第39話 猛攻 第二艦隊

 「大和」以下第一戦隊が敵戦艦部隊を追いつめている頃には高速艦艇同士の戦いのほうはすでに大勢が決していた。

 第三戦隊と第四戦隊、それに第五戦隊の四隻の高速戦艦と同じく四隻の重巡洋艦は六隻の米巡洋艦を相手どったが、決定的だったのは四隻の「金剛」型戦艦の存在だった。

 米巡洋艦はそのいずれもが「クリーブランド」級かあるいは「ブルックリン」級といった大型軽巡だったが、それら艦は発射速度こそ高いものの、砲弾の威力には乏しかった。

 一方の「金剛」型の三六センチ砲は戦艦としては小ぶりとはいえ、一発あたりの砲弾重量は米軽巡の六インチ砲弾の一〇倍以上もある。

 いくら「クリーブランド」級や「ブルックリン」級が優秀だとはいっても、やはり「金剛」型相手にタイマンを張るのはあまりにも無謀だった。

 米軽巡はすべての艦がそれぞれ対峙した「金剛」型戦艦に勝る命中弾を与えたものの、一方で三六センチ砲弾を一発でも食らうと一気に戦力あるいは速力を衰えさせた。

 その後は七〇〇キロ近い重量弾にしたたかに打ち据えられ、短時間のうちに全艦が撃破されてしまった。


 一方、第四戦隊の「高雄」と「愛宕」、それに第五戦隊の「妙高」と「羽黒」はそれぞれ二隻がかりで一隻の米軽巡を相手どった。

 二対一の戦いは、これを人間がやれば卑怯なのかもしれないが、戦争においては十分な戦力を用意出来ない側が悪いだけだ。

 数で二倍、さらに砲弾重量も二倍の差は米軽巡の発射速度の有利を容易に覆し、二隻の米軽巡はいずれも大量の二〇センチ砲弾を浴びたうえに、両艦ともに酸素魚雷のおまけまでもらってしまった。

 いくらダメージコントロールに優れる米艦といえども、ここまで大きな損害を被れば到底浮いていられるはずもない。

 両艦はあっけなくその身をミッドウェーの海底深くに沈めていった。


 他方、一一隻からなる残存米駆逐艦部隊の末路も悲惨だった。

 三隻の重巡と一隻の軽巡、それに一六隻の駆逐艦という二倍近い数の差、さらに個艦の砲撃力や雷撃力を加味すればその戦力差は数倍にも達する。

 そのうえ、酸素魚雷による遠距離隠密雷撃によって隊列が乱れたところを突かれたものだから米駆逐隊は陣形を立て直す暇も無い。

 しかも、その頃には第二艦隊の一六隻の駆逐艦は次発装填装置を使った第二波魚雷攻撃を敢行していた。

 敵が隊列を組まず分散していたこと、それに視界の悪い夜間だったこともあり、一二八本もの魚雷を放っておきながら命中したのはわずかに二本にしか過ぎなかった。

 だが、このことで米駆逐艦は九隻にまで激減する。


 そうなれば、あとは残敵掃討だった。

 第七戦隊の「最上」型重巡が放つ二〇センチ砲弾は米駆逐艦の薄い船殻を容易に貫き、「陽炎」型駆逐艦や「夕雲」型駆逐艦は数を頼みに米駆逐艦を袋叩きにしていく。

 しまいには「最上」型重巡までが在庫処分、あるいは「三隈」の二の舞は御免とばかりに酸素魚雷をぶっ放す。

 米駆逐艦はそのいずれもが船体を穴だらけにされ、一隻また一隻と海底へ引きずり込まれていく。

 不幸な駆逐艦は中小口径砲弾に滅多打ちにされた挙句、酸素魚雷の一撃で瞬く間にその姿を海上から消す。

 もちろん、生き残った者など数えるほどしかいない。

 米艦隊にとって阿鼻叫喚の地獄も、やがて「大和」が二隻目の「サウスダコタ」級を仕留めた時点でフィナーレを迎える。

 第二艦隊の猛攻の前に戦場を離脱できた米艦は一隻も無かった。

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