第10話

僕がエリスとなって、冬日と呼ばれる日がやって来ました。

何でも、エリック父が言うには、今までの季節が「夏日」と呼ばれる季節だったらしく、その夏日が終わって、冬日と言う季節になったみたいです。

夏日と何所が違うのかな……と思い、エリスの部屋の外を見てみると


「雪……?」


窓の外に見えるのは、少量ながら雪と思われるものが、小雨程度?に降っているのが見える。

思いきって、窓を開けてみると、冷たい風が部屋の中に入ってきて、ちょっと寒かった。

まさか……昨日夏日最後の日で、今日が冬日になるって言われたんだけど……ここまで寒くなるとは思わなかった。

くしゃみが出てしまったので、窓を閉めると、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。


「お嬢様? お目覚めになられましたか?」


そう言って来たのは、メイドのマリエスの声だったので、僕は


「はい、起きました」


マリエスに返事をした後、部屋から出て、マリエスの格好を見てみると、いつものメイド服とは違い、毛皮のコート? らしき物を羽織っていた。


「お嬢様、そんな薄着だと風邪を引かれてしまいますよ? ささ、お着替えをしましょう」


そう言って来たので、マリエスが部屋の中に入ってきて、クローゼットから服を取り出して、僕に着せてきた。部屋の中で厚着になって、汗とかかないのかな……と思ったけど、部屋の中に暖房機とかないので、汗をかく事はなく、結構暖かった。

と言うか……もう、女の人に服を脱がせられる事に全くといっていいか、抵抗がなくなった気がするかな……まあ、この体になって結構な時間経過したし、これも慣れたって事なのかな……暖かいコート? みたいな服装に着替えさせられ、僕はマリエスと一緒に、移動する事にした。洗面所に向かい、顔を洗い、マリエスが「お嬢様、身だしなみのチェックを致しますね?」と言って、髪を梳かしてくれて、それが終わった後、食卓に向かった。食卓に辿り着くと、アリサ母とエリック父がいて、こう言って来た。


「おはよう、エリス、今日から冬日となったから、気温がどんどん下がっていくからな?」


「ええ、エリスちゃん、だから薄着になっては駄目よ?」


そう言って来たので、僕は


「解りました」


「うむ、じゃあ朝食を頂こうか?」


「そうね、エリスちゃんも席についてね?」


「はい」


そう言って、僕も席に着く。

今日の朝食のメニューは、肉料理だった。

でもこの肉……何の肉なんだろう……?と思い、二人を見てみると、おいしそうに食べているので、問題はないのかな?と思い、食べてみる。味に関しては、鶏肉?に近い感じの肉だったので、まあまあというか、結構おいしかった。僕は、気になったので


「これって、何の肉なんです?」


「ラビットソンの肉です」


マリエスがそう答えた。


「ラビットソン……?」


「エリスは知らなかったか? そうだな……書斎に図鑑があるから、そこで確認してみるといいぞ」


「そうします」


うん……あとで確認しとこうっと……

朝食を食べ終わり、今日はどうしようかな? と思い、一度、部屋に戻る事にした。

エリスの部屋に戻ってから、窓の外を見てみると、さっきより雪が大降りになっていて、これは積もるんじゃないか?って降り注いでいる。


「外に出て、見て回るのもいいし、部屋でじ~としてるのも……いや……部屋でじっとしてるのは、退屈かも……」


そう思ったので、せっかく雪が降ったんだし、グランド王国の町の中でも出かけてみるかな?と思い、外に出かける準備をした。

メッシュの杖を持っていこうか……と悩みながら、別に魔法の練習をする訳じゃないし、シュミッツ平原にも行くって思っていなかったので、置いて行く事にした。準備が終わり、玄関に向かうと、メイドのマリエスが


「お嬢様、出かけるのですか?」


そう聞いてきたので、僕は


「うん、ちょっと見て回ろうかと……」


「それでしたら、ちょっとお待ち下さい」


そう言って、マリエスが一旦いなくなった後、すぐにやってきた。


「これをお持ち下さい」


マリエスの持って来た物を、僕が受け取ってみる。


「あ、ありがとう」


「では、いってらっしゃいませ、遅くなるまでには帰って来て下さいね」


「う、うん」


そう言って、外に出る。外の天気は、雪が降っていたので、さっき貰った物を開いてみた。

開いてみると、骨組みが金属?で出来ていて、柄の部分が木で出来ていて、傘の部分が布製な感じがした。


「これって、洋傘なのかな?……でも……ビニール傘って、この異世界にあるのかな?」


そうつぶやいてから、僕は、グランド王国の雪の降る町を見て回る事にしたのであった。

洋傘らしきものを差して、町の中を歩いて、観察してみると、僕のほかに傘を差して歩いている者や、レインコートらしき物を着て、歩いている者もいた。夏日と違い、人の数が少なく、とても賑わっているという状況ではなく、僕はどうしようかな……と迷い、町の中心の広場の方に行ってみる事にした。数分歩いて、広場に辿り着くと、夏日にあった出店が一軒もなく

そこで店を出していた、リアがいるお店や、他の店が一軒もなかった。一体何所行ったんだろ? と思い、町の人に聞いてみると、帰ってきた答えは


「ここで開いていた出店とかは、昨日のうちに店の品物を売り捌いて、冬日になる前に西の国、サーシャルランドで商売をしているぞ?あの国はこの国ほど寒くないからな?冬日でも商売出来るんだ、で、夏日になったら、再びこのグランド王国に戻ってくるな」


と言う返事を頂いた。そっか……じゃあ、リアと会うには、夏日を待つか、その西にあるサーシャルランドという場所にいかないとだめなのか……そう思ったら、ちょっと寂しいなあ……と感じてしまった。とりあえず広場にいても、何もなく、雪が降っているので、移動する事にした。次に何所に行こうかな?と迷い、武器屋に行ってみる事にした。


武器屋に辿りつくと、そこの店員、ゴードンさんが


「いらっしゃい、お、エリス嬢ちゃんじゃないか、どうした?」


そう聞いてきたので、僕は


「散歩の途中で寄ってみました」


「そうか、ま、武器しかないが見てみるか?」


「はい」


何所にも行く予定とか無かったので、ゴードンさんの店の品物を見てみる事にした。武器屋と言うだけあって、剣が多く、杖も数本展示してある。よく観察していると、見慣れた小型のナイフを見つけた。これって……日本にあった、サバイバルナイフにそっくりなんだけど……

なんでここに日本製?の品物があるんだろう?と疑問に思ったので気になったので、僕はゴードンさんに聞いてみる事にした。


「ゴードンさん、この剣って」


「ああ、その剣か、この剣は南の国から仕入れた物で、名前はサバーナイフとか言うらしい。短剣だから、扱いやすい品物となってるぞ」


南の国……そういや、リアが仕入れた物、オコメも南の国って言っていたなあ……うん、日本製のそっくりな品物が南の国にあるみたいだし、一度、行って見たいかも……エリック父に頼んで、連れてってくれるかな……?とか、そう思ってしまった。

結構時間がたったので、僕は、ゴードンさんに


「お邪魔しました」


「おお、また何か欲しい物があったら、よってくれな?」


「はい」


そう言ってから、武器屋から離れる事にした。

外に出ると、雪がやんでいて、傘の必要がなく、でも地面がぬれていた。

次は何所に行こうかな?と思い、まだ行った所のない地区に行く事に決めて、どっちの方角に行こうかな?と思い、当てずっぽうで、西に向かってみる事にした。

降っていた雪がやんで、持っている傘をさす事はなかったので、傘を持ちながら西に向かった。数分歩くと、広場とは違い、町並みが変わったと言うか、雰囲気が物凄く違っていた。

歩いている人の格好を見てみると、冬日なので防寒着を着ているけど、魔法使いが着ている帽子とか被っているので、魔法使いなんだと思う。

それに男の人に向かって、女の人が「おにーさん、いい店あるよ~」とか言っているのもみかけた。うん……ここの地域って、そんな感じの場所なんだ……と納得してしまった。

しばらく歩くと、お店を見つけて、店の名前を見てみると、魔法薬店とか酒場とかあるのを見つけた。雰囲気も変わっているので、ここって大人が来る場所なのかな?と思っていると


「お嬢ちゃん」


そう後ろから声をかけられて、振り向くと、いかにも怪しい格好をした男がいて、こう言って来た。


「ここは大人が来る場所だから、引き返した方がいい、それに一人だと誘拐してと言っているようなものだぞ?」


誘拐と聞いて、もしかして僕を……?と思い、まあ確かに、この姿だと誘拐しやすそうだし……僕は、そう言ってくれた男に


「ご、ご忠告、ありがとうございます……」


「ああ、もっと大きくなってからここに来るといい、うん、君はかなりの美人になるんじゃないか?今も可愛いしな? ではな?」


そう言って、男が酒場「魅惑の庭園」と書かれたお店に入って行った。魅惑の庭園……いかにも大人のお店って感じがする。

うん……これは、引き返した方がいいかも……と思い、引き返す事にした。

とりあえずこのグランド城下町の西地区には、大人向けの店があるという事が解った。

西地区から引き返し、エリスのお屋敷に戻ると、マリエスが


「お帰りなさいませ、お嬢様」


そう言って来たので、僕はマリエスに傘を渡して、こう言う。


「ねえ?マリエス?」


「何でしょうか? お嬢様」


「このグランド城下町の西に行ってみたんだけど、なんか広場と違って、変わった感じだったよ?」


「西地区にですか……お嬢様、まだ幼いのですから一人でそのような場所には行かないで下さい、ちなみにこのグランド城下町の西にあるのは、酒場とか魔法薬のお店とか、大人が使用するお店が立ち並んでいるのです。そこにいる客も魔法使いとか盗賊とかそういった職業の方がよくいます、お嬢様はまだ幼いのですから、西地区だけは一人で行かないで下さいね?」


「あ、うん……解った」


「解ればいいんです、さ、お嬢様、夕食ができてますので、ご案内します」


マリエスにそう言われて、僕はマリエスと一緒に食卓に向かった。食卓に辿り着くと、鍋があり、アリサ母とエリック父がもう既に、食卓についていた。


「お帰り、エリスちゃん」


「今日は、鍋物だ、結構美味しく出来てるみたいだから、一緒に食べようじゃないか」


「ささ、お召し上がり下さい、お嬢様」


「はい」


そう言って、僕も席について鍋の中身を見てみる。鍋の中には、野菜と肉らしき物があり、その肉がなんの肉か解らなかったけど、食べてみると結構おいしかったので、あっという間に食べ終わった。食べ終わった後、僕は書斎に向かい、朝にエリック父が言っていた「ラビットソン」を調べることにした。図鑑と書かれている本を見つけ、それでラビットソンを見てみると


「うわ……これがラビットソン……」


そこに描かれていたのは、目が三つあり耳がウサギ耳で、口元に牙があり、長い両足と鍵爪がある、いかにもゲームとかに出てきそうな化け物の姿だった。内訳に「鍋物や肉料理に使うと美味」とかかれている。

僕は数秒その姿を見た後、本を閉じて、見なかった事にして部屋を出る事にした。

うん、今見たことは忘れる事にしよう……さっきの肉って、もしかしてラビットソンの肉かも知れないし……、まあ、美味しかったし、見た目の事は忘れよう……

そう思いながら、エリスの部屋に戻り、ベットにダイブした。

ふかふかのベットで、結構気持ちよく、なんか眠くなってきたので、そのまま寝る事にしたのでした。

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