アプローチ12
棚卸しが済んだ。
ふたつ、在庫管理と合わない部品があったので
設計に確認するように指示された。
ふー。
息を整える。
「失礼します」
ドアをあけると、hanaさんひとりだった。
「お疲れ様です。終わりましたか?」
どことなく、その表情は固い。
「あの、この品番なんですけど……」
取り出したメモに書いたのは
品番ではなく
俺の番号だ。
「よろしくお願いします!」
hanaさんに渡すと、
明らかに困惑していた。
「えと…どういった用件でしょうか?」
「仕事のことで、聞きたいこととか
あるかもしれないんで!」
なんという言い訳。
これで受け入れてもらえると思うのか?俺は。
「…」
そのメモを見つめ固まるhanaさん。
「お願いします!」
「…わかりました…」
「あ、あとこれも!
この品番について確認お願いします。」
不明の品番は前もってメモしていたので
それを渡す。
「あ、品番はこっちですね。わかりました。」
こちらについては笑顔で受け取ってくれた。
あとはどうなろうと、いい。
無視されようと、
同僚としては変わりなくいられるのだから。
俺の気持ちが少しでも
彼女に伝わるのならそれでいい。
あの日
俺が突然番号を登録してほしいと言ったのは
きっと日頃の感謝を伝えたかったんだ。
君に会えることが
俺のモチベーションに繋がっている。
幸福感をくれて、ありがとう。
それさえ伝えられたらもう
それでいいんだ…。
その日は登録された気配はなく、
まぁそうだよな…と肩を落とす。
次の日。
まだ通知は来ない。
午前中はなぜか俺が課長と同席して
会議に出ることになり
全くメモをしない課長の代わりに
俺が必死でメモをとる。
おかげでhanaさんのことを考えるヒマはなく、
あっという間に昼休み。
ふとスマホを確認すると
なんと、hanaさんが友達追加されていた…!!
急いでトークを開き、メッセージを送る。
「ありがとうございます!」
すぐに既読になった。
ドキドキ…
「登録しましたよ~
仕事のことで聞きたいことって何ですか?」
だよな。
「いえ、特にはないんですけど、仕事外でも連絡とりあえたら有難いとずっと思ってました。よろしくお願いします!」
とりあえず急いで返信したものの、
あとから見返したその文面、
告白してるようなもんじゃないか?
そして次の返信がくる。
「仕事の話ですよね?
口説かないでくださいね!笑」
どき。
hanaさん、すげぇ。
これは完全にジャブだよな。
「口説いてもなびかんでしょ?笑」
思わず本音が出た。
そう、君は……
「わかってもらえると助かります♪」
口説いてもなびかない。
ひとつ、確実に変わった。
hanaさんとの連絡ツールができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます