アプローチ10

月曜日。


今日から俺は!!


胸を張って言おう!

hanaさんがお気に入りであると!


あ、誰かに言うとかではないですよ。

自分の心に正直に。ということ。




先週はモチベーションも全く上がらず

仕事もそこそこ忙しかったので

今週もそれに引き続き、という感じ。


たまたま会えたらラッキーだな と思いつつ

トイレに行っては、掲示板を見て

一服しては、手洗い場へ。


しかしなかなか会えない。


え?出勤してないのか?

と思うくらい、会えない。


大きくはない会社で、

こんなに会えないって

逆に難しいのでは?


手洗い場から女性の声がしたから

行ってみれば、Tさんだし、

捕まったらよくわからん話を延々と聞かされて

なんか気疲れするし。


あっという間に1日が終わり、

会えなかった…と肩を落として

手洗い場を通り過ぎ…


「お疲れ様です」

はっ!!!


「お疲れ様です!!!」


あぁ…会えた…。

でもタイミング悪く、

俺の足は止まる気配なく通り過ぎてしまった。


え、いいの?

挨拶だけで。


買えるぞ?

戻る?


自販機前でピタッと立ち止まる。


そして、

くるりと振り向き、

hanaさんがいる手洗い場へ向かう。


「あのっ…!」


「ん?」

ふいに顔をあげたhanaさん。


「hanaさんって、僕の番号知ってました?」

「え?いや、知らないです…?」


「また登録しといてください!」

なーーーにーーー?!

俺は行ったらナニを言ってるんだ!!!


「え、何見て…?」

困惑ぎみに笑うhanaさん。

そりゃそうだろ!


「書くものありますか?」


「や、ないですね」

そりゃそうだろ!

今は手洗い場だぞ!


「また書いて持ってきます!」


「え、あ…はい」


「失礼します!」


ガバッとお辞儀して、

早歩きで駐車場へ向かう。


おいおいおいおい…


番号?なんで?



たぶん、先週我慢した反動だろう。

いや、話すの我慢してただけで

今ちょっと話しただけで

こんなこと口走るとは

自分でも思わない。


「…あ!飲み物っ!」

挙句、買おうとしてた飲み物は忘れるし

もう自分でもやっちまった感が半端ない。



あーーーー。

何してんだよ。


連絡先知ってどうする?

連絡とるのか?


そんなん、そんなんもう…

クロになるぞ?!


いいのか?!


LOVEになるぞ?!

いいのか?!





hanaさんはどう思ったんだろう。


引いただろうか。


既婚者がよその人妻に

番号渡すとか


しかも会社で。


どーゆー神経してんだよ。





帰宅したら、

幸いなことに

嫁と子供たちは

でかけていた。


晩御飯は食べてきてね とのことだった。




のんびり風呂でも入ろう。





湯気の向こう。

うっすらと

あの時のhanaさんの表情を思い出してみる。


あーだめだ。

完全に空回り。


いっそ、何も無かったことにして

番号渡さなければいいかもしれない。


ただ、引かれるのは間違いない。



明日。

明日の自分がどうでるか。

hanaさんの様子を見て決めよう。

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