第140話 言葉の魔術師に、なりたいような、なりたくなような

『言葉の魔術師』


 ちょっと、憧れる。いや、だいぶ憧れる(笑)。


 欲しい人に欲しい言葉を。

 必要な場所に必要な言葉を。

 伝えられる。届けられる。

 そんな、魔術師。

 いったい、どんな人なんだろう?


 思い浮かぶイメージは。

 薄暗い部屋の中に佇む、黒いローブの魔法使い・・・・

 黒魔術かいっ。


 てことは、だ。

 わたしの中では何故か、あまりいいイメージではない、ということなんだなぁ。

 なんでだろう?


 欲しい言葉とか、必要な言葉が確実に相手に届けられる、ということは、事前にそれらの言葉が分かる、ということだよね。

 それって、「魔法」とかそういうのはこの際抜きにして考えると、相手の考えや思いを先読みするってこと、になるのかな。

 先読みして、合致する言葉を選ぶ。


 欲しい言葉が貰えた時ってさ。

 自分が苦しい時とか辛い時だったりすると、本当に、涙が出る程嬉しかったりするんだよね。

 救われた、って思って、縋ってしまう時も、あるかもしれない。

 その人に。その言葉に。

 だから自分も、そんな風になれたらいいなって思うんだけど。

 もしそれが。

 わたしの置かれた状況をよく知っていて、も、わたしが欲しいであろう言葉をくれたのだったとしたら。

 それでも、嬉しいかなぁ?

 その時はね。

 確かに嬉しいと思うだろうし、救われることもあると思う。でも、あとからその言葉が、実は本心から出た言葉ではない、ということが分かってしまったら。

 それでもその人のことを、信じ続けることが、できるかなぁ?

 

 たぶん、ひっかかっているのは、そこ。

 黒魔術(笑)のイメージが出てしまうのは、そこだと思う。


 そうじゃないと思うんだよね。

 本当に心に響く言葉って。

 たとえ欲しい言葉じゃなかったとしても、今は聞きたくない!っていう言葉だったとしても、相手が心から思って伝えてくれた言葉ならば、その言葉の方が心に響くような気がするんだ。最終的には。

 でも、難しいな。

 言葉に罪はないと言うか。

 言葉そのものに救われる時だって、きっとあって。

 たとえばさ。

 AIがこの先もっともっと発達して、表情とかから、人間の感情から思考まで読み取って、それで、その人に必要だという言葉を判断できるようになったら?

 多分、AIに心は無い。

 だから、本心とか嘘とか、無い。

 …AIが選んでくれた言葉、心に響いたりするのかな…それって、そのAIって、本当に心は無いのかな…

 あら、ちょっと、ファンタジー入っちゃった(^_^;)


 おいといて。


 言いづらいことを相手に伝えなければいけない時に、考えすぎて言葉を選び過ぎてかえって相手を傷つけてしまったり。

 どうでもいい相手(←酷っ!)にとくに気を遣わずにズケズケ思ったことをストレートに言ったら、なんだか感謝されたり。

 言葉の魔術師だったら、どうなんだろう?

 言いづらいことも、傷つけないように伝えられる言葉を選んで伝える事ができたかも?でもきっとそれは、優しい嘘になってしまいそうな。そんな気がするんだよ。そもそも、言葉の魔術師ならば、相手が欲しがっている言葉を届けるだろうし、言いづらいことは、言わないだろうしね。

 ちがうか。

 言葉の魔術師ならば。

 言いづらいことを、違う言葉に変えて伝えるのかな。意味は同じだけれども、丸くて優しい言葉で。

 でもそれは、最初に思い浮かんだ言葉と、本当に全く同じ意味なのかな。なんだか、違うような気がする。


 相手の事を考えて、自分の言葉で。

 それがやっぱり、一番なのかな。

 そうなるとやっぱり、『言葉の魔術師』には憧れるけれども、なりたくはない、かなぁ・・・・なりたくたって、なれないけどね(>_<)


 ・・・・モノカキ限定だったら、『言葉の魔術師』って、いいかも?

 って一瞬思ったけど。

 やっぱだめだ。

 それはきっと、わたしの書いたモノではなくなってしまうような気がするから(笑)。

 悩んで迷って、それで選んだ言葉で書くのが、醍醐味でもあり、楽しさでもあり。

 わたしらしさ、でもあるんだよねぇ、きっと。


 ・・・・わたしらしさ、ねぇ・・・・う~ん・・・・

 なんだろう?わたしらしさって。

 これまた追及には時間がかかりそうな課題だな。

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