037 リゼルとの魔境探検 SUN ROAD SLIME
『 Dランク:ジャックスライム
Cランク:アイアンスライム
→Xランク:SUN ROAD SLIME』
見えなかった情報は、まさかのXランクだ!!
名前は……さん、ろーど、すらいむ?
俺は初めて聞くそのグロリアの情報を神カンペから取得した。
『SUN ROAD SLIME:元来体温調節機能が無く体温調節ができないスライムに、その機能を持たせることで新たな進化の可能性を探るためのグロリア。自らの意思で体温を上昇させることができ、その体は太陽のように熱く輝きを放つ。実装後の正式名称はゾディアックスライムとする予定』
なるほど……サンロードスライムもヒューマンイーターよろしくテスト中のグロリアだ。
テスト中にどれほどの力を発揮したのかは記載されていないけど、ヤツと同じXランクな事は間違いない。
これならヤツに勝てるかもしれないぞ!
でも、もう一つの大きな問題が立ちはだかる。
消費輝力が途方もなく増大して二度とレナの元に帰れなくなる。これはおそらく間違いなくそうなると思う。
普通の成人の
10歳だったレナがDランクグロリアを維持するために特別な輝力修行を行っても、それでもリゼルは5年かかると言った。
つまりCランクのアイアンスライムですら何年かかるかもわからない。
ましてや未実装のXランクだ。強制的に輝力を吸い上げているヒューマンイーターのやつと同程度の輝力が必要に違いない……。
だったらサンロードスライムをあきらめてジャックスライムに進化するか?
答えはノーだ。
レナだったらこう言うはずだ。
『お世話になった人を助けられるのなら迷わずそうしたほうがいいわ。レナのことは大丈夫。たくさん修行して絶対にスーと一緒に暮らすんだから!』
もう迷わない。
レナ、俺はサンロードスライムに進化するから!
俺は固く決意し、サンロードスライムへの進化を願った。
『進化先の選択を確認しました。進化を開始します』
機械音声と同時に俺の体は黒色から
それと並行して体全体のスライム細胞が密度を増していき、徐々に体が収縮していく。
脳天までの変色が完了し、俺の体がバランスボール大から再びバスケットボール大に縮んだとき、俺の体を包んでいた眩しい輝力の輝きは消え去った。
体から熱い何かが沸き上がってくる。
これが溢れ出す力ってやつか。今ならどんな事でも出来そうだ……。
俺が急に光りだしたことに驚いていたのか、ヒューマンイーターは俺から距離を取った所でその場所に留まっていた。
待たせたなヒューマンイーターさんよ、今までの借りをしっかり返してやるぜ。
俺は改めてヒューマンイーターに向き直る。
俺が進化し終えるまで少しの時間があった。
その間にヤツは体の再生を終えていた。つまりはキルベス先輩のライオットパルサーで受けたダメージは無くなって完全体に戻っている。
それでも俺を警戒してか、黄土色の体を波打たせるだけでその場から動こうとはしない。
ほらどうした? かかって来ないのか?
それならこっちから行くぞ!
俺は沸き上がる力をさらに高める。
この沸き上がる力がサンロードスライムの特徴である体温調節機能、つまりは灼熱能力であることを直感的に悟っていた。
ヤツの再生力は折り紙つきだ。生半可な攻撃は通用しない。
だけどこの高まる力なら間違いなく通じる。そう確信するほどの力が満ちている。
問題はそれをどこにぶつけるべきか……。
スライム族に弱点部位は無い。その体すべてがスライム細胞であり、一つ一つがスライムであると言っても過言ではない。
つまりはどこを狙っても一緒だ。
俺はヤツの上部、人間でいうところの頭部に狙いを定める。
くらえっ!
俺は全力でヤツの頭部にむかって跳ねた。
視界が暗転する。
次に俺の視界に映ったのはヤツの姿ではなく、広がる森の木々だった。
消えた?
辺りを見回す。
ヤツは消えたわけでは無かった。俺の後方にいたのだ。
それも頭にバスケットボール大の
シュウシュウと音を立てて俺の体から何かが蒸発していく。
これは、俺の体に引っ付いたヤツのスライム細胞か。
状況が理解できてきたぞ。
どうやら力の加減が分からず力み過ぎたようだ。
俺の思っている以上にこの体はパワーもスピードも今までとは段違いだった。
俺の体当たりは目にもとまらぬ速さでヤツの脳天をぶち抜き、後方へと至ったというわけだ。
後ろへ向き直り、ヤツと対峙する。
ヤツの腹の中のカミャムの体が光って、ヤツの体は一瞬で再生する。
それと同時に、おれの体へと5本の触手が襲い掛かる。
キルベス先輩も手を焼いたこの触手攻撃。
俺はその攻撃を全身で受けた。
よけられなかったわけでは無い。よけようと思えば簡単によけれた。
打撃ダメージを与え、それと同時に触手からの消化吸収を行おうというその攻撃。
だがヤツのその目論見は外れ、触手が俺の体に触れるや否や、ジュッという音と共に蒸発した。
思ったとおりだ。
俺の体は灼熱の名にふさわしい超高温になっている。
すぐさまヤツの触手がウネウネと再生し、防御に回るかのように自身の周囲をゆらゆらと漂わせている。
あの瞬間再生能力。
体当たりなんかでは即時再生してダメージを与えられない。
キルベス先輩のライオットパルサーのような超強力な攻撃でなくては……。
実は一つ試してみたい事があった。
これがうまくいけば俺の必殺技になるだろう。
でもここからでは位置が悪い。
俺は軽々とヤツの頭上を飛び越えて、再びリゼルの前に陣取った。
地面に倒れ伏したリゼルの呼吸は荒いままで、その呼吸によってさらに毒を取り込んでしまう。一刻も早くヒューマンイーターを倒して治療を開始しなくてはならない。
リゼル、待ってろよ。こいつを倒してすぐに助けてやるからな。
俺は体温をこれでもかと上昇させる。
それに呼応して周囲の空気がヒリつく感じがする。
俺のさらなる体温の上昇を目の当たりにしたヤツは自らも触手の本数を増やすが、こちらの出方をうかがっているのかその場から動こうとはしない。
触手攻撃が完全に防がれて攻めあぐねているのか、さらに力を上げた俺にうかつに手を出すと逆にやられると悟っているのだろうか。
どちらにせよ好都合だ。
くらえ俺の必殺技を! フレイムブリンガー!!!
灼熱に燃え盛る俺のスライムボディ。その俺の体を水滴のように小さな粒へと変化させ、そして高速で隙間なくヤツの体に打ち込む。
溶け落ちた金属や流れ出る溶岩のように、その小さな粒一つ一つが超高温を持ってるんだ。それを体全体で受けて無事でいられると思うなよ!!
全力で、それでいて精密に。俺はまさに一発一発に精魂込めて撃ち込んでいった。
し、しまった、力の加減が……。
渾身の攻撃によってハチの巣になったヤツの体は熱によって蒸発し形を失っていた。
それだけに留まらず、ヤツの体を貫通した弾は後方の木々を焼き払っているのに気が付いたのだ。
やりすぎてしまった……。
ま、まあ大丈夫だろ。瘴気を糧に成長する木だ。簡単には燃え広がらないだろう。
それにしてもすごい威力だった。
ハチの巣と言っても考え無しに打ち込んでいたわけではないぞ。
もちろんカミャムに当たることのないように細心の注意を払っていた。
その結果ヤツは消滅し、後にはカミャムに沿って綺麗に人型になった部分だけが残った。
支えを失ったカミャムの体がどさりと地面に倒れこむ。
すぅすぅと呼吸をしている所を見ると、ちゃんと息はあるようだ。
よし! これでミッションコンプリートだ!
強敵を倒してカミャムを救い出すことに成功したぞ!
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