第五話 リンリンと新たな出会い
異空間の先、正面が眩い光に包まれました。
「きゃっ、眩しいっ!」
あまりの眩しさに目を瞑りました。けどそれは一瞬の出来事で光が晴れた先には――。
キキキキ、ピーピー
辺りは木々で覆われており、鳥の鳴き声がどこからか響いてます。
「ここは普通の森。のようですね。ここが異世界かな? 見た感じだともといた世界と何も変わらないけど、でもこの感じ。なんだか落ち着く〜」
私は森の中で「う〜〜〜〜〜ん」と思いっきり背伸びして、森特有の効果なのかリラックスした気持ちになりました。
「とりあえずこの森を出て人のいる場所を目指しましょう」
私は森の外を目指して歩きました。歩きながら異世界特有の何かないか周囲を観察もしました。ですが森の木も草も私のいた世界との違いを感じられず、本当に異世界に来たのか疑問に思ってしまいました。
それでもしばらく森の中を歩いていると。
「やあ、たあ!」
正面の草木の先から人の声が聞こえてきます。
「こんな森の中に人が? うーん見たところ人が住むような場所では無さそうですが……」
声のする方へ歩き、草を掻き分け隠れるように様子を見ると、そこだけ木が生えておらず広場になっており。
『グルルルル』
「いい加減鬱陶しいウサ」
2メートル大の狼の群れに私より年下に見えるウサミミの少女が1人囲まれてました。
その少女は剣を持っており周囲にもヒュンヒュンと6本の片手サイズの剣が飛んでおり、足元には倒したのでしょう、狼が数匹転がってます。
『グルルルルッ』
「これで終わりウサ《テンペストスラッシュ》」
ウサミミ少女自身と周囲にあった武器が意志を持ったように次々と狼を切り刻んでいき、20匹近くいた狼の群はすぐに全滅しました。
「これで全匹倒したウサ。後は解体して――」
少女が周囲にあった複数の武器をどこかにしまい、どこからか小さなナイフを片手に狼を解体しだしました。
すると。
「ガルッ」
少女の背後の森から狼が一匹全速力で少女へ駆け出します。
それは距離にしておよそ5メートル。
「しまったウサ!」
少女が先程までの武器を召喚します。
が狼の牙はもう喉元近く。
「危ない! リンエスター
私の拳から高速で空弾が飛び、狼の脇腹を直撃しました。その間僅か0.5秒。
空弾が直撃した狼は吹っ飛び木にぶつかって絶命しました。
「大丈夫ですか?」
私が声をかけるとウサミミ少女はキョトンとしながら。
「今のはお姉さんの攻撃ウサ?」
「そうですよ」
「そっか。ありがとう。助かったウサ」
「いえいえ」
私が笑うと少女もニッコリ笑いました。とても可愛い。
「私は『セイント』ウサ。お姉さんの名前は?」
「私は『リンリン』です。よろしくねセイントちゃん」
「よろしく。リンリンちゃんウサ」
自己紹介しなから私達はガッチリ握手をかわします。
「リンリンちゃんに助けられたお礼をしたいけどいいウサ?」
「お礼ですか? お礼ほしくて助けたわけではないので別にしなくてもいいですよ」
「そっか。
この近くの村に美味しいスイーツがあるけど残念ウサ」
「スイーツ!」
スイーツを断るのは乙女失格です。
「やっぱりセイントちゃんの気持ちを無下にするのはいけません。スイーツご馳走になりましょう」
「ほんとウサ。よかったウサ」
セイントちゃんが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねました。
「けどちょっと待っててウサ。この魔物達を解体するから」
またどこからかナイフを取り出したセイントちゃんが狼を捌いて肉や綺麗な石のような物を取り出していました。
その手際は見事なもので、かつていた宮殿の料理人に匹敵するほどです。
「セイントちゃんは解体するの上手ですね」
「えへへ。ありがとうウサ」
私が誉めるとセイントちゃんは嬉しそうに解体しました。
ただそれでも一匹あたり5分はかかっており、残りは20数匹。解体するのに結構かかってしまいますね。私は解体なんてした事ないですし見守るしか……そうだ。
私は天使様からいただいた指輪をかざし『あの狼を収納して』と念じました。すると狼の死骸がキラキラと光の粒子になって指輪に吸い込まれていきます。
「ウサ!? 一体何が!」
解体途中で狼が消えたのでセイントちゃんは驚いてます。説明してあげないといけませんね。
「狼の死骸は全部この指輪に収納したのですよ」
「その指輪にウサ?」
「はい。この指輪は生き物以外でしたらほとんどなんでも収納できる便利な指輪なんですよ」
「へぇ。それはすごいウサ」
「それに収納したら時間が止まっているようなので腐ることもありませんし、取り出すのも簡単なので安心してくださいね」
「マジウサ! その指輪欲しいウサ」
「ダメですよ」
「ダメウサか。残念ウサ〜」
本気で残念がるセイントちゃんを見て私は笑います。するとセイントちゃんも笑いだしました。
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