第3話 2-3
/5 午後十五時三十五分 有馬邸 執務室
〝有馬誠〟
有馬誠は執務室で、ただぼうっと天井を見上げながら考え事をしていた。
ただ独り、そこでこれから起きる未来のことについて、思考を深めていたのだ。
先日、誠は危惧し、探偵に調査を依頼した。
誰かのいたずらだったかもしれない──謎の置手紙。
誠が仕事から帰り、自室に入ると、自分の机の上に適当に二つ折りにした紙があったのだ。
その内容は達筆な日本語で書かれていた。
『有馬の血は途絶える。いずれ貴方たちは、喰われた肉片と化す』
ただそれだけだ。
しかし誠にとってみれば、それは警告と言ってもいい。
今までにもこういった手紙が送られることがあった。現当主である誠の横暴な性格は敵を作りやすい。そういった意味では、このような手紙はたまに送られてきた。
だが、その手紙を書いた主はその後消息不明という結果で終わっている。そうして一つ一つ邪魔なものは握りつぶしてきた男だ。
そう、確実に一つ一つ潰してきた。
だからこそ誠は恐怖していた。
もう敵はいないと確信を持っていたところに、このような手紙は立て続けにきている。
誰からだ、と思っていたが、実際にこのような内容の手紙は今までにはなかった。
殺害予告にしても、有馬誠のみを狙ったものだ。しかしこのような、有馬一族自体を憎み、呪うような文章はなかった。
それに恐怖した。
何度も何度も送りつけられてくるのだ。それにこれが誰のものかを調べても正体は現さない。少なくとも誠の抱えている会社の者からの手紙ではなかった。
ならば、いったい誰からなのか。
これはあくまで推測でしかないが、一つの可能性として『内部』からのものではないかと思った。それで誠は腕のいい探偵に調査を頼んだ。
それと──最後の文章。あれはおそらく連日起きている殺人事件と関連性があるのではと思ったのだ。その事件の調査をすることで、もしかしたらこの手紙を送りつけた犯人が見つかるやもしれない、と。
探偵からの調査報告を待つ。誠が起こす行動はただそれだけでいい。だが不安という虫が胸のなかにつのるばかりで、まともに待つことさえままならない。なんなら
だが、ここはやはり我慢するべきなのだろう──。
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