第36話 兄と豚と妹+少女
「そうか、勘違いなら仕方ない。気にするな」
「そ、そうだね、仕方ないよ」
事実、彼女の勘違い疑惑はスルーされ、
「マッツン、
政也のすごいところは、勘違いを勘違いで終わらせるのではなく、その勘違いをした原因までを突き止めようとする姿勢だろう。今回の場合は特に勘違いをしたのが妹だったので、シスコンであるという一面が大きく作用し、彼をその行動に導いた可能性は否定できないが……。
「思い出したの、テレビのニュースでやってた
「ま、マッツンはうちの学校の女子生徒と一緒だったんだ。それで、み、彼女は、今
彼の話を聞いた政也は、何か納得いかないことでもあるのか、首を
「お兄ちゃん、どうしたの」
「いや、ちょっと気になることがあってな。……マッツンがバド部の女子と二人で歩いていたってことだけどよ、マッツンはどうしてそんなリスクの高いことをしたんだろうなって。マッツンはそういう危ない橋は渡らない人間だって俺は思ってたからさ、気になってよ」
「リ、リスクって、どういう意味だい?」
美衣香には聞かせたくない内容だったため、あえて政也はそこの説明をぼかしたのだが、空気の読めない田辺に質問され、政也は内心で「この野郎」と思いながらも、田辺の首根っこを
「このご時世、女子生徒とその学校の先生が二人で街中を歩いているなんて、たとえ本人たちにその気がなくても、周りから見れば《不純異性交遊だ》とか思われる危険があるだろ」
「な、なるほど」
説明が終わるや否や政也は彼を瞬時に解放し、美衣香に向き直る。
「モブオくんと何を話していたの、お兄ちゃん」
「ちょいと世間知らずのこいつにレクチャーしてやっただけだ、気にするな」
気楽な調子で美衣香の質問に答えながら、政也は内心で考えを巡らせる。
――マッツンが危険を冒してまで女子生徒と二人で街中を歩いたのはなぜだ。
そうまでしても成し遂げたい大切な何かがあったから?
だが、下手すれば訴えられて教員免許
疑問はもう一つある。
――どうして界斗が彼らの後を追っていたのか。
危険を冒すマッツンを意外に思い、気になって後をつけた?
いや、界斗はたったそれだけの理由で野次馬根性をみせる奴じゃない。追いかけるとしたらもっと明確な理由があったに違いない。それこそマッツンが連続失踪事件の黒幕だと分かったうえで、被害にあうかもしれないそのバド部員を守るために後を追ったとか。あるいは、まあ、消極的な理由になるが、界斗は好き嫌いの激しい奴だから、後に入っていた予定が嫌で嫌でしょうがなくて、それでちょいと寄り道気分で後を追うことにしたとか……。
政也はそこまで考えて、これ以上考えるのは時間の無駄だと判断し、とりあえずは最悪の事態を想定して動くことにした。
「おい、界斗の居場所は?」
「え、えーっと、ココだね」
田辺がマップを政也と美衣香にも見えるようにする。すると、
「……動いてない?」
「そ、そう言われてみれば……」
界斗の居場所を示す赤い点が動いていなかった。その理由について政也が頭の中で可能性を列挙し始めようとしたところで、
ピピ、ピピ――とアラーム音が鳴り、表示されたマップ上の青い点の一つが点滅し、メッセージの受信を知らせた。田辺がその青い点をタップすると、そこから吹き出しが生まれ、メッセージが表示された。
――追跡対象が何者かに襲われた! 至急指示を求む!
「「「!」」」
文面を見た三人の表情に緊張が走る。
「これはまじで最悪の状況かもしれねえな。――おい、そいつに詳細な情報を送るように伝えろ。俺たちも現場に向かうぞ」
政也が田辺にそう命令し、走り出そうとした三人だったが、
「まさやん、どうしたの」
彼の背中に声がかけられ、振り返ると、そこにはバド部部長の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます