第133話 痛ければ痛いほど身に付くもの・・・・失敗
失敗なんて。
できれば、したくないよ、わたしだって。
特に、いい大人になってからの、仕事の失敗なんて。
失敗を取り返すの、めちゃくちゃ大変だし。
周りにも、エライ迷惑掛けちゃうし。
でも、人間だから。
失敗は、しちゃうんだよね。
だって、機械じゃないんだもの。
ポンコツな人間なんだもの(ポンコツなのは、わたしだけか)。
出来る限り失敗しないように一生懸命仕事したって、時にもうどうしようもないくらいに体調が悪くて集中力が欠けた、その一瞬とか。
逆に、ものすごくいいことがあって浮かれていた、また体調が良すぎて調子に乗ってしまった、その一瞬とか。
魔の一瞬は、誰にでも、ある。
たとえ、どんなに気を付けていたって。
だけど。
あー・・・・詰んだ。
って。
頭が真っ白になるくらいのドデカイ失敗だけは、二度と繰り返さないんだなぁ、不思議なことに。
わたしがそんな大失敗をしでかしたのは、最初に勤めていた特許事務所でのこと。
・・・・ん?
最初に勤めてたのが特許事務所だという話は、どこかで書いたかねぇ?
まぁいいか。
これ書かないと、事の重大さが説明できないからねぇ。
特許を申請(出願)する場合は、まぁ、特許庁に出願するのだけど。
出願後にも、色々手続きがあるのですよ。
特許を取得するまでは。
今はもう出願から登録までの流れは昔とは変わってしまったのかもしれないから、今の流れでは説明できないのだけど。(というか、わたしの記憶から特許事務の大半がもう消え去ってしまったから詳細の説明ができないだけ/笑)
特許出願後に、『拒絶通知書』というものを特許庁から受理した場合、それに対する対応(通常は、意見書の提出)を行う必要があるのです。
期日までに。
期日を1秒でも過ぎたものは、当然のことながら、受理はされません。
そしてわたしは、これをやらかしてしまったのですねぇ・・・・
『拒絶通知書』に対してなにも対応しなければ、次にくるのは『拒絶査定』です。
つまり、特許出願無効。
その日、急病で休んだ同僚の代わりに、わたしは意見書を特許庁に提出することになっていたのに、PCに読み込んでチェックを掛けたあと、ただ『ポチッ』と提出ボタンを押せばいいだけのことを、せずに帰ってしまったのだなぁ。
なぜ、あの『ポチッ』を忘れてしまったのか。
未だに理由は分からない。
・・・・やってしまった・・・・もしこの特許が登録されていれば、もしかしたら依頼者には莫大な利益が発生していたかもしれない・・・・やばい、すごい額の損害賠償が請求されるのか?!わたしの一生分の給料でもとても払いきれないぞ、どうしようこれ、絶対クビだ・・・・
家に帰ってから『ポチッ』をやり忘れていた事に気付いたわたしは、その日はろくすっぽ眠ることもできず、翌日の朝早くに事務所に行って、土下座の勢いで所長に謝った。
(本当に土下座をした訳ではないけど)
結果的にね。
その特許、無事だったんだけどね(笑)。
『拒絶理由通知』のあとに何の対応もしない、または意見書を出してもそれが通らなかった場合は、『拒絶査定』というものが特許庁から送られてくるのだけど。
それに対して期日までに『不服審判』を申し立てれば(同時に意見書も提出)再審査してもらえて、そこで認められると『拒絶査定』が取り消されて、晴れて『特許査定』となり、特許料を納付すると特許登録となるので。
弁理士先生の所長は、苦笑いはしていたけれども、きっとわたしが本当に顔面蒼白で泣きそうな顔していたからだと思う、
「大丈夫だよ、なんとかなるから」
って、言ってくれたんだよねぇ。
わたしにはあの時の所長が、神様に見えたよ・・・・
そして、これはだいぶ後になってから聞いた話だけど。
こんな時のために備えた『保険』というものにも、入っていたらしい。
まぁ、このときは特許が無事だったから良かったものの。
もし私が『拒絶理由通知』ではなく『拒絶査定』への対応の提出を忘れてしまっていたとしたら、それはもう限りなく【アウト】になってしまっただろう。
そうすると、依頼者からは損害賠償を請求されても当然のことになる。
そんな時のための保険が、どうやらあったみたいでねぇ。
だからって、気を緩めて良い訳では、ないのだけどね。
そんな訳なので。
期限管理にはもう、神経質なくらいに厳しくなった。
も~、あんな思いはしたくない。
いや、あんな思いをするような仕事は、今の職場では無いのだけど。
それでも、ね。
あの時のあの、生きた心地がしなかった夜を思い出すと、今でもゾッとするんだよね。
うん、ほんと。
いい経験をさせていただきました。
特許事務所の仕事自体は、メチャクチャ楽しかったんだ~♪
商標登録とかね。
まだ世に出ていない商品の名前を、いち早く知ることが出来たりするからさ。
特許はね・・・・
機械系が多くて、内容読んでもよく分からんことばっかで難しくて、わたしには面白くなかったけどね(笑)。
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