのだと思うが、俺のスーパー大人センサーはそう感じ取っている。
まあ俺はレナと四六時中一緒にべったりでも問題ない。愛玩動物ポジションなのでレナの好きなようにやらせてあげたい。だけどトイレはいろいろ問題があると思うのでこれからも脱出しようと思う。
2年の間に変わったのはレナの様子だけではない。
王都にいるレナの兄、ジョシュアがとうとう結婚したというのだ。
ジョシュア兄さんはレナより10歳上だから、今は22歳。
お相手はマリアナさんというお嬢さん。昔一度だけ会ったことがある。
話によると真面目で奥手なジョシュア兄さんにマリアナさんも結構苦労してたらしい。
婚約してから3年だ。それがようやく結婚だ。おめでとう!
そしてブライス家では新しいメイドさんが増えたのだ。
バーナちゃん17歳。健康的な小麦色のお肌が魅力的な女子だ。
レナより少し背が高く、ショートカットの黒髪が似合うメイドさん。
彼女は家から通いのメイドさんだ。
ブライス家のメイドさんは住み込みが1人、朝から夜までの勤務で曜日や時間によってローテーションで仕事をする人がバーナを含めて3人。合計4人で回ってます。
どうしてバーナが新しく雇われたかというと、それはレナの通学スタイルが変わったことによる。
レナがお嬢様学校に行っているのは以前もお話したかと思う。
俺が初めて召喚されたときに通っていたグレア学園。そしてその後通っていた上級の学校。ここには8歳から通っていた。この学校は3年間で、つまり俺が修行に入った10歳時にはまだこの学校に通っていた。
その後11歳の時その学校を卒業し、さらに上級の学校に通い始めたのだ。
その学校とはルーナシア王立学校。名前のとおり王家が設立・出資する学校だ。
王立学校は王都にある本校と中核都市アルダントにある分校のアルダント校の2校がある。
レナは本校ではなく家から近いほうのアルダント校に通っている。
近いとはいえ、アルダントはブライス家のあるエルゼーから飛行グロリアでも1時間はかかる距離だ。
つまり、王立学校に進学した際に通学のために新たなメイドさん、バーナが雇われたのだ。
まあ実際は見てもらう方がいいだろう。
ちょうど今から学校に行くところなんだ。
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