第174話 涙が溢れて来た贈り物

 今まで生きて来て、貰って嬉しかった贈り物は本当に山ほどあるけど。

 ・・・・贈り物、という時点でもう、嬉しいからね。

 でもね。

 涙が溢れて来た贈り物。

 っていう定義でくくると。


 3つ。


 かな。


 刺客・・・・「しかく」の第一変換がこれって、怖くない?!

 もとい。


 ◆母からの贈り物。

 母からは色々と貰っているけれども。

 涙が溢れて来た贈り物はね。

 2枚のブラウス。


 大学在籍中に内定を貰って、研修期間中に辞めた会社があるのだけど(笑)

 今から思えば、わたしはまだまだ子供で考えが甘かったのかもしれない。

 あの、訳の分からない、理不尽極まりない研修に対して、今なら講師を論破する自信はある。だけど、あの時のわたしは、ただとまどって、それほど大きくも無かった自尊心をズタズタにされて、心をバキバキに折られただけの研修だった。

 本当に辛かったけど、わたしが就職活動をしてた時代はちょうど就職氷河期に当たっていて、そんな中内定を貰えた事をとても喜んでくれていた家族の手前、


 もう辞めたい・・・・


 の一言がなかなか言い出せずに、研修帰りの電車の中で堪えきれずに泣いたことも、何度もあって。

 そんなある日。

 家に帰ったわたしに、母がくれたのですよ。


 「遊はあまりちゃんとした服持ってないでしょ」


 って言って。

 ブラウスを2枚。


 もうね。

 その日、お風呂の中で泣きました。

 有難いのはもちろんのことだけど、本当に、申し訳なさ過ぎて。

 だってもう、辞めたいって、限界だって思っているこんな自分に、わざわざブラウス買ってきてくれるなんて、って。

 自分が情けなさ過ぎて。


 まぁ。

 結局研修中に、その会社辞めたんですけどね(爆)

 4月の中旬だったかな。

 でも、その月中に、特許事務所に無事就職できまして。

 母から貰ったブラウスは、無駄にならずに済みました。

 大活躍しましたよ♪

 余談だけど、辞めたその会社は、その後2年もしないうちに無くなったらしい。辞めて正解だったな。


 ◆友人からの贈り物。

 今でもお互いのお誕生日にプレゼントのやりとりをしている友人。

 わたしが今の職場に異動になった年だったかな。

 もう本当に、毎日が地獄のように辛くて辛くて(今でもこの職場から早く異動したいという気持ちは変わらないけど、当時は余計に辛かった・・・・なんせ分からない事だらけだし、だけどやらなきゃいけない事だらけだし、それがまた、全部苦手なものばかりだし)。

 ちょうど、クリスマスだったな。

 その友人からね、荷物が届いたの。

 お誕生日のやりとりはしていたけど、クリスマスのプレゼント交換はしていなかったから、なんだろう?って思って開けてみたら。


 大きなキャンディ形の容器の中に、たくさんのキャンディが詰まっていて。

 そこに添えられていたお手紙がね。

 わたしが大好きなキャラが、わたしを励ましてくれているような文面で。

 遊び心満載の友人の優しい気遣いに、本当に涙が出て来た。

 一生忘れられないだろうなって思う。


 ◆異動してしまった方からの差し入れ。

 今の職場って、年末年始は特に繁忙もいいところで、毎年心身ともにボロボロになるのだけど。

 その年は、さらに色々重なって体調も崩し掛けていて、心も折れかかっていて。

 そんな時にね。

 元同じ職場(とはいえ、立場的にはわたしの所属する会社のお客様にあたる会社に所属する社員)で他部署に異動した方から、


『今大変な時期だよね。お疲れ様!』


 って。

 お菓子の差し入れをしていただいたの。

 タイミングといいい、その心遣いといい・・・・

 泣けてきた(T_T)

 ご自身だって異動したばかりで大変だろうに、この気遣い。

 なんて優しい人なんだろうって。


 ひとりじゃとても食べきれないくらいいただいたので、職場のみんなで分けたのです。

 ○○さんからの差し入れです!

 って。

 控えめな人だし、時に敵対してしまう会社の社員の人だから、彼女の優しさをみんなに知って貰いたくて。

 わたしたちの頑張りを、ちゃんと分かってくれて応援してくれている人がちゃんといてくれるんだってことを、みんなに教えたくて。

 だって、もったいないものっ!

 わたし1人が彼女の優しさを独り占めするなんてっ!


 わたしもね。

 そういう、なんていうかな。

 多分、当人にとっては「当たりまえ」にしていることなんだと思うんだよ。

 だからね。

「当たりまえ」に人に優しくできる人になりたいなって。

 そう思うんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る