第18話

冬日が終わり、二度目の夏日となりました。僕がエリスとなって結構な時間が経過しちゃったんだなと思う。

朝起きて、窓の外を見てみると、気温が上がっているからか、ちょっと暑く感じたりして、窓を閉じて、顔を洗う事にした。洗面所に向かい、鏡を見てみると、寝癖なのか髪がちょんと跳ねてるのを見つけて、それを水で濡らして、整える事にした。整え終わった後、食卓に行くと、もう既にエリック父とアリサ母が椅子に座っていて、テーブルの上に料理を並べているマリエスがいた。


「あ、お嬢様、おはようございます」


「おはよう、エリス」


「おはよう、エリスちゃん」


家族がそう言って来たので、僕は椅子に座って


「おはようございます」


そう言った後、テーブルの上に出されている物を見てみる。パンにスープに、あと白っぽい飲み物があった。

これって、もしかして牛乳なのかな……と考えたけど、でも、牛ってこの世界にいるのかな?とも思ったので、マリエスに聞いてみる事にした。


「あの、これって何の飲み物なの?」


そう聞いてみると、マリエスが


「これはですね、牧羊の乳です、甘くて美味しいですよ」


牧羊……と言う事は、羊の乳と言う事なのか……牛乳じゃないのは、ちょっと残念だけど、飲んでみる事にした。

味に関しては、甘味が入っているのか、甘く感じられて、飲みやすくなっているみたいだった。あっという間に朝食を食べ終わって、今日はどうしようかな……と考えていると


「エリス、今日はな? 私は仕事の関係で、家にいないから、よろしく頼む」


そうエリック父が言っていた。

仕事……一体何の仕事なんだろ? と思ったけど、まあ、いつか教えてくれるまで待つか……と、思う事にした。


「じゃあ、私は部屋に戻るわね? エリスちゃんは、どうする?」


アリサ母がそう聞いてきたので、僕はと言うと


「グランド王国を見てまわってもいいですか?」


「そう、じゃあ国から出ない事と、暗くなるまでには帰ってくるのよ?」


アリサ母がそう言ったので


「解りました」


そう返事すると、一旦、自分の部屋に戻り、動きやすい格好に着替える事にした。持ち物にメッシュの杖は必要かな? と思ったけど、別に街中で魔法は使う事はないと思い、青色の薄着のカーディガンに、黄色のロングスカートにする事にした。一年ぐらい経過したからか、女物に全くと言っていいほど、抵抗感がなくなったかも……これが、慣れると言う事なのかな……?

けど、今の僕は女の子……男の子と恋愛とかになると、それはどうだろう……って思ったりしてしまうのも事実だった。まあ……今、そんな事を考えてもしょうがないよね……?と、思う事にして、着替え終わって、外に出る事にした。外に出ると、日差しがかんかんに照り付けていて、ちょっと暑かった。冬日とえらい温度が違うなあ……と思いながら、とりあえず広場の方に行って見る事にした。広場に辿り着くと、冬日の時になかった、出店が出展してあった。出店があるという事は……サーシャルランドにいた、リアが戻ってきてるのかな?と思ったので、リアがいるお店を探してみると


「あ、エリス、お久しぶり~」


そう言ったのは、頭にバンダナを巻いて、お店のエプロンをしているリアの姿だった。


「久しぶり、リア」


「今日から、またこの国でお店を開く事にしたから、よろしくね?あ、なんか見てく?」


「うん、そうする」


そう言って、出されている品物を見てみると、僕がいた世界で、馴染みのある物を見つけた。それは球体で、白と黒の色に分かれてるので、というかこれ……サッカーボールじゃないか? と思い、リアに聞いて見る事にした。

サッカーボールみたいだけど、この世界にそんなの存在するのかな?


「ねえ、この球体のって、どこで仕入れたの?」


「これ?確か……母さんが、東の港町、アクアイッシュと言う町に仕入れに行った時に、海岸で拾ったものなんだって、宝石型でなんか色合い的に、使用用途が解らないんだけど……エリスは、知ってるの?」


「う、うん、これ……サッカーボールって言うの」


「サッカーボール?」


「そう、これを蹴って、遊ぶ物かな」


「ふ~ん、そんな使い方なんだ、遊び方知ってるの?」


「知ってると言えば、知ってるけど……」


「じゃあ、私も遊ぶ~、ちなみにどうやるの?」


「そうだね……じゃあ、広い場所と、ゴールを二つ用意しないと」


「ゴール?」


「うん、このボールをそのゴールに蹴って入れて遊ぶって物だから」


「そう……広い場所ね……じゃあ、あっちの裏街道の奥に、建設中の住宅街があるから、そこならOKかな?」


「多分、問題ないかと」


「あと必要なものは?」


「ゴールは、網とか使うといいと思う」


「網ね、魚の捕獲用の網を使用したらいいのかも……」


そう話していると、リアの母親がやってきて


「おや、なんかやるのかい? 私も手伝おうか?」


そう言ってきたので


「じゃあ、手伝ってくれますか?」


「了解、私は何をしたら、いいのかい?」


どうやら、リアの母親が手伝ってくれるみたいだった。僕は「じゃあ、動きやすい服を貸してくれますか? スカート姿だと、汚しちゃうので、作業用の服とかがいいんですけど……」と言うと「解った、ちょっと待ってて」と言って、作業用の長ズボンみたいなものを持ってきてくれた。


「これで、いいかな?」


「はい、でもお店はいいんですか?」


僕がそう聞いてみると


「今日は店を閉まってもいいさ、リアもそれでいいわよね?」


「うん、母さん、いいの?」


「ええ」


「じゃあ、閉店の準備するね」


リアがそう言うと、品物を奥にしまい、閉店の看板を掲げた。


「これでよし、じゃああとは必要な物をもって、裏街道に行きましょう」


「う、うん」


準備が出来たので、グランド王国の広場から移動して、裏街道の方へと向かう事になったのでした。それにしても着いたらそこで着替えるのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る