第60話 防衛戦力

 ミッドウェーに来寇した日本艦隊のうち、水上打撃部隊についてはこちらが放った索敵機によってすでに発見していた。

 ヤマトならびにムサシの二隻の超巨大戦艦を含む有力な艦隊だ。

 機動部隊のほうはまだ発見には至っていないが、間違いなく水上打撃部隊の後方に位置しているはずだ。

 だが、そこは依然としてミッドウェー基地航空隊の空襲圏外であり、攻撃が可能なのは航続距離の大きいB24重爆のみだった。


 「連中は第二次ミッドウェー海戦の時と同様、水上打撃部隊による艦砲射撃によってミッドウェー基地の航空機を叩き、戦力を互角にしたうえで機動部隊同士の決戦に持ち込むつもりなのだろう。だが、そう何度も貴様らの思い通りにさせるつもりはない」


 第三艦隊を指揮するハルゼー提督は参謀から提示されたミッドウェー防衛のために集められた戦力一覧を眺めつつ、胸中でその闘争心を昂らせる。

 米軍だけで固められたミッドウェー防衛戦力。

 だがしかし、その中で唯一例外の部隊があった。

 英国から遠路はるばる出張ってきた一個中隊一二機のボーファイターからなる夜間戦闘機隊だった。


 此度の戦いで、米軍が最も警戒するのはジュンという名の悪魔のような存在だった。

 白い光弾と赤い火弾を放つそれによって太平洋艦隊は大打撃を被り、東洋艦隊もまた煮え湯を飲まされた。

 ジュンはたいていの場合、夜間に複葉の水上機に乗って現れることが分かっている。

 そして、正確極まりない攻撃で戦艦の射撃管制システムを無力化する火弾を放つ。


 だからこそ、真っ先にジュンを潰す。

 その尖兵となるのがボーファイターだ。

 夜間にミッドウェー島に肉薄、艦砲射撃によって同島の航空戦力の撃滅を企図する日本の水上打撃部隊と同島を守る友軍戦艦部隊との激突は必至だ。

 その戦いの前にジュンは友軍戦艦の射撃管制システムを破壊すべく複葉水上機に乗って現れるはずだ。

 そこをボーファイターで叩く。

 ボーファイターであれば、敵に気取られる前に電波の目をもって接近、貧弱な複葉水上機などジュンもろとも一撃のもとに屠ってくれるはずだ。

 その一二機のボーファイターは二群ある友軍戦艦部隊の上空にローテーションで二機ずつがその直掩任務にあたる。

 本来であれば、この倍は欲しいところだが、ミッドウェー飛行場のキャパシティに限界がある以上、この数がいっぱいいっぱいだった。


 「お高くとまったライミーどもの力を借りるのは癪だが、欧州の激戦を勝ち抜いてきた連中の腕は本物だ。ジュンさえ殺れば戦力に勝る友軍戦艦部隊は日本の水上打撃部隊を必ず撃破してくれるだろう。

 そして、ミッドウェー基地の航空戦力が健在であれば、我々に負ける要素は無い」


 そう思い、ハルゼー提督はふたたび参謀から手渡された資料に目を落とす。

 配備がぎりぎり間に合ったF6FやSB2Cといった最新鋭の機体が記されているそれにハルゼー提督は勇気があふれてくることを自覚する。

 ミッドウェー防衛のための戦力はハルゼー提督をして圧倒的と思わせるのに十分なものだった。



 第三艦隊

 第一群

 「エセックス」(F6F三六、SB2C三六、TBF二四)

 「レキシントン2」(F6F三六、SB2C三六、TBF二四)

 「インデペンデンス」(F6F二四、TBF九)

 「プリンストン」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第二群

 「サラトガ2」(F6F三六、SB2C三六、TBF二四)

 「ワスプ2」(F6F三六、SB2C三六、TBF二四)

 「ベロー・ウッド」(F6F二四、TBF九)

 「カウペンス」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第三群

 戦艦「ニュージャージ」「アイオワ」「マサチューセッツ」「アラバマ」

 軽巡四、駆逐艦一六


 第四群

 戦艦「コロラド」「ニューメキシコ」「ミシシッピー」「アイダホ」「ペンシルバニア」「ネバダ」

 重巡四、駆逐艦一六


 ミッドウェー基地航空隊

 F4U四八機

 P38四八機

 B26三六機

 B24四八機

 PBY三六機

 ボーファイター一二機(英軍)

 その他連絡機、輸送機等

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