アプローチ11
おはようございます。
なぜかコソコソと出勤している俺。
はー…なんで昨日あんなこと言ったんだろう。
『番号登録しといてください!』
間違いない。
昨日の俺はどうかしていた。
今日は現場仕事はストップして
在庫の棚卸しをする日だ。
黙々と数えて記入する。
体力を全く使わない日。
しかし、ペアになったのは工場長。
あぁ、なんでこんな日に…。
でもそこはさすがに工場長なだけあって
手際よく次々に終わらせていく。
見ていてかなり勉強になる。
私語もほとんどなく
淡々と記入していた。
「ふー…休憩しよか」
「はい!」
コーヒーを頼まれて、買いに行く。
っと、自販機前にhanaさんがいた。
会いたい時に会えなくて
避けたい時に会ってしまう。
自分のタイミングの悪さがイヤになる。
「…お疲れ様です!」
「あっ、お疲れ様です…」
hanaさんはパッと目を逸らし、
何も買わずに行ってしまった。
ほらな。
ほらほら。
やっちまったんじゃないの?俺。
避けられてる。
まぁそりゃそうだよな。
自分のせいなのに、
ズーンと重い気持ちになり
頼まれたコーヒーを買って戻る。
「お待たせしました」
「おーサンキュ」
プシュ…
静かな工場内に響く。
「はー…あと半分くらい?
予定通りには行けそうやな」
「そうっすね」
「お前さ、hanaちゃんに何言うた?」
ブフッ
「ちょっ、きたねぇ!!!」
「すんません…」
「分かりやすいの、どうにかならん?」
ゲラゲラ笑う工場長。
この人の観察眼、マジですごい。
「何って…何も言ってないです」
そして俺はウソが下手。
「告白でもした?」
ニヤニヤ。
「こっ……くはくとかは、ナイんで」
「まぁなー。オフィスラブはなぁ~」
「そうっすよ。結婚してますし」
「そこやねんなーそれさえなければなー」
「いや、そこだけではないんですけど」
社内でそーゆーの、アリなの?
「あんないい子、みーーんな好きになるよ」
うんうん と頷く工場長。
「そうですよね…」
「ただなぁ、あの子結構カタいから。
俺も最初はいこうとしたけどな」
「あ、そうなんすね…」
このチャラ工場長が何もしてないはずはないと思ってたけど。やはり。
「2人では会ってもくれへんし、メシ誘っても断るし。彼氏が厳しいんでって。あっという間に結婚してなー。あんだけ人当たりが良かったら、他のやつも誘ったことあるとは思うけど、みーんな玉砕やったな。」
「そうなんですね」
「だからって、嫌がられるわけじゃないからみんなあの子のことはいい子やなと思うんやろな」
なるほど。誘って失敗しても、その後も普通に接してもらえるから…。
「だから俺も、サイフとしての地位を築けた」
ふふふと笑う工場長。
「なかなかですよね。サイフ…」
「まぁ、こんだけあの子に貢いでも
後腐れなくおれるから、問題はない」
「責任とって!とか ないですもんね」
「そうそう。いいキャバ嬢になれるよ」
「…でしょうね」
絶対ならないと信じたい。
当たって砕けても
普通の同僚でいられるのなら
それでもいいんじゃないか?
俺の中で何かのスイッチが押された気がした。
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