第12話
僕こと、エリス・ジラードは、父親のエリック・ジラードとメイドのマリエスの三人で、グランド王国から離れる事になりました。
行き先は、西の国にあると言われているサーシャルランドと言う国らしいです。
馬車で行くのかと思ったら、徒歩で向かう事になり、父親のエリック父が言うには、そんなに遠くないらしく、早い時間に到着する見たいなので、サーシャルランドが一体どういった場所なのか?と、ちょっとワクワクしていたのでした。
グランド王国から、外に出て、シュミッツ平原に入った。
夏日に来た時と比べると、草が枯れはてていて、地面が土気色をしていた。
雪がちらちらと見かけるので、夏日とえらい違いかも……と思う。
「さあ、サーシャルランドに向けて、出発だ」
エリック父が、はりきってそう言っていたので、僕もその後ろについて行く事にした。
歩きながら思うのは、魔物が出て来た時、どう対応するかって感じなんだけど……前に出会ったのは、スラームとか呼ばれる魔物で、結構最弱のモンスターとマリエスが言っていた。
じゃあ、他にどんな魔物がいるんだろう? と思ったので、マリエスに聞いてみる事にした。
「ねえ……マリエス? 前に出会ったのは、スラームって言う魔物だけど、他にどんな魔物がいるの?」
そう聞いてみると
「そうですね、このシュミッツ平原にいると言われている魔物は、スラームと呼ばれる魔物、あと鳥型の魔物、バドス、あと獣型の魔物、ウルフベアーでしょうか、バドスはそれほど攻撃力が高くないので、問題はないのですが、ウルフベアーはちょっとやっかいですよ」
「やっかい?」
「ええ、攻撃力も防御力も高いので、簡単には倒せないです、まあ火の呪文が弱点なので、それさえ与えれば、楽に倒せます」
「そうなんだ……」
そう話していると、エリック父が
「む、敵か!」
と言って、剣を構える。
目の前に現れたのは、鳥型の生物だった。
普通の鳥と違って見えるのは、目が全くなく、羽の色が黒色で、体が白色なので、なんかパンダっぽい色をしている鳥だった。
「お嬢様、あれがバトスです、一体だけなので、楽勝かと思います」
「そうだな、ここは私に任せて貰おう」
そう言って、エリック父が剣を構える。
構え方が、侍とかが使う抜刀術に見えるんだけど……あれがエリック父が攻撃の時に使う技なのかな?
「うりゃあ、真空斬り!」
そんな技名を叫んで、剣を一振りして、バトスを一撃で倒した。まあ、真っ二つになって生きてるんだったら、恐怖を感じるけど、真っ二つになった瞬間、奇声をあげて、消滅したから倒したんだと思う。
「ま、こんなもんだろう」
「さすがです、私も出来ますけど、構え方からして凄いですね」
「それほどでもないが……また魔物が現れる前に、先に進むとしようか」
「そうですね……さ、お嬢様、いきましょう」
「あ、うん」
そう言って、再び歩き出す事にした。
出来れば魔物が出現しませんように……と、思ったけど、そううまくはいかない見たいらしく、再び魔物が現れてしまった。
今度現れたのは、三体の狼みたいな魔物だった。大きさが熊ぐらいな大きさなので、もしかして……こいつがウルフベアーなんだと思う。
「お嬢様、あれがウルフベアーです、私も戦いますから、お嬢様は下がってて下さい!」
そう言って、マリエスも剣を構えて、戦闘態勢に入った。
「で、でも大丈夫なの?」
心配してそう聞くと
「大丈夫です、このぐらいの相手なら、私と旦那様で何とかなります」
「そうだな、じゃあ行くぞ!マリエス!」
「はい!」
そう言って二人は剣を構えて、ウルフベアーに突撃した。僕はその様子を見ているだけで、何か手伝った方がいいんじゃないかな……と思い
「私も手伝う!」
そんな事を言ってみると、マリエスが
「そうですか……じゃあ、お嬢様、ウルフベアーには火の呪文が最適です、それをお願いします」
「う、うん、解った」
マリエスにそう言われて、僕はメッシュの杖を持ち、魔術入門の本を開きながら、呪文を唱える事にした。
「火の力を与えよ!フレアボース!」
すると、杖が赤く一瞬光って、火の玉が出現、それがウルフベアーに命中した。
ウルフベアーは「グギャア」叫び声をあげた後、す~っと消滅。
ウルフベアー一体を倒す事に成功した。
一発で消滅って、この魔物、結構弱かったのかな??
あと二体残っているので、そちらを見てみると、一体はエリック父が、もう一体はマリエスがばっさりと倒していて、二体とも消滅。
魔物を全て倒したのだった。
「うむ、よくやったぞ? エリス」
「お嬢様、すばらしかったです」
「う、うん、ありがとう……」
二人に比べたらまだまだだなって思うんだけど……二人がそう言っているので、ま、いっかと思う事にして、サーシャルランドに向かう事にした。
シュミッツ平原での魔物とのバトルの後、その後は一切魔物が現れる事はなく、目的地、サーシャルランドに辿り着きました。
グランド王国と違い、サーシャルランドを一目見て思った事は、物凄くお店の数が多い事だった。
「着いた、ここがサーシャルランド、まあ商人の国だな」
「商人の国……」
「お嬢様、ここは商人が集まって出来た国ですから、お店の数もグランド王国と違い、結構多いのです」
「そうなんだ……」
サーシャルランドの中に入って、まず感じたのは、気温の暑さだった。
冬日だというのに、何故か暑く、歩いている人を見てみると、薄手の人が結構いて、誰一人、防寒着を着ている者がいなかった。
「お嬢様、この国では冬日でも気温が違うんです、グランド王国とは気温がほぼ違いますね。防寒着を脱いだほうがよろしいかと」
そう言うマリエスも、いつの間にか涼しい格好をしていた。マリエスがそう言ったので、僕も着てる防寒着を脱いで、薄着の姿になった。脱いだ防寒着をどうしようかな? と思っていると
「お嬢様、お持ちいたします」
マリエスがそう言って来たので、僕は防寒着をマリエスに持たせる事にした。
「じゃあ、私は、買う物があるので、お店に行くが……エリスはどうする?」
エリック父がそう言って来たので、どうしようかな?と思い、この国でリアがお店を開いていると思うので、そのお店に行って見ようと考えて
「じゃあ、友達がやってる店に行って見ようかと……」
僕がそう言うと
「そうか、じゃあ待ち合わせをしよう、私は買った物を買ったら、あそこのサーシャルランド入り口で待っているぞ、マリエス、マリエスはエリスの付き添いをしていてくれ」
「かしこまりました」
「では、私は行く」
そう言って、エリック父は何処かへと向かって行った。残った僕とマリエスは、まずリアの開いているお店を探す事にした。
国の中を出歩いていると、やたらと声をかけられた。
特に「お嬢さん、これ安いからお買い得だよ?」とか「君、かわいいからサービスするよ~」とかそう言われてしまい、品物を見てみると、僕には必要ない物だったので、丁重に断って、リアがやっているお店をマリエスと探す事にした。数十分歩いて、国の大半は見てまわり、やっとリアがいるお店を見つけて、リアに声をかけた。
「リア」
「いっらっしゃい、あれ? もしかして、エリス?」
「うん」
「驚いた、この国に来るなんてね? 一人で来たの?」
「ううん、エリック父様と、マリエスの三人で来たの」
僕がそう言うと、マリエスが
「ジラード家でメイドをしています、マリエスです」
「あ、そうなんですか、私はリアです、夏日の時に、グランド王国の広場で出店を開いてました。そこでエリスと出会ったんです」
「そうだったのですか、お嬢様とこれからも仲良くして下さいね?」
「あ、はい」
「リア? 冬日の間はこの国にいるの?」
「うん、冬日の間だけ、こっちで商売して、夏日になるとグランド王国で、商売してるんだ、毎年そんな感じだよ」
「そうなんだ」
「あ、何か見てく? それとも買っていく?」
「えっと……今、お金持ってないから……」
「お嬢様、私が持っていますので、一品、何か購入してもいいですよ」
「ほんと?じゃあ、何にしようかな……」
そう言って、僕はリアのお店で出されている品物を見て見る。色々な品物があって、どれにしようかなって迷ったけど、チョコレートパンというのがあったので、おいしそうだったのでそれに決める事にした。
「じゃあ、このチョコレートパンを」
「はい、一つ50ベニーになります」
「では、これで」
そう言って、マリエスが代金を支払った。
「ありがとうございます、せっかく買ってくれたんだし、もう一個おまけで入れとくね?」
そう言って、袋の中にチョコレートパンをもう一個入れてくれた。
「え、いいの?」
「ええ」
「ありがとう」
「いいのよ、せっかく来て、買ってくれたんだしさ?」
そう話していると、マリエスが
「お嬢様、旦那様がお待ちになっているかと」
「あ、そうかも……じゃあ、私は行くね?」
「じゃあね?また夏日になったら、グランド王国に行くから、そこで会いましょう?」
「うん」
そう言って、リアの店から離れて、エリック父のいる場所へと戻った。
エリック父のいる場所に戻ると、既にエリック父がいて、誰かと話していたけど別れるみたいだった。
綺麗な銀色の髪をした女性だったけど、あの人、誰だったんだろう?
僕は気になったので、エリック父に
「エリック父様、今の人は誰だったんですか?」
「ああ、今の人か、この国のお菓子屋さんの店長さんだな、彼女とは昔からの知り合いでな?昔、一緒に冒険者として活動した事もあったのだよ、今はこの国でお菓子屋さんを開いてるって感じだ、久しぶりにあったから少し話そうと思ってな?、またこの国に来る事になったら、彼女のやってる店でも行ってみる事にするか?」
「エリック父様がそう言うのでしたら、気になるので行ってみたいです。それであの……エリック父様?その紙袋の中身って何ですか?」
大きな袋を持っていたので、中身が気になるけど、「中身は何?」と聞いたら、「秘密だ」と言って結局、教えてくれなかった。
「さあ、買い物も済ませたし、グランド王国に戻るか」
「分かりました、ではお嬢様、預かっていた防寒着です」
そう言って、僕に防寒着を渡してきたので、僕はそれを着て、グランド王国に、戻る事にした。ちなみに、買ったチョコレートパンは、マリエスと仲良く食べて、結構美味しくて、また食べたいな……と思ってしまったのでした。
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