第3話 悪役令嬢はヤケ酒に逃げる
───なんて思っていたんだっけ。
「はぁ……」
とてもではないが会場にいられる雰囲気ではなかったので私は逃げるように割り当てられた客室へとやって来た。
本当ならば今日のパーティーで私とマーベラスの正式な結婚について発表をする予定だった。
いつ頃に式を挙げるかの打ち合わせだって明日には始まるはずだったのに。
「いや、だからこそか」
客室のベッドで横になって考える。
あれだけ大勢の前での婚約破棄。
これから私は華々しい成人祝いのパーティー会場でフラれた惨めな女として嘲笑の対象になるだろう。
「ふふふっ。何のために必死に我慢してきたのかしら」
あの場で否定することを考えなかったわけじゃない。
でもきっと、それをせずに逃げてきたのは心のどこかで限界を感じていたからだ。
悲しい……そして悔しい。
流れ落ちる雫がシーツを濡らしていく。
「……兄さん達に謝らなきゃ」
ふと顔を上げるとベッドの傍にあるテーブルには成人祝いとして渡されたボトルが置いてある。
本来ならばパーティーの後にマーベラスと二人で飲み交わすつもりだったが、もう叶わない。
「勿体ないから一人で飲んじゃおう」
ヤケになった私はボトルを開けると、それをグラスに注がずに一気に流し込んだ。
「あー、美味い……ひっく……」
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