アプローチ15

いつもなら特に急ぐこともなく

かといって残業することもなく

適当におつかれっすー して帰る。


ところなんだけれども!


今日は

もしかして少し待ってたら

hanaさんにばったり会えるかもしれない。


昼休みのLINEが嬉しすぎて

今なら上手く話せる気がする。


いつもの自販機前で

少し時間を潰してみる。


続々と出てくる同僚たちを見送り

辺りも薄暗くなってきたところに

「お疲れ様ですー」


きた!

hanaさん!


と、木村くん。。。


ひとりじゃないのかぁあ~~


「お疲れ様です!あ、なんか帰りに飲みます?」

返事を聞かずに100円投入。


「わーい!ありがとうございます!」


「あ!なんかかっこいいことしてる!」

木村よ。お前には買わん。


「最近いつも買ってくれるの」

嬉しそうに木村くんに報告するhanaさん。


あ、hanaさんと木村くんは確か同じ歳…。


「いいなー!俺にも買ってくださいよー」

「え?笑 ちょっと聞こえないなぁ」

あはは!と笑うhanaさん。


木村くんがいては、LINEのこととか

話せることはなく


「お疲れ様でした」


会釈して去る俺。

つらい…


数m後ろでは、hanaさんと木村くんが

何やら楽しそうに話しながら歩いている。


hanaさんと木村くんはタメ口で

本当の友達のようだ。


「お疲れ様でしたー!」


駐車場まできたら、

木村くんが俺を追い越して走っていく。


振り返るとhanaさんがひとり歩いている。


意を決して、くるっと方向転換した俺。


「昼休み、LINEありがとうございました!」


一瞬驚いた表情のhanaさん。

すぐにいつもの柔らかい笑顔で

「あはは!

LINEしたらお礼言ってもらえるんですね?」


「あ、すいません、つい…

迷惑だったかなと思っていたので」

ポロポロ出るホンネ。


「私の方こそ、貴重なお昼休みに

仕事の話で迷惑じゃなかったですか?」

とんでもない!


「いや、全然!

お役にたてずすみませんでした」


「えー坂下さんが謝るの?笑

そうそう。Tさんのことなんですけどね…」


Tさんありがとう。

君がトンチンカンなおかげで

俺はこうしてhanaさんと並んで歩きながら

話すことができている。

心から感謝。



「また何かあれば…

何でも大丈夫なんで!」

もうほんと、なんでもいいんで!

用事なくてもいいんで!!!

LINEください!!!


「ありがとうございます。心強いです。

お疲れ様です」

そう言ってにっこり微笑んで

手を振ってくれた。


うっ…振れない。

恥ずかしすぎる。

めちゃくちゃ手を振りたいけど

ダメだ…恥ずかしい。


ぐっと手を握りしめて

全力で一礼!


部活かよ!





hanaさんと話せたことで少し浮かれている。


安全第一!

気をつけて帰ろう。



帰宅してバイクを降りて

なんとなくスマホを見ると


「ミルクティーごちそうさまでした!

また明日♪お疲れ様でした♪」

hanaさんからのLINE。


薄暗い空に

白い月がキレイに光る。


明日も頑張れそうだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る