第2話 転生実行
ベティの問いかけに俺は質問で返した。
転生するのにあたり、その選択に必要な情報がまったく足りていないからだ。
「異世界ってどんなところですか? それと、この世界で生まれ変わるというのは日本ではなく他国の可能性もあるということですか」
当然の疑問ですねとうなずきつつベティは説明を始める。
これまであまりにも説明不足だったという自覚は当人にはまったく無いようだ。
「異世界の場合ですと、今のままの状態で前世の記憶を持ったまま転生することになります。現在、異世界は人類と魔王軍との激戦の最中にあります。
ですので、異世界に転生する場合は女神によって希望するチート能力が付与されます。ラノベなんかではお決まりというかお約束のパターンですね。まあ、この世界の人間が丸腰で異世界にいこうものなら一日と持たずに魔王軍に殺されるかあるいは魔物の餌食になるのがオチですから。
ですが、一方で女神からチートをもらった転生者は一人の例外もなく異世界では厚遇されることになります。魔王軍に対する人類側の切り札としてジュンさんも王家から別格の扱いを受けることになるでしょう。
それとは逆に、こちらの世界に生まれ変わる場合は前世の記憶は引き継がれません。あと、どの国に生まれるか、あるいはどのような親の元に生まれるかは運次第です。子煩悩な金持ちの親のもとに生まれるか、あるいは平気で幼児虐待をやらかすような親の元に生まれるかは女神の私にも分かりません」
ベティが提示した二択に俺は一も二もなく即答する。
「異世界に行きます!」
受験勉強に明け暮れる窮屈な人生よりも、女神からもらったチートで魔王軍相手に暴れることのほうが面白そうだ。
それに、転生者がその能力の高さゆえに厚遇されるのであれば、ハーレムは無理でも一人くらいならなんとかなりそうな気もする。
迷うそぶりもなく即断した俺にベティは意外そうな顔をする。
「異世界にはジュンさんの好きな戦艦や空母はありませんが、それでも構いませんか? それに、魔王軍はけっこう強いですよ」
「別にいいっすよ、そんなの。むしろ軍艦マニアという変態の世界から足を洗ういいきっかけです。それと、俺は他の転生者と違って戦記で得た戦術や戦略眼を持っていますから異世界では結構重宝がられると思いますよ」
自信満々の俺に苦笑しつつベティは目の前の空間にスクリーンのようなものを展開させる。
「女神から付与されるチートアイテムコレクションカタログです。
ここからお好きな魔剣や魔槍を選択してください。
それと、武器ではなく魔法のほうがお好みでしたら特化型にするか万能型にするかをまずお選びください。
特化型は扱える魔法が一つだけとその数か少ないかわりにその威力や効果は抜群です。
一方で、万能型は複数の魔法が扱える代わりに一つひとつの威力は限定されたものになります」
「万能型の魔法でお願いするつもりですが、ひとつ教えてください。
魔法のレベルアップ、底上げは経験などを積むことによって向上させることは可能なんですか?」
「可能です。レベルアップすれば使える魔法の種類、威力、放てる数も増やすことが出来ます」
「じゃあ、万能型で。まあ、俺としては当面の間は格下のモンスターを倒しまくってレベルを上げ、格上と遭遇すれば逃げの一手で行きますよ。いきがって強い相手に真っ向勝負を挑んでやられるようなアホなまねはしません」
堂々と弱いものいじめ宣言をする俺にベティは苦笑しつつ転生魔法の呪文を唱え始める。
説明不足やあるいは他人のエロアニメDVDを覗き見るなど、これまでのやりとりからベティに対して若干の不安を抱きつつも俺は彼女の姿を見守る。
そんな俺の内心を見透かしたのか、ベティが笑顔で口を開く。
「私の転生成功率は九割九分です。他の女神たちの九割九分九厘に比べてもたいして遜色はありません。だからご安心ください、ジュンさん」
ベティは明らかに立ててはいけないフラグを立てたようだ。
その時俺は一パーセントのほうに入ってしまう気がしてならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます