アプローチ16

hanaさんとLINEが繋がったことで

俺は完全に浮かれていた。


だって、

昨日面白かったこと

今日の話したいこと

明日の聞きたいこと


なんでもいつでも

送れるからな!



とはいえ、

元々そんなにグイグイ行ける方ではない。


意識してからというもの

まともに顔を見て話せないし

仕事で隣に座ろうもんなら

顔から火が出そうなくらい赤面してしまう


マスクしてるおかげで

多分バレてはいないけど。



こんなふうに

hanaさんに惹かれていく自分に

我ながら驚いている。


と、同時に


hanaさんのために

頑張っている自分に気付く。




単なる片思いでも


誰かを好きになるというのは

すごくチカラになる。


これが独身だったら

まっすぐ走っていけただろうに。


hanaさんからの連絡がいつきてもいいように

スマホは常に携帯してるけど





これが


まーーーーー



来ない。



悲しいくらい



来ない。





当たり前だよな。

向こうにだって家庭がある。





今日は日曜日。


俺は俺で

子供たちのどうでもいい話を聞き流しながら

食後の片付けをしつつ

テレビを見ていた。




ふと

CMで映った女優さん。


前から可愛いなと思っていたけど


なるほど。


hanaさんに似ている。


笑顔が可愛らしくて

穏やかな話し方や落ち着いた雰囲気も


次会ったとき

言ってみようかな。




俺の目線の先に映るテレビの中

hanaさんに似た女優さん


その手前で


子供と話しながら

笑っている嫁。







特別美人でもない


特別可愛いわけでもない



でも

俺が辛い時に

傍で支えてくれた

めちゃくちゃ良い奴。




だからこそこうして

家庭を築けている訳で。




俺の視線を感じたのか

くるっと振り返り、目が合う。


「ん?どうしたの?」

「なんもない」

「洗い物ありがとね!終わったらお茶いれて♪」

「…お茶はセルフサービスな」

「えー?」



苦手な料理を使ってくれてるんだから

せめて俺ができることを、と

洗い物担当をしている。



家族


日常


仕事


そこに


もうひとつ

何か楽しみがあったら…



洗い物が終わり


お茶をいれる。



「ありがとう」

にこっと微笑む嫁に手渡す。



自分のコーヒーをいれて

ダイニングテーブルの自分の席に座る。


スマホを何気なく見る。





「あっ」

hanaさんからLINE!





『お疲れ様です。明日はお休みを頂いてます。

現場に渡す予定だった書類は橋口さんにお願いしてますのでよろしくお願いします。』



完全な業務連絡。




「お疲れ様です。了解です。

明日は会えないのか…」




打ったものの送信は躊躇われた。


最後の1文…

打ち直す?



いや、でも…

なんか一言、つなげたい…



いや、いい。

このまま送信!!





すぐに既読になった。


LINEのこの

既読システム。


最初は面倒だなと思ったけど




こうして相手に伝わる瞬間を

見える化できるのは

すばらしいシステムだと痛感している…!


ありがとうLINE!




割と早く返信がきた。

トーク画面のままだったから

きっとhanaさんにも

即既読が伝わってしまったはず。


それはそれで恥ずい。





『会社にいても、なかなか会えませんよ。笑』






えっ…




これって…






もしかして




hanaさんも…?




会いたいなって思ってくれてたのかな









「だから、会えたらラッキーです」










届きそうで

届かない



この手も

この気持ちも

この言葉も。

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鈍感彼女 @hanamima

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