第85話 水上打撃戦決着
先頭艦であり、また旗艦でもある「メリーランド」と、さらに最後尾の「アイダホ」をそれぞれ「大和」の四六センチ砲ならびに「金剛」「榛名」の三六センチ砲のつるべ打ちによって撃沈された米戦艦部隊の末路は悲惨だった。
「メリーランド」と「アイダホ」に続いて撃沈されたのは二番艦の位置にある四〇センチ砲搭載戦艦の「コロラド」だった。
真珠湾攻撃の際、当時本国で整備中だった「コロラド」は太平洋艦隊に配備されていた戦艦の中で唯一難を逃れた幸運艦のはずだった。
だがしかし、その「コロラド」も「武蔵」が放つ四六センチ砲弾の前には持ち前の強運もたいして意味をなさなかった。
「コロラド」は四〇センチ砲搭載戦艦とはいえ、もともとは三六センチ砲を搭載する前提で建造されていた艦だから防御力もまた相応のものだ。
三六センチ砲弾ならともかく、「長門」や「陸奥」の四一センチ砲弾にすら耐えられる道理もない。
まして、「武蔵」の四六センチ砲弾ならなおさらのことだ。
「武蔵」が放つ重量一トン半にも及ぶ巨弾は「コロラド」のどの部分に命中しようがその装甲を食い破り艦体を易々と貫いていった。
そのうちの一弾が第二砲塔の天蓋を貫き、直下にある弾薬庫にまで食い込み、そこで世界最大の破壊力を解放する。
その威力は弾薬庫にあった四〇センチ砲弾を誘爆させるのに十分な熱量と衝撃を持っていた。
かつてビッグセブンの一角として君臨した「コロラド」も、さすがに内部からの爆圧には耐えきれない。
「コロラド」は盛大な爆発とともに艦を真っ二つに折ってあっという間にその身を海底に沈めた。
その頃には「長門」と「陸奥」から四一センチ砲弾をしたたかに浴びていた「ネバダ」と「テネシー」もまたグロッキー状態となっている。
「ネバダ」も「テネシー」も三六センチ砲搭載戦艦としては堅艦と言ってよかったが、さすがに四一センチ砲には対応していない。
他方、「カリフォルニア」と「ペンシルバニア」、それに「ニューメキシコ」と「ミシシッピー」は多数の三六センチ砲弾を浴びてなお踏ん張っていた。
しかし、対応艦を始末した「大和」と「武蔵」、それに「金剛」と「榛名」の乱入によってその命運は尽きることになった。
一方で日本の戦艦のほうはダブルチームでぶつかられた「大和」と「武蔵」、それに「長門」と「陸奥」が少なくない四〇センチ砲弾や三六センチ砲弾を浴びていた。
さすがに「大和」と「武蔵」は六万トン級戦艦だけあって戦闘続行が可能なものの、すでに老朽艦の域に差し掛かっている「長門」と「陸奥」はダメージが大きいということで、両艦は一個駆逐隊の護衛をつけて後方へ下がらせることになった。
米水上打撃部隊を日没までに撃破し、さらに隊列を整え直した第一艦隊と第二艦隊はそれぞれ与えられた目標に舳先を向ける。
脚の遅い第一艦隊は敵機動部隊残存艦隊、韋駄天の第二艦隊のほうは護衛空母部隊を追撃する。
これから一晩かけて最大戦速でぶっ飛ばせば両艦隊ともに夜明け直前かあるいは夜明けと同時に目標を捕捉出来るはずだった。
一方、空母部隊の第三艦隊のほうは米機動部隊残存艦隊と護衛空母部隊双方に複数の水上機を張り付かせて接触を絶やさないようにしていた。
第三艦隊に所属する空母の艦内では稼働機を増やすべく徹夜で艦上機の修理や予備の機体の組み立てが行われている。
予定では一七隻の空母に直掩機としてそれぞれ一個中隊二〇四機の零戦を残し、それでもなお四〇〇機以上を米艦隊攻撃に投入できるはずだった。
その第三艦隊の小沢長官と第一艦隊の伊藤長官、それに第二艦隊の角田長官ともに敵を見逃す気はさらさら無い。
三人の提督はその誰もが明日の戦いで西太平洋における米海軍戦力を一掃するのだと、その決意を胸に秘めていた。
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