第六話 虎の魔物に遭遇です。
近くにあるという村へ向かう道中にセイントちゃんが。
「リンリンちゃんはどうしてこんな森の中に一人でいたウサ?」
「それは……」
魔王を倒すために異世界から転移されたなんて言っても信じてもらえないでしょうし、少し心苦しいですがここは作り話しを……ああダメです思いつきません。こうなったら!
「あの。セイントちゃんはどうして森に一人でいるのですか?」
困った時の対処方法である質問返しをしました。
「私ウサ? 私は王国から直々に魔物討伐依頼を受けたからこの森にいるウサ」
「王国から?」
「そうウサ。最近魔王が復活して各地の魔物達が活性化しててね。近隣の村や街に被害が及ばないように私がそれらを討伐してるんだウサ」
「そうだったのですね。セイントちゃんはこんなに小さいのに周囲のために働くなんて偉いですね」
「えへへ〜」
私が頭を撫でるとセイントちゃんは耳をぴょこぴょこ動かしながら子ウサギのように嬉しそうに目を細めます。可愛い。
「私は教えたウサ。今度はリンリンちゃんも教えてウサ」
「教える?」
「うん。リンリンちゃんはどうして森にいたウサ?」
私が打ち返した質問が返ってきました。
どどどどうしましょう……。
なんとか考えた末に思いついたのは――。
「えっと、その……武者修行。
そう! 武者修行の旅をしていたのです!」
「武者修行。己を鍛えるためにこんな森の奥深くまで来たウサ?」
「そうです。私森がとても好きなので」
「ふーーん」
セイントちゃんが無表情のまま腕を組みました。
ですがすぐキラキラした目で私を見てきて。
「あの実力といい、こんな魔物が活性化している時期に一人でなんてカッコいいウサ。尊敬するウサ」
「えっと。それはお互い様。ですよね?」
「いやいや。だってリンリンちゃんは――んでもないウサ」
「?」
セイントちゃんが口ごもりました。何か言いづらいことでも言おうとしたのでしょうか?
それとどうやら誤魔化せたようですね。でも嘘をついたので少しだけ心苦しいです。
「リンリンちゃんはちなみにどの【ギルド】に所属してるウサ?」
またセイントちゃんから質問されました。でも今度はすぐ答えきれます。
「私はギルドなんて所属してませんよ」
「その強さで無所属ウサ!?」
「はい」
「そっか。そうウサか……」
セイントちゃんの口が怪しくニヤリと変形したような気がしましたが、瞬きしてもう一度顔を見ると普通のセイントちゃんでした。
「あれ? 今――」
「私の顔に何かついてるウサ?」
「いえ。なんでもないです……」
きっと気のせいですよね。
「あっ、川があるウサ。リンリンちゃん。少しここで休憩するウサ」
「そうですね」
「水飲むウサ〜」
セイントちゃんは喉が渇いていたのでしょうか水をごくごく飲んでます。
「綺麗な水」
小川の水は透き通っており、私も手ですくって一口飲みました。
「ごくごく。美味しい〜」
「美味しいウサ」
ただ水を飲んだだけなのに、セイントちゃんと一緒に飲んでいるからでしょうか、心がとても安らぎました。
「リンリンちゃん。リンリンちゃん。こうするともっと涼しくて気持ちいいウサ」
セイントちゃんが足を川の中に入れてます。
「いいですね。私も」
片足から川の中に入れると少しひんやりしてましたが水の流れが心地よく足に伝わり。
「気持ちいいですね〜」
「気持ちいいウサ〜」
セイントちゃんとしばらくの間涼んでました。
数十分後。
「リンリンちゃん。そろそろ川から出ようウサ」
「そうですね。だいぶ休まりました」
川から上がり、歩こうとしたら。
ガサガサ。
「なんでしょう? あの辺で草木が揺れてますね」
「この気配。
リンリンちゃん、戦う準備をするウサ」
セイントちゃんがいつの間にか剣を持って構えてます。
周囲の鳥が羽ばたき草木が割れて現れたのは。
「グォオオオ!」
「虎!?」
荒々しい大きな虎が私達の正面に現れました。
その虎の爪や牙は私達の身長大の大きさがあり、襲われたらひとたまりもないでしょう。
「『デッドリータイガー』ウサ。リンリンちゃん気をつけ――」
セイントちゃんの警告を無視して私は虎に駆け出します。
「何してるウサ!?」
「グオオッ!」
虎がその大きな爪で私を切り裂きます。
「リンリンちゃん!」
「はい」
「あれ!? 今切り裂かれてなかったウサ!?」
「それならバックステップでかわしました。切り裂かれたのは私の残像です」
「そうだったの。
もう! 心臓に悪いウサ!」
「ごめんなさい」
「グオオオオオオ!」
セイントちゃんと会話をしていたら虎が怒ったように両手の爪で何度も何度も引っ掻いてきます。
が私はそれを全てかわします。
「あら。私が無視したので怒ってるのですか? かまってほしいのですね。
でも残念ながらこの一撃で終わりです。リンエスター
ドグォ!
「グッガハッ……!」
私が横腹を殴ると虎の体がクレーター状に大きく凹み、口から血を吐きながら倒れました。
「ふぅぅぅぅ〜」
セイントちゃんが口を大きく開けながら固まってるのを横目に私は呼吸を整えて虎へ一言。
「いっちょあがりです」
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